米財務省は為替政策に関する半期報告書の公表を延期し、それと引き替えに中国は約3年ぶり利上げを行うという政治的な対応をした。ガイトナー米財務長官はWSJのインタビューで「主要通貨はほぼ整合的な水準であり、ドルが対ユーロや対円でこれ以上下落する必要はない」と発言している。

本日から韓国でG20(20カ国)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。「相場が市場で決定され、過度な為替レートの変動や無秩序な動きの悪影響を最小限にする為替システムを求める」との声明草案が浮上しているようだが、中国が利上げを行ったことでG20は玉虫色の結果となりそうだ。ファンド勢の関心はG20よりも来月初めの米FOMC(量的緩和第2弾の資産買い入れ額)にあるようだが、いずれにせよ、直近の相場はイベント前のポジション調整相場となっている。日足はもとより、5分足をみても、1時間足をみても、概ねノーマルレンジ(移動平均乖離)のなかでの乱高下相場が続いている。

ドル安相場は筆者の定義するトレンド相場が終了し、調整相場へと移行したようだ。ユーロ/ドル・豪ドル/ドル・ドル/スイスの26日標準偏差ボラティリティ(青)と14日ADX(赤)は同時に下落しており、相場の方向性がなくなっている。休むも相場という言葉にふさわしい期間であろう。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル/スイス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

相場に方向性のない期間は逆張りに適しているように見えるが、逆張りで収益を上げるのは簡単ではない。慎重な投資家は次のトレンドを待つのがよいだろう。

ほとんどの対ドル相場のトレンド(方向性)が消滅している中で、現在、ドル/円には売りトレンドが発生している。また、豪ドル/円には売りトレンドが発生する可能性があり、ユーロ/円も煮詰まってきている。これらのチャートが示唆する相場の方向は円高だが、ドル/円が79円75銭の「たまげた線」に近い水準にあるため、反転リスクにも注意を要する。

トレンドが大きくならなかったり、トレンドだと思った相場がダマシであったりすることは、相場の世界では日常茶飯事だ。通常は、このダマシであったときの対処(損切り)が1σのラインであるかぎり、壊滅的な損失を蒙る可能性はかなり低くなる。しかし、現在のドル/円相場は介入警戒水準にあり、円相場のトレンドフォローの損失は通常よりも大きくなる可能性があるので注意したい。相場で生き残る秘訣は「防御」にあり、相場でダマシにあったときの対処法のほうが、エントリーポイントより大事である。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

今回のドル安相場は大きなトレンド相場に発展した。「損小利大」を実現するには、トレンドを具体的に認識し、それに乗っていく必要がある。しかし、大きなトレンドはそう頻繁に発生するものではないので、トレードの勝率は低い。勝率の低い手法に耐えられる市場参加者は少ないので、「順張り(トレンドフォロー)取引」で相場にエントリーする人は、実は非常に少ないのが実情である。

相場の損益の決定的な要因は勝率ではない。勝ちトレードと負けトレードの値幅の差こそが重要であろう。

標準偏差ボラティリティやADXが上昇中は、相場についていこう!