今年も多くのファンドが新興国への投資に興味を持っている。新興国への強気は続いているが、現在、新興国は米国の量的緩和のあおりを受けて、インフレを抑えるため「利上げサイクル」に入っている。基本的にバブルを抑えるための利上げなので、新興国の株は昨年と比べて買いにくくなっている。債券相場はどこの国もバブルで、ここから上値を買い進むのはリスクが大きい。
外為市場は、
- 量的緩和期間のドルは買いにくい
- 財政金融不安のユーロは買いにくい
- 資源・高金利通貨の豪ドルは洪水被害
という状況で、現在、相場の柱がないのである。
筆者は通貨の相場を見るとき、まずドルインデックスを確認するが、年末からは「いってこい相場」の連続となっており、大きなトレンドは発生していない。
ドルインデックス先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ
ドルインデックスにトレンドが発生していないときは、どのような通貨ペアを売買しても大相場にはなりにくい。ドルやユーロに対する信用不安も後退しており、ドルが売られても、ユーロが売られても、買いが入っていたゴールドも昨年11月以降はボックス相場となっている。
ゴールド先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ
ボラティリティの調整が進んでいたユーロ/ドルは先週からトレンドが発生する機運が高まっていたが、ポルトガル・イタリア・スペインの国債入札が当局の買いもあって無事通過した。ソブリンリスクが後退したことで、短期筋のストップ・ロス注文を巻き込んで大幅高となっているが、トレンドは発生していない。ユーロの歴史的な周期性をみると、例年3月までは大幅に売られることが少ないが(10月~3月の期間はドルが買われにくい)、この季節性が影響しているのかもしれない。
ユーロ/ドル(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ
このように日足レベルで大きなトレンドが出ているわけではないので、筆者は時間枠を替えて「1時間足」の売買を行っている。日足にトレンドがない以上、1時間足でも大相場は期待薄で、現在大きな勝負はしていない。ユーロ/豪ドル・ユーロ/スイス・ユーロ/ドルのADXおよび標準偏差ボラティリティの波形を確認しながら淡々と売買しているのが現状だ。
ユーロ/豪ドル(1時間足)
上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)・14時間ADX(赤)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ
ユーロ/ドル(1時間足)
上段:26時間標準偏差ボラティリティ(青)・14時間ADX(赤)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ
いずれにせよ現在は視界不良の相場だが、通貨ファンドの中期的な興味は豪ドル・カナダドルといった資源通貨にある。1月12日にゴールドマンサックスがカナダドルとメキシコペソの2011年末の相場水準について予想を引き上げているが、昨年後半から債券ファンドの資金は財政不安のないカナダ、メキシコ、ブラジルに向かっているし、カナダにはアジアからの資金流入も観測されている。豪ドルは例の洪水被害が豪州経済へと与える影響が懸念されているが、資源需要は根強く中期的なインフレ率の見通しも上向きと見られるため、今年後半にかけては利上げが予想されている。
2011年の相場は、一言で言うと「過剰流動性相場」だ。このカネ余りと懸念材料のせめぎあいとなり、一本調子の上昇はないだろうが、下値はカネ余りで「買い」が入ることになる。ドルインデックスと相関性が高いユーロ/ドルやドル/スイスの相場はトレンドを持ちやすいが、クロス円相場はレンジやもちあいの期間が長く、トレンドフォローにはあまり向いていない。したがって、豪ドル/円やカナダ/円の取引はストップ・ロスを置いて、周期的なボトム(21日ボリンジャーバンド2σあるいは13日移動平均3%カイリの水準)を狙うのがよいだろう。トレンドを追求する投資家は、昨年同様にドルストレートの通貨ペアを売買するべきである。
波動パターン
上段:ドルインデックス・ユーロ/ドル・ドル/スイス
下段:クロス円
カナダ/円(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ
豪ドル/円(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ
豪ドル/ドル(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ
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