世界の株式市場が低迷

 世界の株式市場が低迷しています。いまこれを書いている3月10日(木)ザラバの時点で米国S&P500種指数は年初来-11.63%、ドイツDAX指数は-15.38%、日経平均は-10.77%といった具合です。

トレードで危ない瞬間

 長い強気相場が続くと投資家はだんだん慢心します。そして(ちぇっ!こんなに儲かるのならもっと買っておけばよかった)というような態度になります。(よし、このトレードで人生イッパツ逆転ホームラン打ってやる!)……そういう個人投資家が続出するのです。

 強欲に任せて思い切り大胆に大きなポジションを取る……この瞬間が、株式投資で一番危険なケースです。

 葛藤なく建てたポジションほど危ないポジションはありません。

相場は不安の壁を駆け上る

 ひるがえって現在の市場参加者のセンチメントはどうでしょうか? 

 ロシア軍がウクライナに侵攻して二週間……戦線は膠着しています。一連の経済制裁発動は世界経済の成長抑制要因になると思います。それと同時にインフレを加速させる要因にもなると考えます。

 つまり今は不安な材料が多いのです。

 普通に考えるとこのような場面は投資に向かないと思われます。しかしウォール街には「相場は不安の壁を駆け上る」という格言があります。つまり全く不安材料がないよりも、むしろハッキリわかっている「今買えない理由」があるほうが好ましいのです。

なぜそうなるのでしょうか?

 その最大の理由は、誰にでもハッキリ認識される不安材料はマーケットの下落を通じて、もう株価に織り込まれている可能性が高いからです。

米国株のバリュエーションは適正

 現在、米国を代表する株価指数であるS&P500種指数は今年のコンセンサス一株当たり利益(EPS)に基づいて18.7倍で取引されています。これは過去5年の平均よりほんの少し高い程度です。

 一方株式バリュエーションを決定するもうひとつの重要な要素である金利は低い位置にあります。

 株式バリュエーションと金利はシーソーの関係にあり、一方が高くなるともう一方は下がります。いまは金利が低いわけですから株式バリュエーションは少々がめつくても良いのです。

インフレは沈静化に向かう

 それでは何故年初来米国株はいいとこなしでズルズル下がってきたのか? ということですが、それは市場参加者がインフレを警戒したからです。実際、足元の消費者物価指数は前年比7.9%で推移しています。

 インフレになっている主な理由は賃金の上昇と原油価格の上昇です。

 賃金上昇に関しては2月の平均時給が前月比わずか1¢しか上昇しなかったことからも上昇の勢いに衰えが見え始めています。

 ロシア産原油・天然ガスの輸入禁止措置は一見すると大きなニュースのように思えるのですが実際には需給関係に与える影響は軽微です。

 ガソリン価格の上昇は需要の減退を招くと思われます。それは原油価格が下落に転じることを示唆しています。

 これらのことからインフレはほどなく沈静化に向かうと思われます。そのとき株式市場はそれを好感するはずです。

長期投資とマーケットの変動

 iDeCoや積立NISAは長期に渡り一定の金額を時間をずらして買い付けてゆくタイプの貯蓄の仕組みです。

 マーケットは上昇・下落のうねりを作りながら長期では右肩上がりで上昇する傾向がありますが、このような定期的な買い付け方法を行うと結果として買い付けコストを均す効果が出ます。

 そのような手法をドルコスト平均法と呼びます。

 ドルコスト平均法は「マーケットタイミングよりもコツコツと定期的に買い足してゆく方が成功する投資にとっては重要」とする立場であり、私もこのような「良い習慣」を強く支持します。

 それに加えて今は上に書いたような理由でマーケットは押し目を作っているわけですから良いリズムで長期の積立を開始できる好機と言えると思います。