「加重平均」と「指数ベース」
「日経平均(2022年3月18日終値:2万6,827.43円)の予想PER(株価収益率)は13倍だから米国S&P500指数に比べて大幅に割安だ」「日経平均は2万2,350円あたりにPBR(株価純資産倍率)1倍の水準があるから、そこまで下がったら解散価値なので割安だ」という声も聞こえてきますが、これは、実態を表しているのでしょうか?
日経平均のPERとPBRには2つの値があることをご存じでしょうか? 「加重平均」と「指数ベース」の2種類(日本経済新聞朝刊には、「加重平均」が掲載されている)があり、冒頭のPER13倍、PBR1.2倍は、「加重平均」の値です。しかし、私は「加重平均」ではなく「指数ベース」が実態であり、公正であるためには「指数ベース」であるべきだと考えています。
冒頭の話を「指数ベース」の値を基にしてお伝えすると、「日経平均の予想PERは17倍だから、大きく割安感があるという水準ではない」「日経平均のPBR1倍の水準は1万5,600円辺りだから、2万2,350円まで下がっても解散価値ではない」ということになります。
どういうことなのか、お伝えしていきましょう。
PER、PBRの「加重平均」「指数ベース」の値は、日本経済新聞社の日経平均プロフィルのウェブサイトにて参照することができ、3月18日時点の値は、次のようになっています。
加重平均 | 指数ベース | ||||
---|---|---|---|---|---|
PER | 13.01倍 | 17.04倍 | |||
PBR | 1.20倍 (1株当たり純資産:2万2,356円) |
1.72倍 (同:1万5,597円) |
|||
注:1株当たり純資産は、日経平均株価÷PBRにて計算 |
「加重平均」と「指数ベース」は、これほどまでに値が異なっています。
ここで、PER、PBRおのおのの「加重平均」「指数ベース」の計算式をみてみましょう。
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PER(加重平均)=時価総額合計÷予想利益合計
PER(指数ベース)=日経平均株価÷日経平均EPS(一株当たり当期純利益)(※1)
※1 日経平均EPS=Σ(予想1株利益×50÷みなし額面)÷除数
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PBR(加重平均)=時価総額合計÷自己資本合計
PBR(指数ベース)=日経平均株価÷日経平均BPS(1株当たり純資産)(※2)
※2 日経平均BPS=Σ(1株純資産×50÷みなし額面)÷除数
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式で表すと難しく感じるかもしれませんが、ざっくりお伝えすると、「加重平均」は時価総額の大きい銘柄の影響力が大きく、「指数ベース」は日経平均の構成比率の大きい銘柄の影響力が大きいことになります。
「指数ベース」が実態
日経平均の構成銘柄について、構成比率を見てみましょう。
日経平均株価の構成比率 上位10銘柄(2022年3月18日時点)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 構成比率 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 9983 | ファーストリテイリング | 7.91% | ||
2 | 8035 | 東京エレクトロン | 7.67% | ||
3 | 9984 | ソフトバンクグループ | 3.91% | ||
4 | 9433 | KDDI | 3.16% | ||
5 | 6367 | ダイキン工業 | 2.94% | ||
6 | 6954 | ファナック | 2.74% | ||
7 | 4063 | 信越化学工業 | 2.41% | ||
8 | 6857 | アドバンテスト | 2.34% | ||
9 | 6098 | リクルートホールディングス | 2.09% | ||
10 | 4543 | テルモ | 1.95% | ||
出所:日経平均プロフィル |
ユニクロを展開するファーストリテイリングと半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンが7%台と大きく、ソフトバンクグループ、KDDIと続いています。
次に、日経平均構成銘柄の時価総額を見てみましょう。
日経平均構成銘柄の時価総額上位10銘柄(2022年3月18日時点)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 時価総額(百万円) | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 7203 | トヨタ自動車 | 32,825,760 | ||
2 | 6758 | ソニーグループ | 15,612,195 | ||
3 | 6861 | キーエンス | 13,298,597 | ||
4 | 9432 | 日本電信電話 | 12,658,935 | ||
5 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 10,077,053 | ||
6 | 9433 | KDDI | 9,265,104 | ||
7 | 8035 | 東京エレクトロン | 9,119,804 | ||
8 | 6098 | リクルートホールディングス | 9,036,075 | ||
9 | 9984 | ソフトバンクグループ | 8,516,562 | ||
10 | 7974 | 任天堂 | 7,924,606 | ||
出所:楽天証券 スーパースクリーナーを用いて作成 |
構成比率の上位10銘柄と、時価総額の上位10銘柄で共通している銘柄は4銘柄となっています。ちなみに時価総額トップのトヨタ自動車の構成比率は1.32%なので、日経平均に対する影響度合いはファーストリテイリング(7.91%)の6分の1しかありません。一方で、時価総額でみると、トヨタはファーストリテイリング(6,349,572百万円)の5.1倍もあります。
日経平均は「加重平均」ではなく「指数ベース」で算出されていてファーストリテイリングの影響が大きいのに、用いるPER、PBRの値が「加重平均」だとトヨタ自動車の影響が大きいということになり、異なる算出方法の物差しで測っていることになります。
測るとしたら同じ算出方法の物差しで測らないと公正とは言えないでしょう。PER13倍(加重平均)とPER17倍(指数ベース)では、受ける印象も大きく違ってくるのではないでしょうか? 日経平均の算出方法と同じ「指数ベース」でPERもPBRも見るようにしないと、実態とは異なる判断、誤認になってしまうと私は考えますが、皆さんはどう思いますか?
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