株式だけじゃない!金融資産運用の税金
確定申告シーズン真っただ中。株式投資をはじめとした資産運用の税金の計算や申告をすでにスタートしている方もいれば、そろそろ始めなければ……と思っている個人投資家の方も多いのではないでしょうか。
確定申告に関するご質問でよく聞かれるのが「損益通算」です。たとえば、「投資信託の売却益と上場株式の売却損は損益通算できるのか?」「暗号資産の利益と株の売却損は損益通算できるのか?」といった内容です。
実は、この「損益通算できる・できない」の切り口でグルーピングすると、投資にまつわる税金が理解しやすくなります。
投資の税金は、3つのグループでわかる!
金融資産の中で、譲渡損益(売却損益)の税金は、所得の種類でいくと次の3つに分けられます。
(1)申告分離課税の譲渡所得
(2)申告分離課税の雑所得
(3)総合課税の雑所得
このうち、上場株式(外国株含む)、投資信託、公社債、ETF(上場投資信託)、REIT(リート:不動産投資信託)など大体のものは、(1)の申告分離課税の譲渡所得に分類されます。税率は所得税・住民税合わせて20.315%です。
また、先物、オプション、FX取引などは、(2)の申告分離課税の雑所得に分類されます。税率は(1)と同様、所得税・住民税合わせて20.315%ですが、(1)とは所得区分が異なります。
暗号資産(仮想通貨)は(3)の総合課税の雑所得に分類されます。税率は総合課税なので、給与所得や事業所得、不動産所得などと合算し、所得の大きさによって変わります。最高税率は50%超です。そのほか、為替差損益や、副業で得た所得も総合課税の雑所得に含まれます。
損益通算は「同じグループ間」でだけできる
例えば令和3年に下記のような状況だったとします。
・株式の売却損:100万円
・投資信託の売却益:50万円
・株式の配当金:10万円
・先物取引の利益:40万円
・オプション取引の損失:70万円
・暗号資産の利益:120万円
・為替差損:10万円
まず、同じ年に生じた利益と損失は、損益通算ができます。この時のポイントは、「同じグループ間でのみ可能」ということです。
また、配当金については確定申告することで(1)のグループで生じた損失と損益通算ができます。
したがって、上記の場合は
(1)株式の売却損100万円-投資信託の売却益50万円-株式の配当金10万円=損失の残り40万円
(2)オプション取引の損失70万円-先物取引の利益40万円=損失の残り30万円
(3)暗号資産の利益120万円-為替差損10万円=利益の残り110万円
というようになります。
損失の繰り越しができるのはどれ?
損益通算しても残った上場株式などの売却損については、確定申告をすることにより翌年以降3年間繰り越しができ、翌年以降の売却益や配当金と損益通算が可能、という制度についてはご存じの方も多いと思います。
実は、上記(2)の、申告分離課税の雑所得に該当するものについても、損益通算の結果損失が残った場合は確定申告をすることによって翌年以降3年間繰り越すことができるのです。
ただし、(1)と(2)ではグループが異なるので、別々に繰り越すことになります。
上記の例では、(1)の40万円の売却損と、(2)の30万円の売却損を、合算して70万円の損失として繰り越すのではなく、40万円と30万円を別々に繰り越すことになります。
そして、繰り越した損失と翌年以降の利益と損益通算するときも、(1)と(2)とではグルーピングが異なりますので、例えば前年から繰り越してきた先物取引の損失と、当年に発生した上場株式の売却益を損益通算する、ということはできません。
あくまで同じグループ間でのみ損益通算が可能と理解してください。
なお、(3)については、損失が生じた場合でもそれを翌年以降に繰り越すことはできず、切り捨てとなってしまいますので、ご注意ください。
※本コラムは株式投資の税金についての一般的な取り扱いについて取り上げています。個々の置かれている状況によっては、これとは異なる取り扱いとなる可能性もありますので、税理士や税務署などへご相談のうえ実行されることをお勧めします。本コラムを参考にして実行された結果不利益を被った場合、筆者および楽天証券は一切の責任を負いませんのでご了承ください。
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