FRBは10月3日、2011年半ばまでに約48兆円(6,000億ドル)の米国債追加購入を行うことを決定した。NY連銀が発表したモーゲージ担保証券(MBS)などの償還資金による米国債購入を合わせると、月間1100億ドル程度が購入される。10月4日のNYダウは前日比219ドル高の1万1,434ドル84セントまで上昇し、2008年9月8日以来の高値となった。これでリーマン・ショック前の水準を回復したことになる。
世界を揺るがしたリーマン・ショックから2年。なりふりかまわぬ未曾有の財政出動と大規模な金融緩和で、リーマン・ショックを封じ込めようとする“ヘリコプター・ベン”の思惑は、(金融市場だけみれば)一応成功しているといえるだろう。この裏側には巨額の政府債務が積み上がっており「両建て経済破綻の将来リスク」は極めて大きいが、8月のPOMO(NY連銀がドルを刷って、投資銀行の持っている米国債や不動産担保債券をそのドルで買い、投資銀行はその金で米国株を買うという連携プレイ)が始まってからの金融市場は"実弾投入"と"いいとこ取り"で動いているので、悪材料は無視されている。
先進各国はどこも日本型のデフレを恐れて通貨供給量を増やしている。また、自国の景気回復を新興国への輸出に頼るしかないため、自国通貨を安くしようと更なる金融緩和を競っている。米国の金融緩和1100億ドルの資金の多くが新興国や商品市場に向かうという観測が出ているが、先進国ではデフレが懸念される一方で、新興国や商品市場ではバブルも心配されている。来週末の11月11・12日にG20首脳会議を控え、ブラジルや中国など新興国のほか、ドイツやフランスなどからも米金融緩和によるドル安に対する批判の声が上がっている。しかし、住宅や雇用が回復するまで米国は基本的にドル安政策を続けるだろう。米国が不景気の時にドル高政策をとったことは過去一度もない。
もう2年近く前に、オバマ政権の経済顧問であるハーバード大学教授のケニス・ロゴフが「巨額のレバレッジ(債務)を解消しなければいけないバブル収縮期に必要なことは、“意図的にインフレを起こし、債務の価値を減らす”ことだ。6%程度のインフレが2~3年続くのが望ましい」と発言したが、まさにその通りになってきた。最近では、ニューヨーク連銀のダドリー総裁とシカゴ地区連銀のエバンズ総裁が、「高いインフレ率を目指すことにより、現在の低インフレの状況を補うことが可能かどうかをFRBは検討すべき」であるとし、意図的にインフレを起こすというインフレターゲット導入を奨めている。したがって、デフレ懸念が強くてもコモディティや株が高くなっていく。
債券の帝王と呼ばれるPIMCOのビル・グロース氏は、「FRBの政策はインフレにつながる性質のものであり、真実を言ってしまえば、ある意味でのねずみ講ですらある」「FRBが、非伝統的な金融緩和を続けた場合、ドルは今後数年間で20%下落する恐れがある」「QE2(量的緩和第2弾)は、より多くのドルを生み出すだけでなく、投資家がドルから稼ぐ利回りも低下させ、ドルと重要なつながりのある海外投資家が現在の形や現在の価格でドルを保有する意欲を減退させる。ある程度は、これが米財務省とFRBがともに望んでいることだ」「均衡を得る方法の1つは、自国通貨の価値を他国の通貨よりも速いペースで引き下げることだ。ドルは準備通貨であり、これはショックなことだが、時間とともに国際経済が均衡を取り戻すために必要な条件である限り、これがわれわれの向かっている方向だ」(ブルームバーグ)と語っている。
資源価格の上昇や新興国のインフレ懸念は、将来的にコストプッシュインフレを起こすことになるだろう。それは、やがて到来する世界景気のリスクであるが、その前にもう一段のバブル相場が展開されることになりそうだ。投機マネーは新興国・商品・株式市場に流れ、米銀は0%台の金利で調達した資金を4%台の30年国債に投資してサヤを抜く。この構造でもうしばらくはバブル相場が継続していく。
意図的にインフレを起こそうというFRBの運動が続いているので、ドルの垂れ流しに歯止めがなくなってしまっている。今回の量的緩和の規模は6,000億ドルだったが、2兆ドルの予測が出るなど、来年以降の量的緩第3弾も噂されている。このような状況では基本的にドルは買われにくい。FOMC後のマーケットは株高・商品高・金利安・ドル安で反応している。
ドルインデックス先物(日足)6月以降続くドル安の3回目の波動に突入か?
米10年国債先物(日足) 価格上昇=金利低下
ボラティリティ調整は十分、さらなる金利低下を伺う展開か?
NYダウ先物日足(左)と日経平均先物(右)
原油先物日足(左)とゴールド先物(右)
大豆先物(週足)大相場が続く
原油先物(日足)明確なもちあい離れとなるか?
上記のチャートを見ていると、株はややランダム(無秩序)な相場が続いているが、ゴールドや原油は相場の調整が終了し、トレンドが発生しそうな状況となっている。大豆は大相場だ。
一方で、ドル/円相場はまたもや筆者の定義するトレンド相場が消滅し、ニュートラルな状況となっている。
ドル/円(日足)
投資家にとって、最も非効率な商品はドル/円である。仮にドル/円で円売りを行うのであれば、まだ豪ドル/円、ユーロ/円などのクロス円を売ったほうがよいだろう。ドル安相場なのだから、豪ドル/ドルやユーロ/ドルを買うのが最も効率がよい。それが相場の道理というものだ。
ユーロ/円も、あれだけ上がったユーロ/ドル相場に追随せずにユーロ/円相場はレンジ相場が続いている。大雑把に言えば、6月以降の豪ドル/円も74~82円のレンジで、大きなトレンドは出なかった。ドル安相場なので、投資家は素直にドルストレート通貨で勝負するのがよいと思われる。
ユーロ/円(日足)
豪ドル/円(日足) レンジブレイクか?
豪ドル/ドルやユーロ/ドルはもう少し値幅で調整するかと思っていたが、ほとんど横這いの調整局面を終了しトレンド相場に突入しそうだ。なんだかドル安バブルへGO!といった投資環境だが、G20首脳会議もある。相場は何が起こるかわからないので、ストップ・ロス注文は必ず置いておきたい。本日は米雇用統計を受けたポジション調整相場となりそうだが、余程驚くような数字が出ない限り、ドル安相場の大局は変わらないだろう。
ユーロ/ドル(日足)
豪ドル/ドル(日足)
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