はじめに

 今回のアンケート調査は2022年1月31日(月)~2月2日(水)の期間で行われました。

 2022年相場入りとなった1月末の日経平均株価は2万7,001円で取引を終えました。前月(2021年12月)末終値(2万8,791円)からは1,700円を超える大幅安となったほか、月足ベースでも4カ月ぶりに下落に転じています。

 月間の値動きを振り返ってみると、年始は2万9,000円台に乗せるなど上昇基調で迎え、良好なムードだったものの、まもなく失速し、そのまま下げ足を早めていく展開となりました。

 米国の金融政策が正常化へとかじを切る中、そのスケジュール感や影響を警戒する動きが次第に強まったほか、新型コロナウイルスの変異株の感染拡大や、ウクライナ情勢をめぐる地政学的情勢への不安なども重なったことで売り優勢の展開が続き、一時2万6,000円台近くまで下落する場面もありました。

 月末にかけては、急落の反動による自律反発の動きや、米企業の決算を好感する動きなどでやや持ち直し、2万7,000円台まで値を戻したものの、引き続きインフレ動向と米金融政策をにらみながらの不透明感が燻(くすぶ)っています。

 このような中で行われた今回のアンケートは4,300名を超える個人投資家からの回答をいただきましたが、日経平均の見通しDIについては、再び株安の見通しを強め、米ドル/円見通しDIについては、引き続き米国金融政策への思惑が影響し、円安見通しが継続する結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「株価急落を受けてDIが再び悪化」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス33.55、3カ月先はマイナス16.59となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス18.32、マイナス15.56でしたので、1カ月先が大幅に悪化、3カ月先もやや悪化したことになります。

 ちょうど、前々回調査(2021年11月実施分)の結果(マイナス35.11、マイナス15.51)が再現されたような印象となっています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 回答の内訳グラフを見ても、強気派・弱気派・中立派の割合が昨年11月調査分と似ています。

 当時は、11月上旬に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、テーパリング(量的緩和の縮小)の開始が決定されて同国の金融政策が正常化へ歩みを進め、今後の利上げやQT(量的引き締め)の導入時期が意識される中、新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)の出現によって、株価が大きく下落していた時期でした。

 ここで注目したいのが3カ月先のDIの推移です。先ほども触れたように、今回の結果はマイナス16.59でしたが、前回がマイナス15.56、前々回がマイナス15.51と1カ月先DIに比べると、変動は緩やかです。

 個人投資家の「目先の相場は荒れるかもしれないが、中期的には落ち着くのでは?」という姿勢がうかがえ、1月の株価急落についても、買いの好機と捉えている投資家は多いのではないかと思われます。

 実際に、過去の米国が金融正常化に向かう最中でも、米株をはじめとする株式市場は上昇していることが多く、今回についても、ある程度の警戒感を先取りして株価が下落した後は、戻りを試す展開を想定することができます。

 ただし、注意しておきたいのは、これまでと比べて正常化のペースが速いということです。前回の米国の金融正常化局面では、2014年1月にテーパリングが開始されて同年10月に終了、そこから14カ月後の2015年12月になってようやく利上げが始まり、QTが実施されたのは、さらに22カ月後の2017年10月になってからでしたので、かなりの年月を要していました。

 足元で想定されている正常化のスケジュール感については、3月のテーパリングが終了後にまもなく利上げが開始され、2022年後半にもQTが実施されるため、かなり早いピッチとなっています。

 景気や企業業績への下押し圧力(オーバーキル)をはじめ、景気動向に関わらず、自国通貨を防衛するために利上げに迫られるなどの新興国への圧力、金融相場から業績相場への移行がスムーズに進まないなど、急ピッチな正常化の影響が懸念されるほか、コロナ禍による大規模な金融緩和局面を通じて世界規模で債務が膨れ上がっており、金利上昇による影響への耐性が脆(もろ)くなっている可能性も考えられます。

 2月相場に入り、株式市場は1月の急落から落ち着きを取り戻しつつありますが、油断できない相場展開はしばらく続くかもしれません。

楽天DI  2022年1月

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】 配当金を目的に株を買ったことは、ありますか。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 株主優待と並んで人気のある高配当株は、長期投資に向いているといわれています。そんな配当金を目的に株を買ったことが「ある」が67.7%、「ない」が32.3%でした。

【今月の質問2】 配当利回りの高い株に投資する際、何に注目して銘柄を選びますか? もっとも注目することを1つだけ選んでください。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 配当金だけでなく、業績や財務状況にも注目し、銘柄を選んでいる「業績や財務が良好である」が30.7%と一番多かったです。

【今月の質問3】 配当利回りの良い日本株のおすすめ銘柄があれば、1つだけ教えてください。

 ベスト10の発表です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ベスト20までです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

