国内金(ゴールド)史上最高値更新!

 大阪取引所で取引されている金先物が、2月21日(月)、史上最高値を更新しました。これまでの高値は、2020年8月につけた7,032円でした。

図:大阪金先物価格の推移 (中心限月 月足) 単位:円/グラム

出所:マーケットスピードⅡをもとに筆者作成

 史上最高値更新の直接的な要因は、世界の金(ゴールド)価格の指標の一つである、NY金価格(ニューヨークの金先物価格)が騰勢を強めていること、そして、ドル/円がやや長期視点で「円安」方向に触れていることです。

1,900ドル到達の背景をおさらい

 前回述べたとおり、先週、NY金価格は、昨年6月以来となる1,900ドルに達しました。

図:NY金先物価格の推移(期近 日足) 

出所:マーケットスピードⅡをもとに筆者作成

 各種報道では、1,900ドル到達の主な要因は、「ウクライナ情勢の悪化による、資金の逃避先需要の増加」、「世界的なインフレ(物価高)による資産保全需要の増加」などとされています。

 確かにその点もあると思いますが、筆者は現在の金(ゴールド)市場の環境を、以下のようにとらえています。要因は一つではない、下落要因も存在する、それぞれの要因の時間軸は同一でない、などに留意する必要があります。

図:足元の金(ゴールド)市場の環境

出所:筆者作成

 目立つ材料(ウクライナ情勢とインフレ)だけが、金(ゴールド)相場を押し上げているのではないことに留意することで、今を正しく理解でき、かつ今後の相場動向を展望する際のアイデアの幅が広がります。

昨年末に作成した価格予想が現実味を帯びている

 昨年末、筆者は以下のとおり、2022年の金(ゴールド)相場の予想をしました。年間高値は2,024ドル、年間安値は1,646ドルでした。今のところ、予想した年間高値に近づきつつあると言えます。

図:NY金先物価格(2022年は筆者予想) 単位:ドル/トロイオンス
※点線は年平均

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 予想の根拠は次のとおりです。2020年を「新型コロナ」と「脱炭素」の元年と考え、2021年が2年目、2022年を3年目とし、大局的に見て2022年(3年目)は2021年(2年目)と同様のことが起きる(価格は年平均ベースで上昇する)と仮定しました。

 また、2022年(3年目)の上昇率は、米国の金融政策が引き締め方向に向かうことを考慮して2021年(2年目)の半分とし、変動率は、予想外の事態が発生することを考慮し、2021年(2年目)の1.3倍を想定しました。

 現在のような、ウクライナ情勢とインフレ起因の「目立つリスク」が存在し、かつ暗号資産と株価動向が安定しないタイミングでは、予想レンジの上限に近づきやすくなります。短期的には、今と条件が変わらなければ、国内外の金(ゴールド)価格はさらに高みを目指す可能性があると考えます。

図:2022年の予想レンジの立て方

出所:筆者作成

金と原油の長期上昇要因の「賞味期限」

 ここからは、あえて長期視点で考えます。

「材料の賞味期限」と言うのでしょうか、金(ゴールド)、原油、株価指数、その他多数の市場いずれにおいても、上昇・下落、さまざまな材料が存在しますが、それらの材料が各種市場に影響を与え続ける「期間」はまちまちです。

 足元の上昇要因の一つに挙げた「見えにくいリスク」は、認識しにくいだけに底流し、超長期的に金(ゴールド)市場を支える可能性がありますが、時折発生する、例えば中東地域におけるドローンによる攻撃などの一過性の性質を持つリスク要因は、数分から数日程度、市場に影響を与える程度です。(もちろん、その攻撃が波及する性質を持っていた場合は長期化することがある)

 例えば、以下の足元の金(ゴールド)と原油の上昇要因のうち、「長期」とした黎明期の「脱炭素」起因の上昇要因は、今後どの程度、継続するのでしょうか。先述のとおり、現在の「脱炭素」は2020年を起点とした黎明期(夜明けの時期の意味)にあると、考えられます。

