FRBは6月24日のFOMCで【出口戦略】にまったく言及しなかった。したがって、現行のバブル相場は、7月21日予定のバーナンキFRB議長の(金融政策に関する年2回の)議会証言まではすくなくとも継続されるだろう。

しかし、市場が期待していた【米国債買い取りの増額】についても一切触れておらず、長期国債やモーゲージ債の買い入れ規模を据え置いたことで、バブル相場の上昇スピードは緩慢なものになるだろう。現在の景気回復期待相場は、中央銀行のインフレ=バブル政策によって成り立っているので、今後も米国債買い取りプログラムの変更については最大限の注意を払いたい。

当局が出口戦略になかなか踏み切れないことは、ITバブル崩壊後の低金利政策の長期化をみても明らかである。基本的に次回(8月11日)のFOMCまでは“モラトリアムのバブル相場”が続く確率が高い以上、株式相場やクロス円相場は押し目買い戦略が基本となる。注意すべきは、MSCI世界株価指数の株価収益率(PER)がすでに40倍を超えていることである。株価指数連動のクロス円相場も今後は押し目を丹念に拾っていく慎重な姿勢が必要となる。

上昇が有望な通貨ペアは<豪ドル/円>であろう。これまで述べてきたように、世界のGDPの7%弱の財政出動を背景(鉄鉱石需要)とした公共事業関連通貨としての豪ドルは、現在の世界不況のなかで最も不況に耐性のある通貨である。主要通貨で唯一利上げ観測も浮上しており、所謂キャリートレード通貨としての投資家の需要も強い。外貨準備の運用多様化を進めている中国がコモディティの買い入れを増やす方向で動いているのも追い風となろう。

筆者は今年の3月13日以降、豪ドル/円(週足)の順張りシステムが「売り」に転換しない限り、豪ドル/円が過去3日間の安値近辺に下落した局面の押し目買いを行っている。

豪ドル/円(週足)と「レンジブレイクシステム」による売買シグナル

2009年3月13日週足終値の64円47銭で「豪ドル買い・円売り」シグナルが発生して以来、2009年6月26日現在まで豪ドル買い・円売りのポジションを持ち続けている。


(出所:石原順、ブルームバーグ)

原油先物(左)と上海総合指数(右)の日足


(出所:石原順、ブルームバーグ)

DMI(ディレクショナル・ムーブメント・インデックス:W・ワイルダーによって考案されたテクニカル指標)の14日ADXで相場のトレンドを判定すると、現在、ドル/円もクロス円も大きな方向性は出ていない。方向性のない局面で短期売買を行う場合は、大きな利益を狙わずに、小さな利益の積み重ねで対処するのが基本である。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤のライン)によるトレンドの判定
相場が方向性を持っている時間帯(黄色)相場が方向性を持っていない時間帯(水色)

下段:26日ボリンジャーバンド
バンドが<収縮の後に拡大する>という相場に方向性が出るポイント(緑)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤のライン)によるトレンドの判定
相場が方向性を持っている時間帯(黄色)相場が方向性を持っていない時間帯(水色)

下段:26日ボリンジャーバンド
バンドが<収縮の後に拡大する>という相場に方向性が出るポイント(緑)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年6月25日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)