先週はロシアのウクライナ原発攻撃が株式市場を奈落の底に落としました。今週3月7日(月)から11日(金)の株式市場は、好転を期待できるでしょうか?

先週:ロシアの原発攻撃で株価急落。原油は急騰

 先週3月4日(金)の日経平均株価は前週末比491円安となり、2万6,000円の大台を割り込みました。

 3月2日(水)には、一般市民を巻き込んだ戦争の長期泥沼化、原油価格高騰によるインフレ加速などが嫌気され、4日ぶりに下落。

 4日(金)の取引開始直後にウクライナ南東部にある欧州最大のザポロジエ原発への攻撃と火災のニュースが伝わると、さらに株価は急落しました。

 一方、上昇が止まらないのは、ロシアが主要な生産国である原油や穀物などの商品(コモディティ)価格です。

 欧州で取引される北海ブレント原油や米国テキサス産の良質な原油WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格がいずれも1バレル120ドル台目前まで上昇。

 穀物価格も急騰しています。ロシアとウクライナで世界輸出の3割を供給する小麦は、14年ぶりの高値まで値上がりしました。

 そのため、先週大きく上昇した上場投信の中には、WisdomTree小麦(1695)WisdomTree産業用金属(1686)など日頃あまり目立たない銘柄がありました。

 今後も、少額資金で投資できるコモディティ関連の投資信託やETF(上場投資信託)への分散投資が、資産防衛対策になりそうです。

 3月2日(水)、3日(木)には米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が議会で証言しました。

 戦争による株価急落をなだめるような発言に対する期待感もありましたが、「インフレが高止まりする場合は0.50%の利上げもあり得る」といったタカ派(金融引き締めに積極的な)発言を維持。米国株下落の遠因になりました。

 4日(金)発表された2月の米国雇用統計は、景気動向を映す非農業部門の新規雇用者数が前月比67万8,000人増と予想を大幅に上回りました。

 しかし、戦争不安が何よりも大きな悪材料となり、米国株は続落。

 多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は週間で1.3%下落。ハイテク株が集まるナスダック総合株価指数は2.8%安と、さらに下げが大きくなっています。

今週:ロシア・欧州関連株は続落か。停戦協議に注目

 週明けの日経平均は前週末比764円安の2万5,221円と昨年来安値を更新しました。欧米がロシア産原油の禁輸措置を検討し始めたことで、原油価格が急騰。資源高による景気悪化リスクが警戒され、株安となりました。

 週末の5日(土)には、ロシアが民間人脱出のための限定的停戦協定を破ってウクライナ南部の都市などを攻撃。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はNATO(北大西洋条約機構)へ領土の上空を守ってほしいと訴えましたが、NATOはこれを拒否。NATOが介入すれば欧州全体を巻き込んだ全面戦争につながりかねないとの判断です。

 今週初めの注目は、週末に予定されるロシア・ウクライナ第3回停戦協議の結果でしょう。ゼレンスキー大統領が、首都キーウ(キエフ)が焼け野原になる前に、ロシアの要求をどの程度、受け入れるか。

 プーチン大統領としては、ウクライナ全土を占領するのは経済・軍事コストがかかり過ぎることから、何を落としどころにするか。

 両者の覚悟に注目が集まります。

 10日(木)には、ECB(欧州中央銀行)の政策理事会が開催されます。ラガルド総裁がロシア金融封鎖で資金不安に直面する欧州の銀行に何らかの援助措置を表明するようなことがあれば、株価にとって朗報です。

 今週最も注目される経済指標は、10日に発表される米国CPI(消費者物価指数)です。

 今回発表される2月の予想値は前年同月比7.9%、前月比0.8%の伸び。40年ぶりの物価上昇となった1月をさらに上回りそうです。原油価格が一段と上昇し、スーパーインフレ時代に突入すれば、株価を押し下げる要因となります。

 日本株では、ロシア・欧州関連株の急落が続きそうです。日産自動車(7201)などの自動車業界や、JT(2914)などはロシアやウクライナに生産拠点があります。エアコン大手のダイキン工業(6367)、電動工具のマキタ(6586)などは欧州の売上比率が高い銘柄です。

 ただし、株式市場全体が総悲観というわけではありません。

 原油やパラジウム、コバルトなどレアメタルの高騰が続く中、世界に石油の権益を持つINPEX(1605)などの資源株や東邦チタニウム(5727)など非鉄金属株、さらに日本郵船(9101)など海運株は高値をつけています。

 また、意外にも東証マザーズ指数に明るい兆しが出ています。

 同指数は2月24日のロシア侵攻開始日につけた最安値652ポイントから反転上昇が続き、さすがに先週後半は下げたものの、日経平均株価よりも底堅く推移しています。

 戦争不安による長期金利の低下、さらに緊迫する国際情勢と無縁な内需系IT企業が多いこともあり、本格的な反転上昇相場入りの兆候も出てきました。

 いずれにせよ、先週の原発攻撃を超えるような戦闘のエスカレートがなく、株式市場が多少なりとも落ち着いてほしいもの。

 これまで下げ過ぎた分、どんな形でも停戦決定となれば、株価が急騰してもおかしくないでしょう。