「良い投資家」は金利観察を欠かさない
株式投資をするにあたり日頃から金利の動きに注意を払うことは「良い投資家」になる早道です。
一般に金利と株式バリュエーションはシーソーのような関係にあります。つまり金利が上昇すれば株式バリュエーションは圧迫を受けるのです。
債券が売られると債券価格は下落します。その場合、債券利回りは逆に上昇します。これは配当を出している企業の株価が下がれば下がるほど利回りは上昇するのと同じ理屈です。
債券には償還期限の長さに応じて短期債から長期債までいろいろな種類があります。
短期債の利回りは中央銀行、米国の場合だとFRB(米連邦準備制度理事会)が決める政策金利に左右されます。
一方長期債になればなるほど将来のインフレに対する市場参加者の予想が利回りを決める重要な要素になります。いま将来にわたりインフレが小さいと市場参加者が感じれば長期債の利回りも低くなります。
景気が強い局面ではインフレ圧力も強くなるので、将来のインフレに対し市場参加者の予想が高い、言い直せば長期金利が高い局面では経済の成長ポテンシャルも大きいと解釈されやすいです。
日本は経済成長ポテンシャルが小さい国の代表例ですが日本の長期金利はとても低い水準でずっと推移してきました。
以上が金利を観察する際に個人投資家が知っておく必要のある最低限の知識となります。
最近の金利の動き
それでは実際に最近の金利の動きを見てみましょう。まず短期金利の代表選手である2年債利回りのチャートを示します。
上のチャートを見るとこのところ急速に2年債の利回りが上昇していることが読み取れます。上で説明したように短期債の利回りは「次にFRBが政策金利をどう動かす?」という予想に連動する性質があります。つまり市場参加者は「FRBはぐいぐい政策金利を引き上げる」ということをこのチャートは織り込んでいるのです。
次に10年債利回りのチャートをお見せします。
こちらも最近利回りが上昇しているのですが2年債に比べるとその上げ方は緩慢なことがわかります。
上で説明した通り、10年債利回りは将来のインフレに対する市場参加者の考え方を色濃く反映します。するとこのチャートから言えることは「投資家は遠い将来のインフレはそれほどひどくならないと感じている」ということです。
もっと言えば米国経済の潜在成長率は、それほど高くないという風にも言い直せるのです。
長短金利差
いま10年債利回り-2年債利回りを計算すると「長短金利差」が求められます。それをチャートにしたものが下です。
長短金利差が大きければ大きいほど、言い直せばこのチャートが上に行けば行くほど景気は力強く成長すると市場参加者が信じており、逆にこれがゼロに近づけば景気の先行きに悲観的だと解釈できます。いまはこのチャートが突っ込んでいるわけですから景気の先行きに関しては悲観論が台頭していると理解して良いです。
そしてこの長短金利差が「0」になると、それから1年、ないしは2年後に米国経済はリセッション(景気後退)入りします。
なぜ長短金利差が「0」になるとリセッションのリスクが高くなるのでしょうか? その説明はいろいろな仕方がありますが、一例として銀行は短期金利で資金を調達し、それを長期で貸し付けている関係で、長短金利差が「0」となると全く融資業務を行うインセンティブがなくなってしまいます。
それは銀行からお金を借りにくくなる(=これを専門用語で金融コンディションのタイト化と言います)現象が起きます。もっと平たい言い方をすればカネ詰まり感が出るということです。
いま短期金利はFRBなどの中央銀行がコントロールしているわけだから長短金利差が「0」になりそうなときはFRBは金融引締めの手を休め、すこし手加減してやる必要が出てきます。
株式市場の動きだけでなく金利の動きにも気を付けるべき理由
さて、3月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降、米国株は力強い動きを見せています。それは歓迎すべきことなのですがその陰で10年債利回りも急上昇しています。
これは何を意味するか? と言えば長期でのインフレが大きい、そして景気が力強いという見方が市場参加者に広がっていることを意味し、それだけFRBがもっと大胆に動ける余地が生じたことを意味します。言い直せば長短金利差「0」を心配せず、どんどん利上げできるということです。
先週、ジェローム・パウエル議長がやぶから棒に「0.50%の刻み幅での利上げもありうる」という意味の発言をしたのは、このようなことに起因しています。
もう一段踏み込んだ言い方をすれば、いまのマーケットは株式が強ければそれだけアグレッシブにFRBが利上げする余地が広がるということなのです。つまり株が騰がったと喜んでいたら、突如、FRBから冷水を浴びせられるリスクがあるということです。
この点に留意しながら、無駄にカンカンの強気にならず、慎重に投資を進める必要があります。
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