トレンドの自己強化プロセスに入っているユーロ/ドル相場の直近の動きは、1.25の攻防戦となっており、ここを下にブレイクすると1.23~1.21まで下値の視野が広がってくる。1.25から1.23までオプション絡みのトリガーポイントが並んでおり、外為市場では投機筋の売り崩しが成功するのか注目されている。

ユーロ/ドル(月足)20カ月移動平均線とフィボナッチの支持線

Wボトムか一段安か?


(出所:石原順)

ユーロ相場で比較的きれいなトレンドが出ているのは、ユーロ/ドル(ユーロ売り・ドル買い)とユーロ/豪ドル(ユーロ売り・豪ドル買い)で、直近のユーロ/ポンド、ユーロ/スイス、ユーロ/円の相場は投げと踏みの応酬といった無秩序な展開となっており、これらの通貨の取引は相関性や方向性を失っている。現在、このような通貨ペアを売買しても収益を上げるのは難しい。

ユーロ/スイス(左)とユーロ/ポンド(右)の日足とランダム相場(青枠)


(出所:石原順)

ユーロ/円(左)とユーロ/豪ドル(右)の日足とランダム相場(青枠)


(出所:石原順)

ユーロ/ドルの日足は5月14日現在、終値ベースで21日ボリンジャーバンドの1σの外での取引が継続されており、売りトレンドが継続中である。既に21日ボリンジャーバンド2σや13日移動平均線3%乖離と日足が接近しているので、ユーロは売られすぎの状態にあるが(反転リスクも高い)、14日ADXや26日標準偏差ボラティリティはピークアウトしておらず、浅いストップロス注文付きの損失覚悟の逆張りはともかく、値頃感からの買いは危険である。ユーロ/ドル相場の売り圧力がなくなるには、まず相場が21日ボリンジャーバンド1σの中に入り、大きくは1.31(直近の戻り高値)を上抜ける必要があろう。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(赤)・13日移動平均線3%乖離(青)


(出所:石原順)

一方、ドル/円相場の日足は現在ニュートラルで方向感がない。20カ月移動平均線を1月に下抜けたことで、ユーロ/ドルは勢いよく下げているが、ドル/円相場の方は4月終値で20カ月移動平均線を抜くことができずに、124円からの下げ幅の23.6%戻しを壁に5月相場に入ってしまった。

ドル/円(月足)20カ月移動平均線とフィボナッチの抵抗線


(出所:石原順)

一目均衡表週足の<雲>の抵抗も週足終値で上抜くことが出来ず、こちらも大きな抵抗となっている。

ドル/円(週足)一目均衡表の<雲>


(出所:石原順)

このような状況のなかで日足はというと、今週は21日ボリンジャーバンド1σのバンドの中での取引となっており方向性がない。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(赤)・13日移動平均線3%乖離(青)


(出所:石原順)

というわけで、直近の外為相場は引き続きユーロ主導の展開であり、反対の通貨ペアは米ドルか豪ドルがよいという結論になる。現在、最弱通貨となっているユーロであるが、最強通貨は何かというとゴールドである。ドルが売られても、ユーロが売られても、株が売られても、ゴールドが買われるといった都合の良い最強通貨となっている。欧州危機からの避難的な実物資産買いといったシナリオでゴールドが買われているのは確かであるが、ファンド勢は危機からの逃避ではなく、(他に買うものがないので)カネ余りから仕方なくゴールドを買っているというのが実情のようだ。

ゴールド(日足)最強通貨か?


(出所:石原順)

現在の金融市場は相関関係が急激に失われている。注意すべきは、このような相場になるとファンドから大きな損切り注文が出やすいということだ。相場の波乱に備えて資産管理上(証拠金がなくならないように)のストップロス注文は必ず置いておきたい。運用の基本は破産の管理と、その具体的な作業であるストップロス注文である。相場は明日もある。