米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ(ダウ工業株30種平均)平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合株価指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種株価指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2022年2月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します(株価、配当利回りなどのデータは2022年1月10日現在、為替は1ドル=115円で計算)。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

※米国に上場していても米国籍企業以外の場合、配当金にかかる源泉税率は日本との租税条約によって異なり10%ではありません。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:オイル・ドリ・コーポレーション・オブ・アメリカ(ODC)

 吸着剤製品の開発、製造、販売におけるリーディング‐カンパニーです。

 吸着剤を用いた農産物・園芸用品や漂白粘土・浄化補助製品、キャットリター製品、スポーツ用品などさまざまな製品を手がけています。

 時価総額は2億6,000万ドルで、日本円で約301億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「小売及び卸売(Retail and Wholesale)」で、続いて「企業間取引(Business to Business)」となります。

「小売及び卸売」ではキャットリター製品や、産業用製品・スポーツ用製品などを取り扱っており、「企業間取引」では流体浄化製品や、粗飼料製品などを取り扱っています。

競合他社

 競合他社として、ブランド化された消費者向けパッケージ商品を世界中の消費者に提供することに重点を置く「プロクター・アンド・ギャンブル(PG)」、家庭用品・パーソナルケア用品・特産品の開発や生産・マーケットを行う「チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)」、外観、性能、メンテナンス用の各種製品の製造、マーケティング、販売を行う「オーシャン・バイオケム(OBCI)」などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価は2021年の高値を下回って推移していますが、配当は18年連続で増配しています。

 一昨年、コロナの影響で一時的に株価は下落しましたがその後、はやい段階で株価は回復しました。

 しかし、人手不足や、トラック輸送の逼迫(ひっぱく)・海上輸送の遅延によるサプライチェーンの混乱によってコスト上昇圧力が増しており、そのような影響から株価は横ばいで推移しています。

 これらの問題を解決するために、生産シフトの拡大や設備投資を行っており、それらが今後の株価上昇につながることが期待されます。

業績動向

 2021年12月7日開示の四半期決算では市場予想の発表はありませんが、売上高は四半期最高を記録し前年同期比8%以上増加しています。

 一方、1株利益は極端なインフレの影響により前年同期比を下回りました。

 しかし、決算を受けて株価の変動はわずかで影響は軽微でした。

 会社側はコスト上昇を相殺するために追加の値上げを実施する予定であるとしており、そのような点も株式市場に評価されているようです。

 次回は2022年3月11日に四半期決算の開示予定ですが、前年同期の水準を上回る数字を出せるかに、注目です。

注意点

 販管費や広告宣伝費の削減に取り組んでいるものの、それを上回るペースでインフレが進んでおり、さらなる商品原価の上昇が起きた際に業績が悪化する可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当利回り:3.06%
株価:35.28ドル(約4,000円)

 権利落ち日は2月10日(権利実施は2月25日)です。配当利回りは1月11日時点で3.06%、株価は35.28ドルでおよそ4,000円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は38.45ドル、最安値は25.51ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株2:エクソンモービル(XOM)

 BPやロイヤルダッチシェルとならぶ6大メジャーの一つで、世界最大級の石油企業です。

 また、世界最大の化学メーカーの一つでもあり、石油・ガスなどのエネルギー生産から合成樹脂などの化学品の製造・販売まで幅広く手がけています。

 時価総額は2,900億ドルで、日本円で約33兆3,000億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「アップストリーム事業(Upstream)」で、続いて「米国内化学製品事業(Chemical)」、そして「ダウンストリーム事業(Downstream)」と続いていきます。

「アップストリーム事業」では原油の探鉱・開発・生産までの原油開発段階をおこなっており、「化学製品事業」ではポリエチレン製品群やポリプロピレン及びポリプロピレン・コンパウンドの開発などを行っています。

競合他社

 競合他社として、総合的なエネルギーや化学品事業に従事する米国・国際的な子会社に対して、管理、財務、経営、技術面でのサポートを提供する「シェブロン(CVX)」、米国で石油製品の精製、マーケティング、小売及び中流事業を行う「マラソン・ペトロリアム(MPC)」、輸送用燃料および石油化学製品の国際的な製造業者および販売業者である「バレロ・エナジー(VLO)」などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価はコロナ発生前の水準まで回復しており、配当は昨年11月の権利落ちより増配しており、39年連続で増配しています。

 コロナ発生により原油価格が大きく下落し、それに伴い株価も大きく下落しました。

 しかし、ワクチンの流通とともに経済が少しずつ動きだし、同時に原油価格も回復してきたことで、エクソンモービルの株価も回復してきました。

 現在、エクソンモービルは業績拡大のためにさまざまな取り組みを行っており、2025年には2019年と比較して2倍以上の収益を生み出せる体制になると会社側は予想しています。

