ここ数年「資産形成」の話題が増えて、積立投資やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を始めた人がたくさんいます。特に米国株インデックス投資が積立投資で人気となっている一方で、米国の個別株式にも、年々注目が高まっています。

 2022年になってから、米国株式市場は金融引き締め(テーパリング)や利上げの影響で大きく下落してきています。買いやすくなった今、これまで、米国株式に投資をしていなかったけれど、これを機に検討している人も多いのではないでしょうか。

 そこで、今回は初心者におすすめする米国株式の理由と注意点についてお伝えしたいと思います。

 私が初心者におすすめする株式では、以下の3点を重視しています。

【1】認知度が高く、生活になじみのある銘柄
【2】業界首位の企業で、参入障壁が高い
【3】売上が上昇し、利益が見込まれている

 また日本株式と違い、米国株式へ投資する際には、以下の点にも注意しておきましょう。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%が課税されます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国に上場していても米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら、売却時にも外貨決済で米ドルのままにしなければ、無駄な手数料を支払うことになります。

 上記に注意して、おすすめの米国株5銘柄について解説していきましょう。

※米国時間2月4日時点の株価、為替は115円で計算。
※各種データ出所:楽天証券HP、各企業HP、リフィニティブ、Investing.comより

アップル(AAPL)

 誰もが知る世界最大手のIT企業で、本社所在地はカリフォルニア州です。

 PC・スマホや関連消費者向け製品だけでなく、ソフト面ではiOSやiCloud、Apple Payなども展開し、デジタルコンテンツやアプリなども販売しています。

 S&P500の組入銘柄で最も比率が高く、約7.0%を占めています。時価総額は2兆8,100億ドルで、日本円で約323兆円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「プロダクト事業(Products)」で、続いて「サービス事業(Services)」となります。

 2022年1月27日に発表された第1四半期決算によると、四半期売上高は約14兆2,500億円(123,945M$)でした。

 カテゴリー別の内訳は「iPhone販売」が約8兆2,370億円(71,628M$)、「サービス収入」が2兆2,440億円(19,516M$)、「アップルウォッチ&付属製品販売」が1兆6,900億円(14,701M$)、「Mac販売」が1兆2,480億円(10,852M$)、「iPad販売」が8,330億円(7,248M$)となっています。

 売上高の約57.8%を主力製品「iPhone」の販売が占めていますが、音楽ストリーミングの「Apple Music」や動画配信サービス「Apple TV+」などを投入しています。

 それによって、iPhoneへの依存度を低下させつつ、サブスクサービスの展開などを促進し、ハード面に頼らない安定した収益源の育成に取り組んでいます。

業績動向

 同四半期決算では、売上高は11%増加し、過去最高を更新し、iPhone、Mac、ウエアラブルおよびサービス事業の売上で過去最高を達成しました。実際に使用されているアクティブデバイス数が18億台を突破し、前年同期から1億5,000万台増加したと発表されました。

初心者が取引する際に見ておくべき点や注意点

 アップルの強みは、ハード製品やサブスクサービスやデジタルコンテンツなども非常に高い利益率を誇っていることです。

 調査会社のCounterpointによると、2021年第2四半期におけるiPhoneの台数シェアは13%で3位にすぎませんでしたが、売上高のシェアは40%、利益シェアは75%と、他メーカーを大きく引き離して首位の座を獲得しています。

 ここ数年は、iPhoneへの依存度を下げようとしていますが、それでも依存度がまだ高いこともあり、定期的に発売される新作iPhoneの動向や発表後の反響が、それらに付随する製品やサービスにも大きく影響します。

 そのため、現在もアクティブデバイス数が増加傾向にあるようですが、今後も続くかどうかに注目です。

株式の注目ポイント

 コロナショックによりアップル株の株価は大幅下落しましたが、わずか3カ月後の2020年の6月には暴落前水準まで回復しました。

 コロナ禍において、自宅で過ごす時間が増えて、アプリ配信や音楽配信などのサービス部門の需要が高まったことや、リモートワークなどが広がり、「iPad」や「Mac」の販売が大きく伸びたことも要因のようです。

 2022年1月3日には初めて3兆ドルに達した企業となりました。直近では上がりすぎという声も多数ありますが、S&P500の構成比率1位ということもあり、多方面からの資金流入が続いて株価も好調です。米国株に投資する上では必ず見ておかないといけない銘柄といえるでしょう。

