大暴落した相場の1度目のリバウンド相場の期間は概ね5~6ヶ月である。つまり、暴落後のリバウンド相場はスタートから半年間は上がる確率が大きい。この期間は何を買っていても比較的安心できる。

1929年の暴落後のNYダウ(月足)

1929年の暴落後のNYダウ(月足)
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ITバブル崩壊後のナスダック(左)と1990年バブル崩壊後の日経平均株価(右)の月足

ITバブル崩壊後のナスダック(左)と1990年バブル崩壊後の日経平均株価(右)の月足
(出所:石原順、ブルームバーグ)

100年に1度と言われる記録的なボラティリティを示現した2008年の株式暴落相場を経て、2009年は世界的な政策総動員の効果で6ヶ月にわたって株式のリバウンド相場が展開されてきた。ここまでは、相場の歴史が教えてくれる教科書通りのリバウンド相場が展開されているといえよう。

NYダウ(月足) 2009年のリバウンド相場

NYダウ(月足) 2009年のリバウンド相場
(出所:石原順、ブルームバーグ)

日経平均株価(月足) 2009年のリバウンド相場

日経平均株価(月足) 2009年のリバウンド相場
(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(月足) 2009年のリバウンド相場

豪ドル/円(月足) 2009年のリバウンド相場
(出所:石原順、ブルームバーグ)

2009年8月は2009年3月から始まった株式のリバウンド相場の6ヶ月目に入っている。筆者は世界のGDPの7%弱の財政出動、2009年3月以降の英・米の量的緩和、リバウンド相場の5~6ヶ月保証を根拠に、基本的に強気の相場見通しを続けてきた。しかし、この先の相場見通しには自信が持てない。(バブル崩壊後の相場の大底入れには、概ね30ヶ月程度の時間を要すことを過去の相場は示唆している)この8月で一番底のあとの半年の上げ保証期間は終わるので、筆者の相場の見通しは強気からニュートラルに変化(弱気に転じたわけではない)しつつある。

リーマンショック以降、相場の悪材料を上げれば切りがないが、それらの悪材料を各国政府・中央銀行はジャブジャブのバブル政策を行うことで封じ込めてきた。日経平均株価がPER40倍~50倍に買われてもバブル環境では肯定されている。中国の景気刺激策(56兆円)に代表される世界のGDPの7%弱の財政出動の効果は、単純に市場価格を押し上げている。自動車業界だけでも既に世界で16兆円の資金が投入されているように、マネーの大量供給で市場の弱気や信用不安を払拭してきたのが2009年3月以降の相場である。

この意図的なバブル相場の賞味期限を推し量るには米国の量的緩和政策がカギを握ると考えて、筆者はFOMCに注目してきた。国債買い取りプログラムの終了が決定されるか否かが焦点であった8月13日のFOMCでは、買い取り期間を9月から10月に延期したものの増額はされず、現状では10月に打ち止めに向かうことが示された。市場では金融正常化に向けたソフトランディング路線と評価されているようだが、筆者はこれでバブル相場の“勢い”は削がれたとみている。

市場の過剰流動性(ジャブジャブ状況)は当面続くことになる。米国債の買い入れは10月まで行われ、住宅ローン担保証券などの買い取りプログラムも年末まで続く。また、ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)の期限も9月末まで保証されている。英国は資産買い入れプログラムを増額(3ヶ月延長)しており、ユーロ圏も銀行への資金供給やカバードボンドの購入を続けている。これらの非伝統的な金融政策という“劇薬”がきいているかぎり、市場はハイテンションとなり下方硬直性が働く(売られにくい)。金融危機の後に金融の正常化を急ぐと日本の失敗を繰り返すことになりかねないのは、バーナンキFRB議長も承知している。したがって当面低金利とバブル環境は維持されるだろう。

だが、米国の国債買い取りの打ち止めは、米国が金融正常化にむけての小さな一歩を踏み出したというサインである。FRBの今後の政策は、国の借金と不景気のバランス取りに移行する。いずれにせよ、上がる確率の大きかった過剰流動性という金融相場の“最もおいしい半年間”が過ぎようとしている。今後の相場がもう一段バブルするかどうかは、経済指標の好転や上げ相場を演出してきた投資銀行やファンド勢がさらにリスクテイクをするかどうかにかかっている。クロス円相場は今後も株次第だが、投資銀行やファンド勢が今後も資源国や新興国への投資を行うか否かで、対ドル相場は大きくトレンドが変わる可能性がある。

米雇用統計後の相場は薄商いやストップ・ロス注文を狙ったファンド勢の売り買いに翻弄されて、乱高下相場となっている。日足ベースではレンジ抜けにつくというトレンドフォローのブレイクアウト手法は全く機能していない。米雇用統計(相場のトレンドをみるうえで重視していない)後の相場は毎回ボラタイルになるので、雇用統計後の1週間は短期売買しかやらないようにしている。

豪ドル/円(左)とドル/円(右)の雇用統計(8月7日)後の日足

豪ドル/円(左)とドル/円(右)の雇用統計(8月7日)後の日足
(出所:石原順、ブルームバーグ)

現在、筆者は外為相場の方向感がよくわからないので、今週から相場をみるタイムフレームを日足や週足から1時間足に移している。すなわち、短期売買がメインである。売買手法は、過去のレポートやネット勉強会で紹介しているボリンジャーバンド1σ抜けでエントリーする手法である。ADX(DMI)の上昇局面で移動平均線に傾きがあるのを確認して、ボリンジャーバンドの1σの外側でのみ取引している。ストップ・ロス注文はボリンジャーバンドの1σの近辺に置いている。

直近の豪ドル/円(1時間足)とボリンジャーバンド1σ(1)

直近の豪ドル/円(1時間足)とボリンジャーバンド1σ(1)
(出所:石原順、楽天証券)

直近の豪ドル/円(1時間足)とボリンジャーバンド1σ(2)

直近の豪ドル/円(1時間足)とボリンジャーバンド1σ(2)
(出所:石原順、楽天証券)

バブル相場の先陣を切って走っていた原油相場や中国株が失速気味なので、この局面は無理をせず、しばらく短期売買で様子をみたい。

原油先物(左)と中国 上海総合指数(右)の日足

方向感はなくボラティリティのレベルが高い(レンジ調整示唆もやや危険な相場環境)

原油先物(左)と中国 上海総合指数(右)の日足
(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年8月13日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

(ATR・ボリンジャーバンド・標準偏差ボラティリティのトレード手法については、5月13日・6月17日・7月29日のネット勉強会の動画配信をご覧ください)

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)