先週末4月15日(金)の日経平均株価終値は2万7,093円となりました。前週末終値(2万6,985円)からは108円高と上げ幅は大きくなかったものの、節目の2万7,000円台を回復したほか、週足ベースでも3週ぶりに上昇に転じています。

図1 日経平均(日足)とMACD (2022年4月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図1で先週の値動きを振り返ると、週の前半は25日移動平均線を下抜けるなど、前週からの下落基調が継続していたのですが、週末にかけては持ち直す展開だったことが分かります。ローソク足の並びも、先週の5本(5日間)のうち、最初の2本が陰線、残りの3本が陽線となっています。

 週初の株価下落については、前回のレポートでも触れたとおり、米金融政策の正常化ペースが加速しそうな事に対する警戒が背景にあります。

 ただ、米金融政策への警戒自体は今年の1~3月にかけて織り込んでいた経緯があり、この期間につけた安値は、1月27日の2万6,044円、2月24日の2万5,775円、3月9日の2万4,681円なのですが、直近の安値(4月12日の2万6,304円)を見ると、当時の安値まで下げておらず、冷静さを失っていなかったといえます。

 週末にかけての反発については、株価下落の反動をはじめ、株式市場にとってここ数カ月のあいだ「鬼門」となっていた米CPI(消費者物価指数)が、「物価上昇のピークが近いのでは?」という期待を芽生えさせる結果だったこと、中国上海で実施されているロックダウンが一部緩和されたこと、そして、本格化する企業決算への期待などが要因として挙げられます。

 これにより、株価は再び25日移動平均線を意識しながらの推移へと回復したほか、下段のMACD(移動平均収束拡散手法)も「0円ライン」上をキープする状況となっています。

75日移動平均線に注目!

 そして、次に注目されるのは75日移動平均線になります。

 仮に、このままもみ合いがしばらく続いたとしても、25日移動平均線が75日移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」を達成しそうなほか、足元で上値の抵抗となっている75日移動平均線を上抜けできれば、株価水準をもう一段階切り上げる展開も想定されます。

 もちろん、75日移動平均線が抵抗として機能し続ける可能性もあるため、今週は株価の戻り基調の継続が焦点になりそうです。

 となると、「株価は上方向と下方向のどちらに向かいそうなのか?」が気になるところですが、短期的なテクニカル分析では何だかんだで、上方向への意識が優勢のサインが出ています。

図2 日経平均(日足)とRSI (2022年4月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は、上段が日経平均の日足チャート、下段がRSI(相対力指数)と呼ばれる指標です。

 RSIとは、一定期間における値動き幅の合計のうち、上昇した値幅の割合を示したもので、0%から100%の範囲内でRSIの数値が高いほど買いが強く、反対に数値が低いほど売りが強いことを意味し、買われすぎや売られすぎなどの相場の過熱感を探るためによく使われます。

 ただ、今回はRSIの値ではなく、株価との方向感を比較することに着目します。図2を見ると、足元の株価は3月9日から4月12日にかけて下値が切り上がっている一方で、RSIの下値が切り下がっており、株価とRSIの向きが反対の、いわゆる「逆行現象」と呼ばれる格好になっています。

 逆行現象は、主としてトレンド転換のサインとして説明されますが、逆行現象にはトレンドの「転換型」と「継続型」のふたつがあり、ここでは詳しい説明は省略しますが、今回出現しているのは後者のトレンド継続型と考えられます。

 実際に、図2のチャートを過去にさかのぼると、昨年の8月20日から10月6日にかけて、安値が切り上がる一方でRSIが切り下がる、ちょうど足元の状況と似ているタイプの逆行現象が出現していましたが、その後の株価はもみ合いを続けながら下値を切り上げていきました。

 また、当時は75日移動平均線と200日移動平均線の距離が近く、株価は上抜けた75日移動平均線をサポートにしつつ、200日移動平均線超えをトライしていきましたが、足元では両者の距離が離れているため、株価が上昇した場合、200日移動平均線や2万8,000円あたりが上値のメドとなりそうです。

 ちなみに、昨年の逆行現象の出現後において、戻り基調の値動きを細かくみていくと、もう1つの逆行現象(トレンド転換型)も見えてきます。

 具体的には昨年11月あたりの場面なのですが、この時は株価が戻り高値を更新している一方で、RSIの上値が切り下がっていました。そして、ほどなくして株価が下落に転じています。今後の株価が戻り高値を更新するような値動きになった場合には、RSIの向きも要チェックです。

 このように、日経平均の短期のチャートでは、しばらくは株価の戻りや堅調な値動きが期待できそうな印象ですが、気を付けておきたい点もあります。

ボラティリティと、揺れる相場材料に引き続き、要警戒

 1つ目は、相場のボラティリティ(値動きの振れ幅)がまだ大きいことです。

図3 日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2022年4月15日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡデータを元に筆者作成

 上の図3は前回のレポートでも紹介した、75日移動平均線で見た乖離(かいり)率推移のボリンジャーバンドです。先週の乖離率は、中心線(MA)まで低下した後、この線がサポートとなり、0%ラインをうかがうところまで戻しています。

 また、前回のレポートでは、トレンドが発生しているのとは反対側のバンドの向きに注目しました。通常、トレンドが発生した時のバンドの向きは上下に拡大していくのですが、発生しているトレンドと反対側のバンドの向きが変わったときに、トレンドが一服するという見方があります。

 足元ではマイナス2σ(シグマ)が該当するのですが、実は、先週末15日(金)時点の値(マイナス10.81%)が前週末から変わっておらず、バンドの向きが上向きに変わり切れていない状況のため、値動きが大きくなりやすい状況が続いていると考えることができます。

 もう1つ、気をつけておきたいのが、相場材料です。

図4 相場材料の整理 (2022年4月15日時点)

各種資料より楽天証券作成

 先程も述べたように、先週の株式市場はインフレ傾向の一服観測で株価が上昇する場面がありましたが、相場の地合いは基本的に米金利の動向に合わせて株価も上下しているため、ムードが日替わりで変化しやすい状況です。

 したがって、株価が一段高となるには企業業績のサプライズなどのきっかけが必要になりますが、今週の国内企業の決算については日本電産が注目されるものの、銘柄数は先週から少なくなります。

 一方の米国では、テスラやネットフリックス、J&J、P&G、IBMなどの発表が控えており、今週の日本株は米国株市場の動きに合わせる場面が増えそうです。

 また、週末時点の米10年債利回りは2.82%でしたが、月初の4月1日は2.37%でしたので、0.5%ほど金利が上昇し、ちょうど次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で想定される利上げ幅を織り込んだといえますが、そもそも米金融政策の正常化ペースは前回より大きく上回ることに変わりはなく、多少の引き締めペースの鈍化観測だけで今後もグイグイ株価を上昇させていくのは難しく、「FRB(米連邦準備制度理事会)には逆らうな」という相場格言への意識も高まってくるかもしれません。

 そのほか、中国の「ゼロコロナ政策」の徹底による影響や、ウクライナ情勢をめぐっては、ロシアが5月9日の対独戦勝記念日に向けて軍事行動を活発化させているなど、相場の波乱になりかねない材料が多く燻(くすぶ)っており、不安定さも念頭に置いて取引に臨む必要がありそうです。