株価動向

株価:172.39ドル(約1万9,820円)
配当金:0.88ドル
配当利回り:0.51%

 この銘柄の権利落ち日は2月4日(権利実施は2月10日)でした。配当利回りは2月4日時点で0.51%、株価は172.39ドルでおよそ1万9,820円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は182.01ドル、最安値は35.55ドルとなっています(終値ベース)。

 株価が上昇し続けているため、配当利回りは高くありませんが、積極的な自社株買いを実施しており、巨額の株主還元策も株価をささえている要因となっています。

マイクロソフト(MSFT)

 アメリカ合衆国ワシントン州に本社を置き、パソコン用のOS「Windows」とビジネス向けソフトウエアの「Office」で、OSとビジネスソフトで圧倒的シェアを誇るソフトウエア企業です。

 S&P500の組入銘柄でアップルの次に比率が高く、約6.0%を占めています。時価総額は2兆2,935億ドルで、日本円で約263兆円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は、「企業向け製品&サービス事業(Productivity and Business Processes)」、「クラウド・サービス事業(Intelligent Cloud)」、「個人消費者向け製品・サービス事業(More Personal Computing)」となっています。

 2022年1月25日に発表された第2四半期決算によると、四半期売上高は、約5兆9,500億円(51,730M$)でした。カテゴリー別の内訳は「企業向け製品&サービス事業」が約1兆8,300億円(15,936M$)、「クラウド・サービス事業」が約2兆1,000億円(18,327M$)、「個人消費者向け製品・サービス事業」が約2兆円(17,465M$)となっています。

「企業向け製品&サービス事業」では、ワード、エクセル、PPTなどのビジネス分野で使用頻度の高いソフトウエアをまとめたOffice・Office365を提供しています。

「クラウド・サービス事業」では、サーバーやクラウド事業を行なっており、特に市場の注目度が高いのがAmazon.comが提供しているAWS(Amazon Web Servicesの略、現在クラウドコンピューティングの分野で首位を走っている)を猛追し勢いのある「Azure(アジュール)」で、市場からも注目視されています。

「個人消費者向け製品・サービス事業」では、Windows OSのライセンス収入に加えて、Surfaceなどの携帯端末、Xboxなどのゲーミング製品、検索エンジンBingからの広告収益など、個人消費者に近い分野の事業です。

業績動向

 同四半期決算によると、クラウド・サービス「Azure」を含む最大部門インテリジェントクラウドの売上高は26%増、業務用ソフト「Office365」などを手掛ける部門の売上高も19%増となりました。

 今後も企業向けクラウド事業の成長が力強く続いていくと予想されており、競合のアマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下グーグルの動向も注目されています。

 1月18日に発表された690億ドルのアクティビジョン・ブリザード買収案が完了すれば、これまで停滞していたゲーム部門(Xboxのコンテンツやサービス)の収益を押し上げられると想定されています。また、メタバース(巨大仮想現実空間)への取り組みも広げています。

初心者が取引する際に見ておくべき点や注意点

 マイクロソフトというと、OS「Windows」とビジネス向けソフトウエア「Office」などの確固たるビジネス基盤のイメージが非常に強いと思います。

 しかし現在では、快進撃を担うクラウド・サービス「Azure」が台頭し、さらに2016年に約3兆円で買収したビジネス向けSNS(交流サイト)の「LinkedIn」や「Xbox software」、インターネット通話サービス「Skype」、ソフトウエアの開発プラットフォーム「GitHub」などの巨額の買収を繰り返し、高いシナジー効果を発揮しています。

 身近すぎる企業やサービスには、従来の印象にひきずられがちですが、巨大企業であってもビジネスモデルや収益構造は変化していきます。

 一時はGAFA(ガーファ、Google、Amazon、Facebook、Appleの米国IT企業大手の略)に押されて落ち目といわれたマイクロソフトが復権したように、過去のイメージではなく、現在と将来の企業成長を確かめることが重要です。

株式の注目ポイント

 コロナショックによりマイクロソフト株の株価は大幅下落しましたが、わずか2カ月後の2020年の5月には暴落前水準まで回復しました。

 コロナ禍で多くの企業の業績が悪化する中、テレワークや通信授業への移行でクラウド・サービス利用が増えており、この後も「Azure」や職場向けチャットアプリ「Teams」の拡大が期待されます。