図:金(ゴールド)と原油の上昇要因(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 各国が気候変動に対する負の影響を軽減する約束をした「パリ協定」の順守期限が2030年から2050年くらい、国連が提唱するSDGs(持続可能な成長目標)の期限が2030年であることを考えれば、数年後には「脱炭素」は成長期に入りはじめ、世界全体が「経済成長」と「温室効果ガスの削減」を両立しはじめている可能性があります。

 つまり、以下の図で示す、黎明期の「脱炭素」起因の混乱(=脱炭素禍)は、数年で終わる可能性があるわけです。「脱炭素」が成長期に入って「脱炭素禍」が終わった場合、「脱炭素禍」を上昇要因の一つとしていた金(ゴールド)と原油市場は反落する可能性が浮上します。

図:「脱炭素禍」が与える金(ゴールド)・原油市場への影響

出所:筆者作成

インフレをインフレで制すよりも、良案がある

 足元、「インフレ時の投資対象は、コモディティが適している」という話を耳にします。確かに、インフレ時はコモディティ価格が上昇しているため、投資対象としては「なじむ」でしょう。

 一方、先述の通り、「脱炭素禍」起因の長期視点の上昇圧力は、あと数年で賞味期限がきれる可能性があります。このため、今投資をしたコモディティ関連の投資商品が、将来的に、かえって仇(あだ)になる可能性はゼロではありません。

 短期的には、ウクライナ情勢が鎮静化した場合、さまざまなコモディティ(エネルギーや一部の農産物)の価格は大きく下落する可能性があります。また、投資をする上で、原油相場に対して200ドルや300ドルに達することを期待することは、現実的ではないでしょう。(産油国が許しても、消費国が許さない)

 また、現在のエネルギー価格の上昇はまさに、わたしたちの生活を脅かす「悪いインフレの元凶」です(ガソリン高、植物油高、牛丼高、トイレ紙高…枚挙にいとまがない)。今、こうした金融商品を保有することは、「悪いインフレの元凶」を保有することを意味し、今後も悪いインフレが進行することを望むことと同義と言えなくもありません。

図:「悪いインフレ」時の投資対象としてのコモディティ

出所:筆者作成

 とはいえ、短期など期間限定で保有するのであればその限りではありません。また、世界経済が活況を取り戻し、需要拡大を主因としてエネルギー価格が上昇しはじめた場合は、そのエネルギー価格の上昇は悪いインフレの元凶ではないため、コモディティ関連の投資商品を保有することは理にかなっていると言えるでしょう。

 悪いインフレの時に、直接的なインフレ関連の銘柄を保有することは、自己矛盾に似た感覚が沸いてきかねません(割り切れれば問題はありませんが)。インフレでインフレを制すよりも、また別の対策はないのでしょうか。そこで登場するのが、プラチナです。

プラチナ、出番だ

 筆者は、「プラチナ」は「悪いインフレ」に加担せず、かつ今後、長期的に価格上昇を演じる可能性がある銘柄、つまり、保有することが自己矛盾につながらず、長期投資のパフォーマンス向上に貢献できる可能性がある銘柄の一つであると考えています。

図:現在のプラチナ市場の特徴

出所:筆者作成

 また、割安とみなされやすい、現実的な需要増加見通しがある、穴場的要素がある、そして長期投資になじむ積立やETF(上場投資信託)などで保有することができる、などの特徴があります。価格推移は以下の通りです。

図:主要貴金属の価格推移 (2008年12月=100)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 リーマンショック直後の安値水準となった2008年12月を100とした場合、現在のプラチナの水準は、その安値水準から大きく上昇して「いない」ことがわかります。

 プラチナ価格の見通しや、新しい重要が増加する可能性などについては、以前のレポート「2022年のプラチナ相場を予想する」で述べています。

 金(ゴールド)や原油価格は、足元、大きく上昇し、目立っていますが、その上昇が今後長期にわたり(数年間)続くかは、詳細な議論と時間が必要だと、筆者は考えています。であるのであれば、まずは議論が比較的容易な「プラチナ」に着目してみるのも一計ではないでしょうか。

 当社は以下のプラチナ関連の商品(一例)を扱っています。まずは価格の推移を確認してみてください。

金プラチナ取引

1541 純プラチナ上場信託(現物国内保管型)

1682 NEXT FUNDS 日経・JPX 白金指数連動型上場投信

 ・国内商品先物

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)