想定外の動きが東京市場に表れている

 政府は、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」について、東京都など13都県で3月6日まで期間を延長するとしました。

 全国のコロナ新規感染者数は増加率こそ鈍化傾向にあるものの、感染拡大は続いており、医療体制ひっ迫を防ぐため延長が不可避と判断したようです。

 東京、埼玉、千葉、神奈川、群馬、新潟、岐阜、愛知、三重、香川、長崎、熊本、宮崎の13都県では当初、1月21日から2月13日まで措置が適用されていましたが、適用地域では知事の判断で飲食店の営業時間や酒類提供、イベントの収容人数も制限されます。

 東京都では2月に入り、1日当たりの新規感染者が2万人を超えるなど新規感染者の増加に歯止めがかかっておらず、他にも重症者用病床の使用率が改善していない自治体が多くあります。

 ただ、今回の「まん延防止等重点措置」と「延長」について株式市場の受け止めは比較的冷静と見られます。

 日経平均株価は措置適用前日の1月11日終値2万8,222円48銭から、1月27日終値2万6,170円30銭まで下落し、その後も大きな反発はしていません。

 しかし下落の主因は、年初から続く「米金融政策変更(≒金融引き締め/米金利上昇)に対する懸念」や、米メタ・プラットフォームズ社(旧フェイスブック)の株価下落に伴う米市場混乱の影響とみられています。

 もちろん遠因として国内コロナ感染もあると思われますが、主因ではないと見ていい動きです。

 政府による行動制限の適用が業績悪材料と思われる銘柄、なかでも空運株と同様に「コロナデメリット株」の筆頭と目される「オリエンタルランド(4661・東証1部)」の株価が逆行高、上場来高値を更新したことは特筆すべきことです。

・オリエンタルランド(4661・東証1部)の2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 言うまでもなく同社は入園者数世界有数の「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」の運営会社です。

 1月28日に発表した今期決算では、連結最終損益が58億円の赤字(前期は541億円の赤字)になりそうだと発表しています。従来予想(175億円の赤字)に比べ赤字幅が116億円縮小する予想です。

 2021年10月25日から入園者数の上限を段階的に引き上げたことにより、2021年10-12月の収支が改善したことが背景です。ただ、そうであっても最終損益は赤字が継続する見通しの企業が、上場来高値を更新するとは……。

 このことから、投資家は「かなり先のこと」を見越して動いており、それはポジティブなものと判断することができます。

投資家は海外例を参考にしている公算

 WHO(世界保健機関)は早い段階でコロナ変異株オミクロン株について、重症化するリスクはデルタ株の場合に比べて低いとしています。

 昨年11月末に最初にオミクロン株感染が報告された南アフリカでは、同国政府が昨年12月30日の時点で、オミクロン株感染拡大のピークは過ぎたかもしれないとして、夜間外出禁止など行動制限を緩和しました。

 また欧米の多くの国では感染者数は横ばいか減少に転じており、感染拡大が北半球で最も早かったイギリスでは、ジョンソン首相が1月19日の英国会下院で「オミクロン株の感染ピークは過ぎた」として、「イングランドにおける法的な行動規制を順次、ほぼ撤廃する」と表明しています。

 オミクロン株感染者がゼロになったわけではなく、一部ではオミクロン株から派生した亜系統ウイルスの存在も指摘されていますが、社会活動は再開できるとの判断です。今のところ、目立って感染が再拡大しているわけではありません。

 この様子を見て、投資家は「日本でもオミクロン株感染はピークアウトから収束までが早い」と考えていると思われます。

 現状、このストーリーを多くの投資家が想定しているわけではないと思われますが、一部の資金は「経済活動早期再開」を見込み、業績が急回復すると思われる銘柄を買っているのでしょう。

 そのような背景で銘柄の動きを見ていくと、「一部外食株」の動きが気になります。外食セクターはコロナ禍の悪影響を受け続けている業界です。

 しかし、コロナ前の株価水準を超えて上昇している銘柄や、ここにきて株価がジリ高歩調となっている銘柄は、「経済活動早期再開ストーリー」を見込む投資家が先駆けて売買対象にしている銘柄かもしれません。

 ここでは「その動き」を反映しているかもしれない外食株を参考として取り上げます。

コード 銘柄名 株価(円)
7550 ゼンショーホールディングス 2,737
3543 コメダホールディングス 2,148
3097 物語コーポレーション 6,350
9873 日本KFCホールディングス 2,922
3563 FOOD&LIFE COMPANIES 3,605
※株価データは2022年2月9日終値ベース。

ゼンショーホールディングス(7550・東証1部)

 牛丼「すき家」や回転ずし「はま寿司」などを手掛ける外食最大手企業です。株価は2020年中にコロナ前水準を回復しました。

・2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コメダホールディングス(3543・東証1部)

 朝食サービスなどに特長がある「コメダ珈琲店」を全国展開しています。店舗の約95%がフランチャイズ店で出店加速中です。株価はコロナ前水準を回復しつつあります。

・2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

物語コーポレーション(3097・東証1部)

 食べ放題焼肉の「焼肉きんぐ」が主力です。株価がコロナ前水準を大幅に上回る、「コロナ禍勝ち組外食企業」と認識されています。

・2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日本KFCホールディングス(9873・東証2部)

「ケンタッキーフライドチキン」を全国展開しています。持ち帰り比率が高くコロナ影響が軽微でした。その後も株価は高水準を保っています。

・2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

FOOD&LIFE COMPANIES(3563・東証1部)

 回転ずし「スシロー」運営、コロナ禍の外食株でもっとも株価上昇が注目された銘柄です。足元の株価調整はグロース株一斉売りによるものと見られます。

・2年週足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)