成長株下落の裏で起こり得る割安株の見直し買い
2021年11月ごろから、成長株の下落が顕著になっているのは皆さんもご承知のとおりです。ここまで強かった銘柄も軒並み大きく下落し、いよいよ成長株の多くは天井をつけたのではないか、という感触もあります。
その一方、割安株にスポットが当たることが増えてきた印象です。割安株のうち、配当利回りが高い銘柄についても見直し買いが見受けられるようになりました。
実は、過去の株価の動きを振り返ってみると、常に成長株が割安株より高いパフォーマンスを出していたわけではないことが分かります。
例えばアベノミクス相場が始まる前の2012年までは、割安株の方が成長株より強い時期もありました。
そして、全面高となる強い相場でなければ、成長株と割安株とはトレードオフの関係、つまりどちらかが強ければどちらかが弱い、という動きになることが多いように感じます。
配当利回りで銘柄を選ぶ際の注意点
ところで、配当利回りで投資候補銘柄を選ぶ際は、いくつか注意すべき点があります。
1つ目は、金利上昇局面では相対的な配当利回りの魅力が薄れるという点です。配当利回りの評価は絶対的なものではなく、債券の利回りとの比較による相対的なものだからです。
例えば国債利回りが0.5%のとき、配当利回りが3%の個別銘柄は魅力的に映ります。では、金利上昇が本格化し、国債利回りが2.5%となったら、配当利回りが3%の銘柄の評価はどのようになるでしょうか?
おそらく、配当利回りが3%の株式よりも、利回り2.5%の国債へ投資したい、と思う投資家が多いのではないでしょうか。
なぜなら、一般的に債券よりも株式の方がリスクが大きいとされており、利回りの差がわずかであれば、あえてリスクの大きい株式に投資する必要性が薄れてしまうからです。
配当利回りの「継続性」を意識すべし
2つ目は、配当利回りの継続性についてです。分かりやすく言えば、「今出している配当金と同額以上の水準を今後も維持できるのかどうか」です。
例えば、配当金100円、株価1,000円のA株があったとしましょう。A株の配当利回りは100円÷1,000円=10%です。
配当利回りだけをみれば、非常に魅力的な水準です。このご時世、10%の利回りで回る商品などなかなかありませんから。
でも、逆に言えば、配当利回り10%の株式が、買われず今の株価水準で放置されているという事実を疑問に思わなければなりません。
本当なら、もっと配当利回りが低くなるまで株価は上昇するはずです。そうならずに配当利回り10%で放置されているということは、現状の株価が妥当な水準であるとマーケット参加者が思っているわけです。
確かに今期予想の配当金で計算すれば配当利回りは10%ですが、来期以降配当金が減らされる可能性が高い、と多くの投資家が踏んでいるのです。
無論、ここから株価が上昇する可能性もありますので、上昇トレンドであれば買ってもよいですが、株価が下落を続け下降トレンドにあるのであれば、配当利回りが高く見えても投資家が売っていることを示しますから、安易な買いは禁物です。
くれぐれも、表面的な配当利回りのみで銘柄を選ばないようにしましょう。
利回りで価格が変動する投資商品も要注意
また、利回りの変動に応じて価格も動く投資商品も、金利上昇には注意が必要となります。典型例がREIT(リート:不動産投資信託)です。
REITは保有する不動産の賃料収入が収益のメインで、それを投資家に分配しています。そして、分配金はそれほど大きく変動することは通常はありません。
そのため、REITの価格が上昇すればREITの分配金利回りは低下しますし、逆にREITの価格が下落すれば分配金利回りは上昇します。
このREITの分配金利回りも、債券などと比較して相対的に評価される点に注意です。
一般的に、債券とREITのリスクを比べると、REITの方が高いと言われています。
そのため、国債の利回りが上昇してくれば、債券よりリスクが高いREITの利回りも上昇する方向になります。REITの利回りが上昇するということは、REITの価格が下落することを意味します。
金利上昇局面では、債券よりリスクが高く、かつ利回りで評価されているものについては、価格下落に十分な注意が必要です。
いかに利回りの面で見て魅力的な水準にあったとしても、特に株価が下落して下降トレンドになっているときは、「割安だ!」と安易に買い向かわないようにしましょう。
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