先週の株式市場は劇的なリバウンド上昇が続く、久々に明るい1週間になりました。ただ、今週22日(火)~25日(金)も上昇が続くとは限りません。

先週:円安で日経平均株価は上昇。FOMCも波乱なく終了

 先週の日経平均株価は5日連続で上昇し、週間の値上がり幅は1,664円に達しました。18日(金)には2万7,000円台目前の2万6,827円で取引を終えています。

 ウクライナ危機が続く中、これほど上昇した一番の理由は1ドル119円に達する円安が進んだこと。円安は日本の製造業にとって追い風です。また、ドル建てで見ると日本株が割安に映るため、外国人投資家の買いが入りやすい要因になります。

 また、日本時間17日(木)未明には、米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)が終了。0.25%の利上げで波乱なく終わったことが、世界的に株価を上昇させる原動力になりました。

 今回のFOMCでは「2022年に合計7回の利上げ」、「米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の総資産を減らす量的引き締め開始を、5月のFOMCで決定」といった方針が示されました。

 週前半の14日(月)と15日(火)には、中国での新型コロナウイルス「オミクロン型」の感染拡大を嫌気して、香港ハンセン指数が続落しました。

 しかし、中国政府が株式市場の安定確保に乗り出す姿勢を見せると、続く16日(水)、17日(木)には2日間でV字回復するなど、激しく揺れ動きました。

 日本市場では、東証マザーズ指数が週間で10.5%上昇。これまで一番大きく売られてきた新興市場の成長株が一番大きく反転上昇したのは、今後の相場回復にとっては好材料です。

 また、17日(木)には、連休明け22日(火)から新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」が全面解除されることも決定しました。

 日本航空(9201)が週間で11.9%高、ぐるなび(2440)が17.8%高するなど、空運業やサービス業が反転上昇相場のけん引役になりました。

今週:戦況悪化による反動安に警戒が必要

 ただし、先週上げ過ぎた分、今週は反動安に警戒が必要です。

 ロシアとウクライナの戦争は、戦況が不利になったロシアが生物化学兵器や核兵器を限定的に使う懸念、ウクライナに武器輸送をしているポーランドを攻撃する可能性、中国がロシアに軍事支援を行って戦争が世界規模の対立に拡大するリスクなど、株価急落につながる危機の芽がまだまだ残っています。

 日本が祝日の21日(月)には、FRBのパウエル議長が会合で「米国の物価上昇率は高すぎる。今後0.5%の利上げの可能性もある」と発言したため、米国株が下落しました。

 パウエル議長は23日(水)夜に国際決済銀行の会議でも発言するので要注目です。

 23日(水)には、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で演説する予定です。

 今のところ、ウクライナ危機が日本にもたらした最大の影響は急速な円安です。

 その原因は、有事のドル志向や、米国で利上げが行われたことによるドル高の反動といえます。

 先週は、ユーロ、豪ドルなど米ドル以外の通貨に対しても急速な円安が進行しました。これは日本株にとって今週もポジティブな要因になるでしょう。

 ただし、原材料の高騰を値上げで解消できない小売り、外食、食品、運輸といった内需系の業績不振企業の株価には今後、円安が逆風になる可能性もあります。

 24日(木)夜には、ユーロ圏やドイツ、フランス、英国の3月製造業・サービス部門PMI(購買担当者景気指数)の速報値が発表されます。

 ウクライナ危機の影響で、地理的に最も近い欧州各国の3月の景況感がどれぐらい落ち込んでいるかに大きな注目が集まるでしょう。

 厳格なゼロコロナ政策を続ける中国でのオミクロン型の感染拡大にも注意が必要です。感染拡大が続くと、「世界の工場」である中国の生産停滞で世界的な物価高や日本の製造業への打撃も心配されるからです。

 先週の急激な株価上昇は、投資家が「総悲観」だったことに対する修正です。

 こうした激しいリバウンド上昇の背景には、ウクライナ危機などで株を売っていた投資家が、状況緩和で慌てて買い戻しに走ったという要因もあります。

 急激な買い戻しが終わると相場が再び下落するリスクは残っています。

 なぜなら、ロシアのウクライナ侵攻という一番の不安要因が、依然として解決されていないからです。

 年度末の3月下旬は一般的に株価が上昇しやすいといわれている時期。劇的なリバウンド上昇の継続、少なくとも下値固めの底堅い展開に期待したいところです。