 それに伴い株価も好調で、2021年10月29日にはアップルの時価総額を抜いて、1年4カ月ぶりに首位交代(現在は2位)ともなりました。

株価動向

株価:305.94ドル(約3万5,180円)
配当金:2.48ドル
配当利回り:0.81%

 この銘柄の権利落ち日は2月16日(権利実施は3月10日)です。配当利回りは2月4日時点で0.81%、株価は305.94ドルでおよそ3万5,180円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は343.11ドル、最安値は97.40ドルとなっています(終値ベース)。

 株価が上昇し続けているため、配当利回りは高くありませんが、継続した増配や積極的な自社株買いを実施しており、巨額の株主還元策も株価をささえている要因となっています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)

 創業以来、人々の「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」の向上を目指し、世界60カ国に250以上のグループ企業、そして総従業員数約12万7,000名の「世界最大級のヘルスケアカンパニー」です。主に、消費者向け製品、医療機器、医薬品の分野で数万アイテムに上る製品を提供しています。

 NYダウ(ダウ工業株30種平均)やS&P500に採用されており、時価総額は4,518億ドルで、日本円で約51兆円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは、社内カンパニー制により3つの事業分野でビジネスを展開しています。

「バンドエイド」、「ジョンソン」ベビー製品などの消費者向け製品を扱うコンシューマーカンパニー、医家向けの医療機器、医療関連製品などを扱うメディカルカンパニー、そして使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー」を扱うビジョンケアカンパニーの3カンパニーがあり、それぞれが分社分権経営により運営されています。

 なお、日本国内における同社では、医薬品部門をヤンセンファーマ株式会社が担っています。

 事業の中心は、「消費者向け製品事業(Consumer)」、「医療用医薬品事業(Pharmaceutical)」、「医療機器事業(Medical devices)」となっています。2022年1月25日に発表された第4四半期決算によると、四半期売上高は、約2兆8,520億円(24,804M$)でした。

 事業分野別の内訳は「消費者向け製品事業」が約4,200億円(3,657M$)、「医療用医薬品事業」が約1兆6,430億円(14,288M$)、「医療機器事業」が約7,880億円(6,859M$)となっています。

「消費者向け製品事業」では一般消費者向けに幅広くヘルスケア商品を展開しており、なじみ深い商品には「LISTERINE」「AVEENO」「BAND-AID」「DR.CI:LABO」などがあります。

「医療用医薬品事業」はジョンソン・エンド・ジョンソンの中心的な事業で、「(免疫学(Immunology)」「感染症(Infectious Diseases)」「神経科学(Neuroscience)」「腫瘍学(Oncology)」「循環器系、代謝系(Cardiovascular and Metabolism)」「肺高血圧症(Pulmonary Hypertension)」の6つの治療領域に対して、薬剤などを提供しています。

「医療機器事業」では、外科手術や整形外科などで用いられる医療用機械を扱っています。病院や卸売業者、小売業者に直接販売されて、市中の病院やクリニックなどで使用されています。

業績動向

 同四半期決算では、売上高は市場予想を下回りました。コロナ禍で、手術や診療が延期されたことによる医療機器の販売減がまだ回復途上にあることや、スキンケア・化粧品など消費者向けの商品において米国で供給制約の影響を受けた結果ですが、2022年ではコロナ禍の影響から回復するとの見通しを出しています。

初心者が取引する際に見ておくべき点や注意点

 一般消費者向け商品の印象が強い同社ですが、他にも医療プロフェッショナル向けの商品も扱っています。むしろ、医薬品や医療機器分野が売上の8割以上を占めていることからも、どちらが株価への影響が大きいかは一目瞭然でしょう。

 長期にわたって売上も安定していることからも魅力的なブランドを保持し、高いマーケティング力を生かしていることがわかります。しかし、逆にいえば成長性という面では物足りなさがある点は否めません。

 将来性に期待するよりも、長期的に安定した利益を生み出す優良企業へ投資をしたい人にとっては魅力的な企業ではないでしょうか。

株式の注目ポイント

 同社は配当銘柄として有名で、連続増配を58年以上にわたって実施しています。

 コロナショックによりジョンソン・エンド・ジョンソン株の株価は2割程度下落しましたが、翌月の2020年4月には下落前水準まで回復しました。「ステイホーム銘柄」としてすぐに買い戻しが入り、その後一時的に下落する場面もありましたが、安定した業績を背景に緩やかに上昇しています。

 同社もワクチン開発に成功しましたが、CDC(米疾病対策センター)の諮問委員会が2021年12月16日に、「J&J製ワクチンの利益とリスクを検討し、全会一致でファイザー製やモデルナ製の接種を推奨する」と決め、CDCがこの決定を支持しました。