 今後の業績拡大とそれに伴う株価上昇が期待されます。

業績動向

 2021年10月29日開示の四半期決算では、1株利益・売上高ともに、市場予想を上回りました。

 コスト管理に加え、石油精製マージンの回復・世界的な需要回復が続いたことで業績が回復しました。

 今後、出遅れているジェット機の需要回復や欧州におけるガス需要が回復することでさらなる業績拡大と株価上昇が期待されます。

 次回は2022年2月1日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるかどうかに注目です。

注意点

 2022年から2027年にかけて低炭素投資に資金を投資していく方針を打ち出していますが、世界的に低炭素投資が求められる流れがより加速したときに、さらなる費用発生が予想され、業績に悪影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:3.52ドル
配当利回り:5.14%
株価:68.47ドル(約7,900円)

 権利落ち日は2月上旬予定(権利実施は3月中旬予定)です。配当利回りは1月11日時点で5.14%、株価は68.47ドルでおよそ7,900円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は83.38ドル、最安値は31.45ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株3:サザンカンパニー(SO)

 米国第2位のエネルギー供給企業です。

 アラバマパワー、ジョージアパワー、ミシシッピパワーの従来からある三社の電力会社を傘下に抱え、他にもサザンカンパニーガス、アトランタガスライトなどの5社の天然ガス会社を傘下に持っています。

 時価総額は726億ドルで、日本円で約8兆3,500億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業収益の中心は「従来の電力事業会社(Traditional Electric Operating Companies)」で、続いて「サザンカンパニーガス(Southern Company Gas)」、「サザンパワー(Southern Power)」となります。

「従来の電力事業会社」では傘下の電力会社による電力供給を行っており、「サザンカンパニーガス」では天然ガス供給事業を行い、「サザンパワー」では再生可能エネルギーや蓄電池プロジェクトを含む発電資産の開発、建設、買収、所有、管理を行っています。

競合他社

 垂直統合型公益事業・送電と配電事業・AEP Transmission Holdco・発電や販売事業などを手がける「アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)」、完全所有の子会社を通じて、規制対象の天然ガスと電力・再生可能エネルギーおよび規制対象外の再生可能エネルギーを、提供または投資する「WECエナジー(WEC)」、子会社を通じて、発電・配電の他、再生可能エネルギーを含むエネルギーサービスと技術を提供する「エジソン・インターナショナル(EIX)」などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価はコロナ発生以降の高値近辺で推移しています。また、配当は20年連続で増配しています。

 コロナ発生により電力・ガス需要が停滞していたこともあり株価は下落したものの、ワクチン流通とともにサザンカンパニーが事業を展開する地域においてエネルギー需要が回復してきたことで株価も回復してきました。

 今後はあらたな原発の稼働を予定しており、これに伴う業績拡大と株価上昇が期待されます。

業績動向

 2021年11月4日開示の四半期決算では、1株利益・売上高ともに市場予想を上回りました。

 経済が回復していく中で、電力契約が4万件以上、家庭用天然ガス契約が2万件以上の増加となり、家庭用・商業用電力ともに需要が改善することで好調な業績となりました。

 今後は、温室効果ガス排出量ゼロへの目標に向けて環境への対策の取り組み強化をしていくことが予定されており、それに伴ってESGマネーの流入が期待されます。

 次回2022年2月23日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回るかどうかに注目です。

注意点

 新たな原発の稼働が遅くなることが発表され、それに伴う業績への悪影響への懸念があり、その点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.64ドル
配当利回り:3.85%
株価:68.53ドル(約7,900円)

 権利落ち日は2月中旬予定(権利実施は3月上旬予定)です。配当利回りは1月11日時点で3.85%、株価は68.53ドルでおよそ7,900円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は70.85ドル、最安値は43.23ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株4:メインストリート・キャピタル(MAIN)

 年間売上高1,000万ドルから1億5,000万ドルの間で構成されるローワーミドルマーケットの企業及び、ミドルマーケットに属する企業に対しワンストップのキャピタルソリューションを提供しています。

 時価総額は30億7,000万ドルで、日本円で約3,530億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業は「ミドルマーケット事業(LMM business)」の単独事業となります。

「ミドルマーケット事業」の主な収入が、「金利収入(Interest income)」で、続いて「配当収入(Dividend income)」、「手数料収入(Fee income)」となります。「金利収入」では、投資先からの金利収入を中心とし、「配当収入」は株式投資による配当収入を中心としています。

