注目のバーナンキFRB議長の議会証言は、議長が「連邦公開市場委員会(FOMC)はこの先も「長期間にわたり相当緩和的な金融政策を継続する」と述べたことで、米国のバブル政策が継続される見通しとなった。

バーナンキFRB議長は、「米国債買い取り継続の可否はFOMCが決定する」「これまで資金調達の場として重要だった商業用不動産ローン担保証券(CMBS)市場のてこ入れに向け、われわれは最近、ターム物資産担保証券ローンファシリティー(TALF)の担保に新発および既発のCMBSを加えた。将来的にどれほど効果があるかを見極めるのは時期尚早だ。TALFの期限は9月31日だ。状況を注視し、市場が引き続き支援を必要とする場合はプラグラム期間を延長する」(ブルームバーグ)と発言しており、結局、8月11日および9月22日に予定されているFOMCが、現行の相場の戻り(バブル相場)の賞味期限と規模を決定することになろう。

米国の国策バブル政策が継続している間は株式市場が下値硬直型の相場展開になりやすい。外為市場では対ドル相場はともかく、少なくとも対円相場に関しては「株が上がれば円が売られ、株が下がれば円が買われる」という株価連動の展開が継続するだろう。

クロス円相場の方向を決定する変数は米国の株式市場であり、市場参加者が米国株の先行きをどうみるかでクロス円相場の方向が決まってくる。7月20日にゴールドマン・サックスはS&P500の年末のターゲットを前回の940から1060に上方修正した。相場の底はともかく天井を予想するのはむずかしい。特にバブル(過剰流動性)相場の天井の時期を見極めるのは困難であるが、ゴールドマン・サックスのS&P500上方修正以降は株式市場の先行きに対して楽観的なムードが蔓延している。

米S&P500株価指数(日足)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

さて、この先の外為市場の動向であるが、投機マネーが複雑なロジックでは動かない以上、筆者は簡単なロジックでしか取引したくない。ドル・ストレート相場は不美人投票相場が混迷を極めており、決定的に買える通貨というのが見あたらない現状だ。したがって、株価連動のクロス円相場が比較的動きのとらえやすい通貨ペアといえよう。

筆者は過去のレポートで「株高連動のクロス円相場のなかで一番わかりやすい動きとなっているのは豪ドル/円の相場である」と述べてきたが、<2009年上半期の主要通貨のパフォーマンス>は“対円・対ドル”のいずれも豪ドルが上昇率のトップとなった。

豪ドル/円(左)と豪ドル/ドル(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

現在の不確実性相場の中で一番頼りになるのは、世界のGDPの7%弱の財政出動効果であると言い続けているが、中国株や資源・素材関連株の上昇がそれを証明している。米・中の大規模な財政出動(=公共事業)から筆者は公共事業(鉄鉱石)関連株としてBHPビリトンやリオ・ティントに注目してきたが、これらの株もかなり上昇した。

BHPビリトンADR(左)と中国 上海総合指数(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ブルームバーグの報道では「熱延鋼板の価格は4月1日以降21%上昇し、中国が輸入する鉄鉱石の現物価格も43%高騰している。中国の鉄鋼生産施設の稼働率は90%を超え、2007年と同水準になっている」という。公共事業関連通貨としての豪ドルは、現在の世界不況のなかで最も不況に耐性のある通貨である。先進国では唯一リセッション(景気後退)になっておらず、悪さ比べのなかでの優位性がある。したがって、米・中のバブル政策が継続する限り、豪ドル/円を取引のメインとしたい。

注意すべき点は、豪ドルの上昇局面では“豪中銀の豪ドル売り”が出てくることだ。豪中銀は6月も19億4000万豪ドルを売却しており、覆面介入にちかい格好となっている。中国政府が行っている5860億ドル(約55兆円)規模の景気刺激策が効いているうちは、介入でトレンドは変わることはないと思われるが、上昇トレンドにあっても利食いを入れながら丹念に押し目を拾っていく作業が必要となろう。

豪ドル/円は7月23日に78円04銭まで上昇したが、筆者の利用している<週間価格変動モデル>の上限に近いところまで上昇しており、本日は押し目買いを狙いたい。また、バブル相場ではあるが、気をゆるめずにストップ・ロス注文は必ず置いておきたい。

「相場変動率予測モデル」が計測する7月第4週(今週)の豪ドル/円相場の想定レンジ


(出所:石原順、ブルームバーグ)

投資家のリスク選好のバロメーターは原油市場と株式市場の2つである。当面、外為市場(特に円相場)を考えるに当たっては、この2つをみておけば良い。7月は投資信託の設定が多く(63本)、その大半が外債や外株に投資される。需給的に7月中のクロス円相場は下値が堅くなるだろう。

原油先物(左)と豪ドル/円(右)の日足

7月初旬に発生した売りトレンドは短期間で消滅し、現在は調整相場の中での戻し局面


(出所:石原順、ブルームバーグ)

● 円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年7月23日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)