先週は10日(木)夜、11日(金)に米国株が急落。今週2月14日(月)から18日(金)の株式市場はロシアのウクライナ侵攻が危惧され、再び嵐の展開になりそうです。

先週:ウクライナ危機で米国株急落

 先週末10日(木)の日経平均株価は前週末4日(金)比で256円上昇し、波乱続きの相場が落ち着くかに見えました。

 しかし、日本市場が祝日入りした10日(木)夜に事態は急変。米労働省が同日発表した1月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比7.5%上昇と40年ぶりの高い上昇率を記録し、インフレがさらに悪化しました。

 インフレになると売られやすい債券の価格が急落し、米国で長期金利の代表指標になる10年物国債利回りは2年半ぶりに2%の大台を突破。

 多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は前日比1.8%下落しました。

 米国時間の11日(金)午後には、ウクライナ情勢の緊迫化により株安の動きが強まりました。米バイデン政権が、ロシアのウクライナ侵攻が北京五輪の閉幕前に始まる可能性がある、との警戒感を示したためです。米国株は再び急落。S&P500は同日1.9%安と沈み、2日続けての下げ幅としては今年最大となりました。

 最も打撃を受けたのは、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数。10日(木)は前日比2.1%、11日(金)は同2.8%下落しました。

 ロシアは世界3位の産油国。ウクライナとの戦争が本格化すると原油生産に混乱をきたします。

 そのため、11日(金)には、原油価格の国際的指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、米国テキサス州西部で産出される良質な原油)の先物価格が7年4カ月ぶりの高値まで上昇しました。

 原油価格の高騰は、米国で過熱するインフレの火に油を注ぐようなもの。

 アップル(AAPL)マイクロソフト(MSFT)など好調な企業の四半期決算発表を受けて上昇機運だった米国株も、再び急落モードに入ってしまいました。

 先週ピークを迎えた日本企業の2021年4-12月期決算発表では、2022年3月期の純利益予想を上方修正したJFEホールディングス(5411)など鉄鋼株が上昇。

 重機械メーカーのIHI(7013)やネット通販向け物流システムのダイフク(6383)なども同じく営業利益予想と期末の配当を引き上げたことが好感され値上がりしました。

 一方、トヨタ自動車(7203)は2021年4-12月期の営業利益が前年同期比68%増に拡大しましたが、通期の業績予想を据え置いたこともあって週間で小幅下落でした。

今週:地政学リスクに米金利動向…市場は波乱の展開か

 日本の主な企業の業績は相変わらず好調ですが、祝日中の米国株急落を受け、今週の日本株は大幅安で始まりそうです。

 果たして、ロシアが20日(日)に閉幕する北京五輪までにウクライナに侵攻するのかどうかに、市場の関心が集まるでしょう。

 戦争などで地政学リスクが高まると、金融市場の先行きが非常に不透明になります。そのため、定期的な金利収入を見込める米国債など高格付けの債券が買われます。

「有事」ということで、金(ゴールド)や米国ドルに資金が逃避。米ドル以上に日本円やスイスフランが買われるのが一般的です。

 一方、価格変動率が高く、先行きの見通しが立ちにくい株式は当初、大きく売り込まれることが多くなります。

 波乱に満ちた展開になりそうな今週ですが、15日(火)夜には米国の1月のPPI(卸売物価指数)が発表されます。PPIは企業間で取引される原材料やサービスなどの価格動向を見る指標です。

 今回のPPIの予想値は前年同期比8.9%増、前月比0.5%の上昇。PPIの伸びが鈍化するようだと、株価にとっては安定材料になります。

 前回発表の2021年12月は前年同月比では9.7%上昇したものの、前月比では予想を下回る0.2%の小幅上昇に減速。インフレがピークに達したのではないか、という希望的観測が広がりました。

 日本時間16日(水)には、米国の小売売上高も発表されます。あまりにいい数字だとインフレ加速、悪い数字だと景気減速と判断される可能性があります。

 そして、数時間後の日本時間17日(木)未明には、米国の金融政策を決定するFOMC(米連邦公開市場委員会)の1月開催分の議事録が公開されます。

 米国株が年始早々、急落モードに突入したのは、1月5日に発表された12月開催のFOMC議事録がきっかけでした。

 同議事録に、新型コロナウイルス禍で拡大したFRB(米連邦準備制度理事会)の総資産圧縮が盛り込まれたことが株価急落の引き金となりました。

 FOMCに出席する米国の地区連銀総裁の中には金融引き締めに積極的な「タカ派」もいて、「7月までに1%の利上げ」を唱えています。

 FRBが2022年、インフレ退治のためにどれぐらいのペースで、何%まで金利を引き上げるのか? 米国の物価や雇用、景気や株価をどうかじ取りするつもりなのか?

 それを読み取る“鍵”となる1月FOMCの議事録発表は、今週の最重要イベントです。

 当然、ウクライナ危機に伴う地政学的リスクの高まりや原油高からも目が離せません。今週も海外情勢に振り回される、慌ただしい1週間になりそうです。