佳境に入った決算発表シーズン

 米国の決算発表シーズンが佳境を迎えています。2月4日(金)までにS&P500種指数に採用されている企業の56%が2021年第4四半期決算を発表しており、EPS(一株当たり利益)では76%が、売上高では77%が事前予想を上回る決算を出しています。これは過去の実績に照らして、可もなく不可もなくといったところです。

 このように全体としては今回の決算発表シーズンは異変を感じさせないのですが、個別ではびっくりさせられる決算も散見されました。

 そこで今日はめぼしい銘柄の決算について解説してゆきたいと思います。

メタ・プラットフォームズ

 メタ・プラットフォームズ(ティッカーシンボル:FB)は昔のフェイスブックです。今後ヴァーチャル・リアリティーに力を入れてゆきたいというマーク・ザッカーバーグCEOの意向を反映するカタチで社名変更が行われました。

 同社の第4四半期決算はEPSは予想$3.83に対し$3.67、売上高予想334.4億ドルに対し336.7億ドル、売上高成長率は前年同期比+19.8%でした。EPSが市場予想を大きく下回ったのは同社らしくない失態です。

 同社はインスタグラムがドル箱となっているのですが、そのインスタグラムは最近、ライバルのTikTokから激しい追い上げを受けています。それがインスタグラムの広告収入を圧迫しています。

 これに加えアップル(ティッカーシンボル:AAPL)が個人情報の一層の保護の目的でiOSのアルゴリズムを厳格化した結果、フェイスブック広告の有効性が低下するという悪影響を受けました。

 広告売上高そのものは326.4億ドルでした。前年同期は271.9億ドルでした。

 広告売上高の内訳は米国カナダが150.6億ドル(前年同期は131.5億ドル)、欧州が81.7億ドル(前年同期は68.2億ドル)、アジア太平洋が61.8億ドル(前年同期が47.4億ドル)、その他が32.2億ドル(前年同期が28.6億ドル)でした。

 メタ・プラットフォームズは今後ヴァーチャル・リアリティーに注力するということで決算の情報開示も変更されています。新しい売上高分類によると:

ファミリー・オブ・アプス売上高は327.9億ドル(前年同期は273.6億ドル)
リアリティー・ラボ売上高は8.77億ドル(前年同期は7.17億ドル)

 でした。このリアリティー・ラボがVR部門です。まだまだVRが同社の売上高に占める割合はとても小さいことがわかります。

 営業利益は:

ファミリー・オブ・アプス 158.9億ドル(前年同期は148.7億ドル)
リアリティー・ラボ ▲33億ドル(前年同期は▲21億ドル)

 でした。

 メタ・プラットフォームズはVRへのシフトを急いでいますが、当分の間、インスタグラムなどの既存のサービスに依存し続けなければいけません。

 第1四半期の売上高は予想302.7億ドルに対し新ガイダンス270億~290億ドルが提示されました。これも投資家からすれば不満の残る数字だといえます。

アルファベット

 アルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)の第4四半期決算は大手ネット株の中では最も安定していたと言えるでしょう。

 EPSは予想$27.35に対し$30.69、売上高は予想718.1億ドルに対し753.3億ドル、売上高成長率は前年同期比+32%でした。

 同社の場合、グーグル・マップに代表される、出先での検索が多いのでサーチが検索した見込み客の来店などの成果に直結しやすく、その分、他のネット企業より強力な価値提案をしていると考えられます。

 第4四半期の部門別売上高と前年同期実績は下記の通りです:

グーグルサーチ&アザー 433億ドル 319億ドル
YouTube 86.3億ドル 68.9億ドル
グーグルネットワーク 93.1億ドル 74.1億ドル
グーグルアザー 81.6億ドル 66.7億ドル
グーグル・クラウド 694億ドル 528.7億ドル
アザーベッツ 1.81億ドル 1.96億ドル

 グーグルサーチ、YouTubeの強さが目立つほか、グーグル・クラウドも健闘しています。

 地域別売上高と前年同期は下記の通りです:

欧州中東アフリカ 231.5億ドル 172.4億ドル
アジア太平洋 127.3億ドル 99.1億ドル
米国を除く米州 44.5億ドル 30.5億ドル
米国 347.9億ドル 267億ドル