※上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません。

 この他、「分からない」、「日本株は買わない」なども多くいただきました。

 今回もたくさんのご意見をいただきまして、ありがとうございました。

為替DI:2月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

「今月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、4,370人の個人投資家の半数を超える51%(2,245人)が、2月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。先月に比べて円安見通しは3ポイント減りました。

ドル安/円高」予想は全体の19%(825人)で、先月に比べて円高見通しは3ポイント増えました。30%(1,300人)は、「変わらず(分からない)」でした。

もう、二度と働かない

 コロナで幼稚園や小学校が閉鎖されていたとき、米国の家庭では、親が働きに出かけている日中は、おじいちゃんやおばあちゃんが小さな子供の面倒を見ることが多く、55才以上の働き手の多くが会社に行くことをやめました。米国では労働力不足が問題になっているのですが、労働力参加率の下落全体の3割を、この年齢層が占めています。

 しかし、この人たちの多くは、たとえ子供たちが学校に通うようになっても職場には戻らないかもしれません。

 金融危機(GFC、リーマンショック)が起こったとき、当時40歳代後半から50歳代前半だった人たちは、株価暴落で老後の貯蓄を失ってしまい、懸命に働き続けるしかなかった。その後、米国の退職率は一貫して減少してきたのですが、2020年になって、このトレンドが逆転しました。

 コロナ禍の中でも株価が過去最高値を更新しながら上昇しているおかげで、引退するのに十分な蓄えができたのです。コロナ後に再び働くよりもリタイアを選んだこの世代の「FIRE」ブームが、米国の雇用が伸びない原因といわれています。

「働く場所」が見つからないのではなく、もう「働く意思」がない。だから、中央銀行や政府がどれだけ景気対策をしようが、これらの人々が労働市場に戻ってくる見込みは少ないのです。

 FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった流行語で、「経済的自立を果たし、早期引退する」という意味。50代後半で引退することが、はたして早期といえるのか分かりませんが、世界的な株高が続くなら、もっと若い世代からもFIREする人が増えてくるでしょう。

 経済を助けるはずの中央銀行の緩和政策が労働力を減らし景気拡大の邪魔をしているとすれば皮肉なことです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の33%が2月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想。ユーロ高見通しは、先月から3ポイント減りました。

ユーロ安/円高」予想は全体の17%で、先月から2ポイント増えました。残り50%は「変わらず(分からない)」でした。

 

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の28%が2月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想。豪ドル高見通しは、先月から4ポイント減りました。

豪ドル安/円高」予想は16%で、先月から2ポイント増えました。残り56%は「変わらず(分からない)」でした。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「投資信託」「ETF」を選択した人の割合に注目します。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」は複数選択可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(リート:不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、原油先物、その他の商品先物、金先物取引、特になしの13項目です。

図:「国内株式」「投資信託」「ETF」を選択した人の割合 

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 1月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合が51.9%、「投資信託」は42.4%、「ETF」は35.5%でした。「国内株式」は2008年10月の統計開始以来の最低水準、逆に「投資信託」と「ETF」は最高水準です。

 2016年の年末に始まった、長期視点での米国の主要株価指数の上昇により、米国株の人気が上昇。それに伴い、関連する商品をそろえている「投資信託」や「ETF」の人気が高まりました。

 足元、米国で金融緩和縮小が早期に完了する、利上げが早期に始まる、などの観測から、米国の主要株価指数の動向はやや不安定化しているものの、それでもなお、「投資信託」「ETF」を「今後投資してみたい金融商品」に位置づける方が多いようです。

 過去の動向をみると、「国内株式」における下限はおおむね50%(過去最低は2021年12月の48.12%)、「投資信託」における上限はおおむね45%(過去最高は2014年9月の47.0%)です。

「国内株式」が下限を下回るかどうか、「投資信託」が上限を上回るかどうかが、今後の注目点ですが、そのカギを握るのが、「米国の主要株価指数の動向」だと筆者は考えています。

 米国の主要株価指数が大きく反発した場合、関連する商品をそろえている「投資信託」(「ETF」も)への関心が強まり、上限を上回る。相対的に「国内株式」への関心が薄まり、下限を下回るというシナリオが考えられます。

 逆に、米国の主要株価指数が大きく反落した場合、関連する商品をそろえている「投資信託」(「ETF」も)への関心が薄まり、上限を上回ることができずに反落する。相対的に「国内株式」への関心が強まり、下限から反発するというシナリオも考えられます。

 米国の主要株価指数の動向をにらみながら、「今後投資してみたい金融商品」における「国内株式」「投資信託」「ETF」の動向に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2022年1月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2022年1月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成