ブログ『石原順の日々の泡』で「ドル相場にご用心」と書いたら、昨夜からドル安が進行し、ユーロ/ドルが1.2953まで急騰した。本日はドル/円も一時87円を割り込む動きとなっている。
過去のデータをみると、ドルが持続的に買われる局面は他国と比較して相対的にドル金利が高いか、米金利先高感があるときだけである。今年の前半相場は米国の出口戦略を囃して米国にインフレ期待や金利先高感があり、ユーロ危機も手伝ってドルは堅調に推移した。
しかし、今週公表されたFOMC議事録では、景気見通しが下方修正されイエレンなどの一部メンバーがデフレリスクに言及していたことが判明し、米国は出口どころか、追加の金融緩和策が検討課題となっている。
米国が現在の低金利政策を当面維持することは間違いないだろう。ポリシーミックスを考えれば、緊縮財政にせよ積極財政にせよ低金利政策とペアになるのは通貨安政策であり、通貨高というのは整合性がない。米国の政策パッケージのモデルは通貨安しか選択肢がないので、グローバル・マクロ(マクロ経済的な予測に基づき投資を行う)と呼ばれるファンド勢がドル安を仕掛けているのが現在の相場だ。
米国のポリシーミックス
(政策目標を達成するために、いくつかの政策を効果的に組み合わせること)
(マンデルとフレミングによって開発された【マサチューセッツ・アベニュー・モデル】のポリシーミックスには以下の8通りのパターンがあるが、表の5~8は持続不可能なポリシーミックスなので、現実的に持続可能な政策は1~4である)
米10年国債金利(日足) 3%を割れてしまった…
このようなドルが売られるという相場の構造の中でわかりやすい動きをするのは、ユーロ/ドル・ドル/スイスなどのドル・ストレートと呼ばれる通貨ペアであり、とりわけトレンドが明確なユーロ/ドルのトレードが一番簡単だ。このところ、ユーロが世間で言われている反対の動きをしているので、「どこまで上がりますか?」という照会が多い。筆者はそんなことはわからないが、下の相場の黄色いベルト地帯をブレイクして弱気相場になったので、「ここのレンジは重いでしょう」と答えている。ユーロの大勢はまだ弱気相場の範疇で、今後の中・長期トレンドは7月16日現在1.3658となっている20カ月移動平均線が判断材料となるだろう。
ユーロ/ドル(日足) 1σの外で買いトレンド相場が続いている
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σと抵抗帯(黄色の帯)
ユーロ/ドル(月足) 20カ月移動平均線(赤)とフィボナッチのリトレースメント
ユーロは日足で買いトレンドが出ているので、1時間足でもトレンドが出やすい。ドル/円やクロス円より組みしやすいだろう。
ユーロ/ドル(1時間足)
上段:21時間ボリンジャーバンド
下段:14時間ADX
困った通貨はドル/円である。本日21日ボリンジャーバンド1σをブレイクしてきたが、ボラティリティのレベルが高く(リスクが大きい)、筆者はこのような局面でADXや標準偏差ボラティリティが上昇しても大きなポジションはとらないようにしている。
ドル/円(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ
こういった局面は、オプションの価格変動モデルを使って短期売買を行っている。その手法については、毎週、ブログ『石原順の日々の泡』のほうで掲載している「今週の相場の目安」を参照されたい。
世界の七不思議と呼ばれている日本の「円高」と「国債高」だが、またしても円高局面が到来している。筆者はこのような事態が続けば、日本全体がシャッター商店街になるのではないかと危惧している。なんとかしようと、韓国のサムソンを例にビジネス・モデルを構築する企業も増えてきた。しかし、民間の自助努力には限界があろう。
韓国経済や中国経済が急成長している本質は<通貨安>にある。「通貨安は最も安上がりの景気対策」なのだ。下のチャートは中国人民元・韓国ウォン・日本円の1980年からの月足(対ドルレート)である。
中国人民元の1980年の水準は1.5元で、2010年のレートはその当時より3分の1ほど元安である。韓国ウォンも1980年当時の半値である。経済急成長・貿易黒字の人民元が、なぜこんなに安いのかはともかく、これでは余程の人民元高か円安にならないと、日本の製造業や中小零細企業は勝ち目がない。市場はいつも理不尽である。
ドル/人民元(月足) 目盛りはひっくり返してある(上昇=人民元高)
ドル/韓国ウォン(月足) 目盛りはひっくり返してある(上昇=韓国ウォン高)
ドル/円(月足) 目盛りはひっくり返してある(上昇=円高)
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