3月5日の英中銀による国債買い入れ、3月18日のFRBによる国債の買い入れ、日銀の国債買い入れ増額、3月23日の不良債権買い取り計画と、先進国による切り札ともいえる政策が総動員となっている。上記の政策の効果の持続性はともかく、目先は政策に逆らうのは得策ではないだろう。先週のレポートでも述べたように、FRBの長期国債買い入れが促すのは「株高・債券高・ドル安」である。

クロス円相場は基本的に株価連動相場である。したがって、この先のクロス円相場の見通しは米国の株式市場がどこまで戻すのかが焦点となろう。海外のファンドマネージャーの間では、米国の株式市場の代表的な指数であるS&P500で「960ポイントあたりまでは戻るのではないか」という意見が多く聞かれる。今のところ、筆者もこのシナリオに賛成である。

S&P500株価指数(日足)
上値抵抗ポイントと移動平均リボン(市場参加者の1~3カ月の平均コスト)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

現在の株式市場は収益の裏付けがないため、今後、企業業績が急回復しない限り割高感は否めないという意見も多いが、日本市場を除けば極端な割高感はないだろう。

世界の株式市場のPER


(出所:日経ヴェリタス編集部)

今、一番確かな材料は世界のGDPの7%近くの財政出動の効果である。財政出動、即ち公共事業による鉄鉱石需要を受けた資源国通貨である「豪ドル/円」の押し目買いをしばらく続けたい。株高・円安・資源国通貨高の流れからいって最も安心感のある通貨ペアである。

株式市場にとっての懸念材料は、3月末に米政府による再建計画の承認審査期限を迎える米自動車大手GMの問題である。昨日、オバマ米大統領が「米自動車業界に対する具体策を数日以内に発表。米自動車業界を維持する必要がある」と発言したことを受けて、GMへの懸念はいくぶん後退している。このGM問題を乗り越えれば、4月中旬以降の決算発表までは株の基本的な上昇トレンドは維持されるという見方が多い。今後、大きな波乱があるとすれば決算発表とストレステスト(米大手銀行19行に対する健全性審査・4月末が期限)の発表時期となろう。


(出所:石原順、ブルームバーグ)

目先の外為市場は3月決算末と新年度入りを控えた特殊な需給相場となるので注意が必要だ。また、来週は4月2日にG20、ECB理事会、4月3日に雇用統計がある。ECB理事会を控えたユーロや、4月7日のRBA理事会を控える豪ドルもポジション調整相場となる可能性がある。飛びつき買いは避け、押し目買いを狙いたい。

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年3月26日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

(また、ATRやボリンジャーバンドの売買手法については、過去のレポートをご覧ください)

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)