5月から64歳までiDeCo加入可能に

 60~64歳の方に朗報です(年齢以外のiDeCo加入条件を満たす方)。5月から、65歳未満であればiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるようになります。

 5月から新たにiDeCoに加入できるようになるのは、具体的には【1】60歳以上65歳未満で会社員・公務員など(国民年金第2号被保険者)【2】60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している方です。国民年金に任意加入している海外の方も加入できるようになります。詳しくは、以下をご参照ください。

令和4年(2022年)5月からiDeCoに加入できる年齢の要件などが拡大されます

 私(筆者)は、昨年6月に60歳になったので、iDeCoの積み立てがいったんできなくなりました。ただし、5月から再び可能となります。許容される枠の上限で積み立てを再開し、65歳になるまで続ける予定です。

 私にとって、iDeCo積み立てを再開するメリットは3つあります。

【1】拠出金が所得控除になります。
【2】運用益が非課税となります。
【3】受け取り時にも節税メリットがあります。


 詳しくは後段で解説します。

 5月からもう1つ、制度変更があります。受け取りを75歳になるまで遅らせることができるようになります(現在は70歳になるまで)。非課税の投資を最長74歳まで続ける選択肢が得られます。

 それでは、60歳の私がiDeCo積み立てを再開するメリットを、NISA(少額投資非課税制度)と比較しながら説明します。

【1】拠出金が所得控除になるメリット→iDeCoのみ。NISAにはない。

【2】運用益が非課税になるメリット→NISAと同じ。ただし、非課税になる期間がiDeCoの方が長くなる可能性があります。iDeCoでは、受け取りを開始するまで非課税投資を続けられます。60歳から受け取りが可能ですが、最長で75歳になるまで受け取りを遅らせることも可能になります。

 非課税期間について、40歳の人を例にとって説明します。iDeCoでは、少なくとも60歳になるまで受け取りができません。60歳で受け取るとしてもそれまで20年間の非課税投資を行うことになります。もし60歳で受け取らず、75歳から受け取るとすると、35年間、非課税投資ができます。

 非課税期間が5年で終わるNISA、20年で終わるつみたてNISAより、iDeCoの方が非課税期間が長くなる可能性が高いといえます。なおiDeCoは若いうちに始めるほど、非課税期間が長くなります。最長75歳になるまで非課税投資を続ける選択肢があるからです。

【3】受け取り時の節税メリット→NISAは受け取りには課税されない。

 iDeCoは受け取り時に課税される可能性があるが、通常は課税されずに済む節税メリットがあります。

iDeCo、3つの節税メリット

 iDeCoには3つの節税メリットがあります。すぐに恩恵を感じられるのは、【1】拠出金が所得控除、です。

【1】拠出金が所得控除になります

 年末調整、または確定申告によって所得控除を受け、所得税・住民税の納税額を減らすことができます。
 たとえば、民間企業の勤務者で、給与収入が650万円(課税所得350万円と仮定)の方は、iDeCoで拠出額の約30%分、節税できます(復興特別所得税を勘案しない計算)。年間27万6,000円(月額2万3,000円ずつ)拠出を行うならば、単純計算で、年間8万2,800円の節税となります。

【2】運用益が非課税となります

 運用期間中に得られる利息・配当金・売却益が、非課税となります。将来、10万円の運用益(配当金や売却益)が得られるとします。通常の課税(分離課税・単純計算)では、2万円(復興特別所得税を勘案しない計算)が税金として差し引かれます。iDeCo・NISAなど非課税制度を使っていれば、10万円まるまる受け取れます。大きな差となります。

【3】受け取り時にも節税メリットがあります

 一時金で受け取るならば、退職所得控除の対象となります。年金方式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。詳細は割愛しますが、非課税で受け取れる可能性が高いといえます。

iDeCoに入るデメリット

 主なデメリットについても、説明します。

【1】原則60歳まで引き出しができない

 60歳になるよりも早い時期に、住宅購入や子供の教育などで使う予定があるお金ならば、iDeCoではなく、NISAやつみたてNISAで投資した方が良いと考えられます。60歳になれば原則、受け取り可能となります(加入期間によって数年遅れることもあります)。

【2】投資信託を通じて株などに投資する場合、値下がりすることもある

 投資信託で運用する場合、当然ですが、必ず資産が増加するとは限りません。値下がりする可能性もあります。運用リスクを取りたくなければ、iDeCoで定期預金に加入することもできます。
 ただし、私は、60歳まで長期運用できるお金を定期預金に置いておくのは、おすすめしません。利回りが低くてほとんど資産が増えないからです。短期的な値下がりリスクを負っても、長期的な資産形成に寄与すると期待される投資信託などに投資していくべきと考えています。
 ちなみに私はiDeCoでは株式を組み入れた投資信託を選んで投資しています。日本株(TOPIXインデックスファンド)50%、グローバル株式ファンド50%の配分比率としています。

【3】加入先によっては運営管理手数料がかかる場合がある

 ただし、楽天証券ならば、運営管理手数料は、条件なしで誰でも無料です。

専業主婦(主夫)などで課税所得ゼロだと「所得控除」メリットはない

 iDeCoの3つの節税メリットのうち、すぐに恩恵があらわれるのは、拠出金が所得控除になることでした。ただし、課税所得がゼロの場合は、そのメリットがありません。

iDeCoでの年間拠出金上限は、勤務先や働き方によって異なる。

 以下の通り、加入資格・年間の拠出金上限などが決められています。

iDeCoの概要

出所:楽天証券が作成
※2022年5月以降、65歳まで加入可能になるのは、年齢以外のiDeCo加入条件を満たす方になります。くわしくはこちら>>

 iDeCoに年間いくら拠出できるか、上の表に示した通り、勤務先や働き方によって異なります。iDeCo枠は、目いっぱいまで使い、3つのメリットをフルに得ていくことが良いと思います。