 トラフィック・アクイジション・コスト(TAC)は753.3億ドルでした。前年同期は569億ドルでした。

 営業利益は218.9億ドルでした。前年同期は156.5億ドルでした。

 営業マージンは29%でした。前年同期は28%でした。

 純利益は206.4億ドルでした。前年同期は152.2億ドルでした。

 営業キャッシュフローは249.3億ドルでした。前年同期は226.8億ドルでした。

アップル

 アップル(ティッカーシンボル:AAPL)の第1四半期(12月期)決算は懸念された半導体不足の影響も限定的で、無難な内容でした。

 EPSは予想$1.89に対し$2.10、売上高予想1,185.3億ドルに対し1,239.5億ドル、売上高成長率は前年同期比+11.3%でした。

 iPhone売上高は予想675億ドルに対し716億ドルでした。前年同期は656億ドルでした。

 Mac売上高は予想95億ドルに対し108.5億ドルでした。前年同期は86.8億ドルでした。

 iPad売上高は予想78億ドルに対し72.5億ドルでした。前年同期は84.4億ドルでした。

 ウエアラブルズ売上高は予想140億ドルに対し147億ドルでした。前年同期は130億ドルでした。

 サービス売上高は予想197億ドルに対し195.2億ドルでした。前年同期は157.6億ドルでした。サービス売上高は利幅が大きいし売上予想が立てやすいのでウォール街関係者がとりわけ注視している項目です。今回の数字はやや落胆すべき結果でした。

 グロスマージンは予想41.6%に対し43.7%でした。

 地域別売上高と前年同期は下記の通り:

米州 515億ドル 463億ドル
欧州 297.5億ドル 273億ドル
中国 258億ドル 213億ドル
日本 71.1億ドル 82.9億ドル
アジア太平洋 98.1億ドル 82.3億ドル

 営業キャッシュフローは469.7億ドルでした。前年同期は387.6億ドルでした。

アマゾン

 アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の第4四半期決算は特殊要因の影響で散漫な印象を与える決算でした。

 EPSは予想$3.54に対し$27.75でした。ただしそのうち約20ドル分はアマゾンが保有しているリヴィアン・オートモーティブ(ティッカーシンボル:RIVN)株の評価益118億ドルが含まれています。

 近年、米国の会計基準が改変され、ある企業が他の企業の株式を持っている場合は実現益が出てない場合でもみなし益、ないしはみなし損を計上しなければならなくなりました。

 アマゾンのEPSが予想を上回った理由は、このような会計を巡る極めて技術的な理由によるものであり経営の実態を反映していません。

 一方、第4四半期の売上高はどうだったか? といえば予想1,376.3億ドルに対し1,374.1億ドル、売上高成長率は前年同期比+9.4%でした。つまり予想に未達だったのです。

 AWS売上高は前年同期比+39.5%の177.8億ドルでした。第3四半期の前年同期比+37%より少し加速しました。

 営業利益は前年同期比▲50%の34.6億ドルでした。事前ガイダンスは0億~30億ドルでした。

 過去12カ月の営業キャッシュフローは前年同期比▲30%の463億ドルでした。

 過去12カ月のフリー・キャッシュフローは▲91億ドルでした。前年は310億ドルでした。

 第1四半期の売上高は予想1,205.2億ドルに対し新ガイダンス1,120億~1,170億ドルが提示されました。営業利益は予想63.5億ドルに対し新ガイダンス30億~60億ドルが提示されました。

 アマゾンは米国のプライム会員フィーをこれまでの月$12.99から$14.99へ値上げします。

マイクロソフト

 マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)の第2四半期(12月期)決算はEPSが予想$2.32に対し$2.48、売上高が予想508億ドルに対し517.3億ドル、売上高成長率は前年同期比+20.1%でした。

 全般的に無難な内容でしたが、ややサイクルのピークをつけた印象を与えました。

 部門別売上高と前年同期比成長率は下記の通り:

プロダクティビティ&ビジネスプロセス 159億ドル +19%
インテリジェント・クラウド 183億ドル +26%
モア・パーソナル・コンピューティング 175億ドル +15%

 粗利益は348億ドルでした。これは前年同期比+20%でした。

 グロスマージンは67%でした。

 営業利益は222億ドルでした。これは前年同期比+24%でした。

 営業マージンは43%でした。

 コマーシャル・ブッキングス成長率は前年同期比+37%でした。

 コマーシャル残存パフォーマンス義務は1,470億ドルでした。前年同期は1,120億ドルでした。前期は1,370億ドルでした。

 マイクロソフトクラウド売上高は221億ドルでした。前年同期は167億ドルでした。

 営業キャッシュフローは144.8億ドル、前年同期比+16%でした。

 フリー・キャッシュフローは86.2億ドル、前年同期比+3%でした。

 アンアーンド・レベニューは367.7億ドルでした。前年同期は333.9億ドル、前期は410.5億ドルでした。

 第3四半期の売上高に関しカンファレンスコールで以下のガイダンスが示されました。

プロダクティビティ&ビジネスプロセス部門 156億~158.5億ドル
インテリジェント・クラウド部門 187.5億~190億ドル
モア・パーソナル・コンピューティング部門 141.5億~144.5億ドル

 これらを合計すると第3四半期売上高は485億~493億ドルになります。コンセンサス予想は482億ドルでした。