今週の相場はユーロを中心に大荒れの展開となっており、相場は恐ろしいと感じている読者の方も多くおられることだろう。
ユーロ/ドル(月足)20カ月移動平均線を下にブレイク
現在、ユーロ/ドルの相場が“急落ステージ”という周期的に危険な位相にあることは、先週のレポートで既に述べているのでここでは繰り返さない。ユーロ圏の信用不安は筆者が懸念していたスペインにまで波及してきている。
ユーロ/ドルは、週足ベースの支持・抵抗帯である20-60週移動平均バンドも割り込んでおり、日足ベースの13-21日移動平均バンドも割り込んでいる。したがって、これらのバンドを上抜いてくるまでは売りトレンドは終わっておらず、基本的に戻り売りの相場である。
ユーロ/ドル(週足)20-60週移動平均バンド
ユーロ/ドル(日足)平均足と13-21日移動平均バンド
さて、読者の皆さんは先週から今週にかけてのユーロ相場の急落相場(トレンド)を的確に捉える(売る)ことが出来ただろうか? 筆者は20カ月移動平均線を下抜いたことで、ユーロ相場に関しては売りで対処しているが、相場参入のポイントはボリンジャーバンドの1σ(シグマ=1STD)抜け(飛び出し局面)である。日足より短いタームフレーム(時間枠)では、この順張り取引手法を使っている。
ボリンジャーバンドの1σ(シグマ=1STD)抜け手法を使う根拠は、標準偏差の確率モデルにある。標準偏差は現代相場理論の基礎であり、根幹をなすものだ。相場価格の分布が正規分布であるという前提では、相場が平均値から±1σの値をとるのは全体の68%である。筆者は残りの32%の部分をトレンド(方向性)が発生している期間とみなして、順張りを行っている。ボリンジャーバンドは、移動平均線に標準偏差(±1σ・2σ)をプロットしたものである。
正規分布と標準偏差
(相場価格の分布が正規分布であるという前提には落とし穴があり、母集団のデータが少ないと相場は正規分布しない。ゴールデンチームと言われたヘッジファンド=ロングターム・キャピタルは、この落とし穴にはまり破綻した。現実の相場は異常値の連続なので、標準偏差モデルを過信するのは危険である)
このような取引手法が理論的に正しいのかどうかは議論が分かれるが、筆者の辿り着いた結論は、相場とは確率の勝負であり、その優位性の優劣でパフォーマンスが決まるということである。標準偏差ボラティリティは、確率の勝負においては最もロジカルな指標であることは間違いない。相場の逆張り・順張り・オプション取引など、何にでも使える便利な指標である。筆者は、長年この指標でトレンドの有無を確認してきた。それはこれからも変わらないだろう。
【サンプル:ドル/円相場(日足)】標準偏差ボラティリティとトレンドの判定
13日標準偏差ボラティリティ(青)・26日標準偏差ボラティリティ(黄)
この標準偏差ボラティリティと同じような動きをするのは、DMI(Directional Movement Index 方向性指数)というテクニカル指標のなかにあるADXである。筆者は、標準偏差ボラティリティでは【26】という固定のパラメータを使っているおり(補助ツールとして【13】も使う)、ADXは【14】か【9】のどちらかのパラメータを使うことが多い。
以下は、今週の相場のボリンジャーバンド1σの飛び出し局面(赤枠)とADXの推移である。日足でも1時間足でも、ボリンジャーバンド1σの飛び出しとADXの上昇が、相場の有利な取引局面を示唆してくれている。もちろん、何度も痛い目にあって損切りも行っているが、それは相場についていくコストである。
ユーロ/ドル(日足)21日ボリンジャーバンドと14日ADX
バンドの拡大局面(白)と1σの飛び出し局面(赤)
ユーロ/ドル(1時間足)21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADX
2月4日は1.3860割れでユーロの追撃売りを行った
ユーロ/円(日足)21日ボリンジャーバンドと14日ADX
ユーロ/円(1時間足)21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADX
本日は米雇用統計の発表だ。2010年は米国の10年に1度の国勢調査の年である。米国勢調査局は今年前半に約115万人の臨時調査員の採用を行う計画になっており、国勢調査の年は5月にかけて連邦政府職員の雇用が大幅に増加する傾向にある。これが今回の米雇用統計をサポートすると言われているが、果たしてどうだろうか?いずれにせよ、米雇用統計の内容より相場のプライスアクションが重要である。ボリンジャーバンド1σとADXで勝負したい。
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