 このため、新型コロナウイルスワクチンの2022年の売上高は前年比46%増の最大35億ドルに達すると予想されていますが、ファイザー製(290億ドル予想)やモデルナ製(185億ドル)に比べて大きく出遅れる結果となりました。

 この点からもワクチン関連での売上よりも、医薬品・医療機器セグメントに注目しておくべきでしょう。

株価動向

株価:171.63ドル(約1万9,740円)
配当金:4.24ドル
配当利回り:2.47%

 この銘柄の権利落ち日は2月18日(権利実施は3月8日)です。配当利回りは2月4日時点で2.47%、株価は171.63ドルでおよそ1万9,740円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は179.47ドル、最安値は111.14ドルとなっています(終値ベース)。

 安定した配当利回りと業績が魅力な銘柄です。長年継続している増配や自社株買いを実施しており、景気動向に左右されにくい銘柄として長期保有したい方に向いているでしょう。

ビザ(V)

 世界ナンバーワンのクレジットカードシェアを持つ決済テクノロジー企業で、200を超える国と地域でデジタル決済を提供しています。1958年の設立以来、すべての人がいつでもどこでも利用できる、最も優れた決済方法を提供することを理念としています。

 時価総額は4,790億ドルで、日本円で約55兆1,000億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業は「決済代行事業(Payment services)」の単独事業となっています。2022年1月27日に発表された第1四半期決算によると、四半期売上高は、約8,117億円(7,059M$)でした。

 事業サービス別の内訳は「決済サービス収入(Service)」が約3,672億円(3,193M$)、「決済データ処理収入(Data processing、決済サービスにアドオンされるその他のサービス売上)」が約4,156億円(3,614M$)、「国際取引決済収入(International transaction)」が約2,500億円(2,174M$)、「その他収入(Other)」が約516億円(449M$)となっています。

 収入に対して、「顧客インセンティブ支出(Client incentives、カード利用額に応じて銀行や小売業者などのカード発行会社などに支払う報酬)」は約2,726億円(2,371M$)の支払いとなっています。

業績動向

 同四半期決算によると、予想を上回る結果となり、純収入が前年比24%増の71億ドルとなりました。各国で国境がいったん再開された9~11月に旅行関連支出が大幅に増加したことや、オンライン消費が増えて決済額が増加したようです。

 前年期2021年9月期の第2四半期までは不調が続いていましたが、ワクチンの普及などにより世界の経済が正常化していく中で消費が活発化し、第3四半期以降は2020年の業績を大きく上回っています。(売上は、前年同期比で、第3四半期は26.7%増、第4四半期は28.6%増)その結果、通期では過去最高の売上となりました。

初心者が取引する際に見ておくべき点や注意点

 世界中で使用されるVISAカードの決済金額は、世界経済が発展して消費が増えれば増えるほど、その額が膨らんでいきます。世界のGDP(国内総生産)をみると、2040年ごろには倍増し、2050年まで年平均2.6%のペースで成長し続けると言われています(IMF2016年推計より、PwCが予測)。

 つまりは、カード業界でトップシェアの地位を持つVISAの業績も、比例して伸びることが想定されます。

 ただし、2021年末にアマゾン・ドット・コムが英国のサービスで米ビザのクレジットカードの取り扱いを終了すると発表(その後取り扱い継続することに)したように、決済手数料の引き下げや同様の決済サービスが拡充することでシェアや利益率が落ちる可能性には注意が必要です。

株式の注目ポイント

 決算は良好でしたが、バサント・プラブCFOが「国境を越える旅行が2023年夏まで、新型コロナウイルス禍前の水準に達しない公算が大きい」と述べたことで、まだ消費動向の冷え込みを懸念していることが起因となり、株価は一時的に下落しました。

 しかし、2021年末には一時的にコロナ禍が落ち着き、消費が回復したことから株価も上昇し、直近四半期の決算発表後は相場全体が下落しているにもかかわらず上昇しています。

 配当は増配を続けていますが、利回りでは0.5~1.0%辺りで推移しています。安定した業績に注目し、相場の変動にも左右されにくい長期保有銘柄として検討してはいかがでしょうか?

