「損小利大」という言葉をよく目にするが、「損小利大」は順張り(トレンドフォロー)取引の目的である。しかし、どうやったら利益が大きくなり、損が小さくなるのかが、具体的に説明してあることはほとんどない。「損小利大」を実現するにはトレンドを具体的に認識し、それに乗っていく必要があるが、大きなトレンドは頻繁に発生するものではないので、トレードの勝率は低くなる。勝率の低い手法に耐えられる市場参加者は少ないので、順張り(トレンドフォロー)取引で相場にエントリーする人は、実は非常に少ない。

トレンドとはノーマル相場(通常の周期的循環相場=逆張り相場)の外で発生する。したがって、順張りとは、「上げ相場なら高値を買ってさらに高値を売る、下げ相場なら安値を売ってさらに安値を買い戻す」という作業を行うことになるが、これは値頃感を捨ててアホにならないとできないことだ。順張り(トレンドフォロー)取引は、人間の心理からいうと非常に難しい取引である。

筆者もこのような値頃感という心理的抵抗を取り除くのには長い時間を要したが、標準偏差ボラティリティとADXというトレンドを認識する道具を手に入れてからは、値頃感という呪縛から解放されている。「高値を買ってさらに高値を売る、下げ相場なら安値を売ってさらに安値を買い戻す」という精神的に困難な作業を行うには、ボリンジャーバンドの1σの外だけで取引する手法で解決した。上記の売買手法は筆者のオリジナルであるが、筆者の関連するファンドで採用され、「Bollinger Bands 1σ Breakout Trigger with StdDev」と呼ばれている。

日経平均株価(日足)「Bollinger Bands 1σ Breakout Trigger with StdDev」

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
緑色の部分がトレンド相場・黄色の部分がランダム(無秩序)相場
下段:21日ボリンジャーバンド1σの飛び出し局面(緑色の部分=トレンド相場)


(出所:石原順)

さて、現在の相場環境は多くの金融商品で26日標準偏差ボラティリティと14日ADXが低い位置から上昇しはじめており、トレンドが発生、またはトレンドの発生前夜といった状況にある。相場の損益の決定的な要因は勝率ではない。勝ちトレードと負けトレードの値幅の差である。トレンドの発生局面は、値幅がとれる可能性のある大きな収益機会であるので、筆者としては必ず相場にエントリーしなければならない。

26日標準偏差ボラティリティと14日ADXによるトレンドの有無や認識については、ブログ「石原順の日々の泡」で連日取り上げているので、参照されたい。

相場は循環である。現在の相場はユーロがマーケットテーマの主役から降りて、ドル安・株安相場が新たなマーケットテーマとなっている。果たして、このまま相場の悪役をドルが引き受けるのか?昨日、長大陽線が出現しトレンド発生前夜となっているユーロ/ドルの動きに注目したい。

ドル/円(日足) 2010年は大きなトレンドが出ていない

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
緑色の部分がトレンド相場・黄色の部分がランダム(無秩序)相場
下段:21日ボリンジャーバンド1σの飛び出し局面(緑色の部分=トレンド相場)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) 悪さ比べの相場だが、買いトレンド発生か?

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
緑色の部分がトレンド相場・黄色の部分がランダム(無秩序)相場
下段:21日ボリンジャーバンド1σの飛び出し局面(緑色の部分=トレンド相場)


(出所:石原順)

筆者は、21日ボリンジャーバンド1σブレイクで、ドル/円、豪ドル/円、ユーロ/円の売りを持っていたが、昨日はユーロ/円がボリンジャー1σの内側に入ったため手仕舞った。残念だが、相場のトレンドが大きくなるか、消滅してしまうかは、神のみぞ知る世界であり、筆者はあまり興味がない。26日標準偏差ボラティリティ、または14日ADXが上昇しているうちは相場についていくだけだ。そして、相場が21日ボリンジャーバンドの内側に入れば、速やかに撤退する。

ユーロ/円(日足)

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ


(出所:石原順)