競合他社

 主に米国及びミドルマーケット企業への融資を通じた収益を生み出す非分散型クローズドエンド投資会社である「TCG BDC(CGBD)」、各種金融資産にわたる消費者および不動産所有者へ債務回収ソリューションを提供する専門金融企業である「アンコール・キャピタル・グループ(ECPG)」などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値まで戻っていませんが、配当は2020年に減配したものの、2021年より再び増配に転じています。

 コロナ発生後、投資先企業の業績悪化もあり下落していた株価ですが、直近の米国経済回復に伴い、株価が回復してきました。直近ではファンドの投資適格格付けの取得や、1億5,000万ドルの無担保固定金利長期債の発行などを行っており、集めた資金でさらに投資ポートフォリオを拡大する方針を会社側も打ち出しています。

業績動向

 2021年11月4日開示の四半期決算では売上高・1株利益共に市場予想を上回りました。

 投資先企業の業績改善と、メインストリート・キャピタルのローワーミドルマーケットむけの投資が四半期新記録となるなどコロナで停滞していた経済が回復していく中で、同社の業績も好調に推移しました。

 今後も継続した投資拡大が予定されており、さらなる業績拡大が期待されます。

 次回2022年2月24日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるかどうかに注目です。

注意点

 毎月配当がでますが、月によって少なかったりするときもあり、思ったほど配当を受け取れないこともあるので、その点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:2.58ドル
配当利回り:5.84%
株価:44.11ドル(約5,100円)

 権利落ち日は2月1日(権利実施は2月15日)です。配当利回りは1月11日時点で5.84%、株価は44.11ドルでおよそ5,100円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は46.61ドル、最安値は15.74ドルとなっています(終値ベース)。

米国高配当株5:ショー・コミュニケーションズ(SJR)

 カナダを拠点とする大手電気通信会社です。

 傘下のショー、ショーダイレクト、ショービジネスを通じてインターネット、モバイル、テレビ、衛星ビデオ、ビジネス接続ソリューションなどのサービスを提供しています。

 時価総額は150億ドルで、日本円で約1兆7,000億円となっています(1USD=115円計算)。

事業の注目ポイント

 事業の中心は「有線事業(Wireline)」で、続いて「無線事業(Wireless)」となります。

「有線事業」では、インターネット、テレビ、衛星ビデオなどのサービスを提供し、「無線事業」ではShaw MobileやFreedom Mobileなどを通してサービス提供しています。

競合他社

 消費者・企業・政府機関に通信・情報・娯楽の製品とサービスを提供する「ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)」、施設を基盤とした技術及び通信の国際会社であり、主に企業とマスマーケット顧客に対してさまざまな統合サービスを提供する「ルーメン・テクノロジーズ(LUMN)」、ブロードバンドインターネット、ビデオ、固定電話、およびモバイル通信サービスを欧州の住宅顧客や企業に提供する「リバティ・グローバル(LBTYA)」などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価は昨年の高値近辺で推移しています。また、配当はコロナ発生前後で変わらず横ばいで推移しています。

 他の通信業者もそうですが、比較的コロナの影響が少ない事業を展開しており、現在の株価はコロナ発生前の水準を超えて推移しています。

 また、同じカナダの大手通信企業であるロジャーズ・コミュニケーションズがショー・コミュニケーションズの買収を昨年春に発表し、これによりカナダ第2位の通信会社が誕生することを市場は好感し、株価は上昇しました。

業績動向

 2021年10月29日開示の四半期決算では、1株利益は市場予想を上回り、売上高は市場予想と同じ数字となりました。

 ShawMobileの新規顧客の増加や、インターネット収益の増加、SmartSuite製品の需要増により堅調な業績を維持しています。今後はロジャーズ・コミュニケーションズとの合併により、さらなる規模の拡大と業績の拡大が期待されます。

 次回2022年1月12日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 2022年の前半に買収・合併を予定していますが、何らかのトラブルにより延期となる事態が発生した場合には株価へ影響が出る可能性があり、注意が必要です。

株価動向、配当利回り紹介

配当:0.95ドル
配当利回り:3.15%
株価:30.08ドル(約3,500円)

 権利落ち日は2月14日(権利実施は2月25日)です。配当利回りは1月11日時点で3.15%、株価は30.08ドルでおよそ3,500円から購入できます(1USD=115円計算)。

 2019年からの最高値は30.48ドル、最安値は12.22ドルとなっています(終値ベース)。

【要チェック】
 楽天証券「トウシルの公式YouTubeチャンネル」では、同筆者が執筆した「やってはいけない資産形成」のコラムを動画で視聴できます。また、リーファス社の公式YouTubeチャンネル『ニーサ教授のお金と投資の実践講座』では、同コラムの他にも動画でお金と投資の知識を学ぶことができます。