株価動向

株価:228.39ドル(約2万6,270円)
配当金:1.50ドル
配当利回り:0.65%

 この銘柄の権利落ち日は2月10日(権利実施は3月1日)です。配当利回りは2月4日時点で0.65%、株価は228.39ドルでおよそ2万6,270円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は250.93ドル、最安値は128.13ドルとなっています(終値ベース)。

 配当利回りは高くありませんが、やはり積極的な自社株買いを実施しており、巨額の株主還元策も株価をささえている要因となっています。

エヌビディア(NVDA)

 1993年の創業以来、主にゲーミングPCで採用されている計算能力の高いGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)を提供する世界トップクラスの半導体メーカーです。

 現在では携帯やスマホに、自動運転車両やロボット、AIや機械学習向けの製品など、高性能の処理を求めるニーズが高まったことで、一般的にも注目を浴び始めた企業です。

 時価総額は6,079億ドルで、日本円で約70兆円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 2021年11月17日開示の第3四半期決算によると、四半期売上高は約8,168億円(7,103M$)でした。

 事業別の売上は「ゲーミング事業(Gaming)」が約3,700億円(3,221M$)で、続いて「データセンター事業(Data Center)」が約3,376億円(2,936M$)、「専門家向けクリエイションリソース事業(Professional Visualization)」が約663億円(577M$)、「オートモーティブ事業(Auto)」が約155億円(135M$)、「OEM&その他事業(OEM & Other)」が約269億円(234M$)、となっています。

 エヌビディアは、高速処理が必要とされるAIや自動運転、機械学習などのイメージが強くなっていますが、売上の半分近くは従来から事業の中心である「ゲーミング事業」の分野が占めています。それに加えて、「データセンター事業」が急成長しています。

 ゲーミング分野での圧倒的なシェアと、超高速処理にはエヌビディアのGPUが必須と言われるほどの高い技術力が同社の強みです。

業績動向

 同四半期決算によると、ゲーミング事業およびデータセンター事業は、四半期および通年の両方で過去最高の売上高となりました。四半期売上高は過去最高となり、前年度より50%増加、ゲーミング事業の売上高は前年度より42%増、データセンター事業の売上高は前年度より55%増となりました。

 創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏は、「第3四半期の業績は、売上高が過去最高を記録し、素晴らしい結果となりました。NVIDIA AI の需要は、ハイパースケールおよびクラウドのスケールアウトにけん引されて急増しており、2万5,000 社以上の企業に採用されています」と述べています。

 次回2022年2月16日に開示予定の第4四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

初心者が取引する際に見ておくべき点や注意点

 現在から将来においても注目テーマである「DX、AI、自動運転、機械学習」など必要となる高度な演算を可能とする半導体チップでエヌビディアは外せない存在となっています。

 しかし、一概に半導体関連銘柄といっても、その役割や得意分野はまちまちです。将来性を感じやすい分野であることから、何となく買付している方がいますが、銘柄選定によって差が出やすい分野でもあります。

 また2022年1月末には、米半導体大手エヌビディアは、ソフトバンクグループからの英半導体設計会社アーム買収計画を取り下げる準備をしていると報道がありました。こちらはすでに独禁法の問題で、買収が難しいことが従来から予想されていますが、注意は必要です。

株式の注目ポイント

 株価はコロナショック以降にも大きく上昇し、2021年11月17日に発表した2022年度第3四半期(8-10月)で売上高が好調だった頃から、一時は2021年初比で250%超まで上昇しました。

 しかし、米国で金融引き締め懸念を背景にした成長株売りに伴い、同社株式も高値から30%程度下落しています。半導体関連でも特に注目の銘柄であることから、値動きが大きくなりやすい傾向がありますので短期的な売買には注意が必要です。

 とはいえ、エヌビディアの中心事業分野であるゲーミングには、マイクロソフトやネットフリックスも参入し始めました。また今後も高速演算処理の半導体は年々ニーズが増え続ける状況にあることから、大きく調整しているこのタイミングで検討してみてはいかがでしょうか。

株価動向

株価:243.19ドル(約2万7,970円)
配当金:0.16ドル
配当利回り:0.07%

 この銘柄の権利落ち日は3月上旬の予定(権利実施は3月下旬予定)です。予想配当利回りは2月4日時点で0.07%、株価は243.19ドルでおよそ2万7,970円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は333.76ドル、最安値は32ドルとなっています(終値ベース)。

 配当利回りを期待する銘柄ではありませんが、成長性が魅力的です。半導体分野の潮流に乗りたい人にとっては、今後も必須の銘柄といえるでしょう。

 

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