ユーロ/ドル相場が反発している。なべ底形成しながらユーロ高方向にレンジブレイクしており、比較的大きなリバウンド相場となる可能性が出てきた。8月以降の外為市場は百年に一度の危機からリスクマネーが収縮し、リパトリ(資金の母国回帰)のドル高と円キャリー取引の巻き戻しの円高が続いてきた。この動きがクリスマス休暇シーズンで一服しているなか、市場の焦点が景気や金利に移りつつある。

先週のレポートで「【積極財政】+【低金利】政策から導き出される通貨政策は【通貨安】である。現在、世界各国が【積極財政】+【低金利】政策をとっているので、今後は通貨切り下げ競争となる可能性もある。当面の外為市場は各国のファンダメンタルズの悪さと金利水準を比較する展開が続くことになろう」と述べたが、「ECBは1月の会合で利下げを決定するほどの情報・データを持っていない」「金利が2.00%に近づけば注意が必要」「実質金利がマイナスとなる状況避けたい」「景気が回復すれば迅速に利上げを実施すべき」という11日のウェーバー独連銀総裁の発言によって、市場はユーロ圏の金利見通しを修正することになった。ECBの追加利下げ観測が後退したことで、素直にユーロが買われている。

ユーロ/ドル(日足)26日変動率と26日ボリンジャーバンド
相場に方向性がある期間(ピンク色)相場に方向性がない期間(水色)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

また、ブルームバーグの報道によると、ゴールドマンサックスは11日のレポートで「ドル相場を支える流れが消えつつあるとして2009年の対ユーロおよび対円相場の予想を下方修正し、ドルは1ユーロ=1.45ドル、1ドル=90円に下落するとの見通し」を示している。

悪さ比べという観点からみると、米国は米自動車法案の調整が難航している。情報が錯綜しており結論はまだ出ていない。マーケットはこれに振り回される格好となっているが、つなぎ融資をおこなったところで今後も堂々巡りの繰り返しであろう。企業の再生を考えるなら破産法を申請したほうがよいのは明確だが、大量の失業者の発生とCDSの決済問題があり事は簡単ではない。ドルも米国株も米自動車業界の動向に振り回される展開が続こう。日本は来週の月曜日に発表される日銀短観の大企業製造業DIが1975年以来の悪化という見通しとなっており、積極的に円を買える状況ではない。90円割れの水準では介入警戒感もある。

ドル/円(日足)26日変動率と26日ボリンジャーバンド
相場に方向性がある期間(ピンク色)相場に方向性がない期間(水色)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)26日変動率と26日ボリンジャーバンド
相場に方向性がある期間(ピンク色)相場に方向性がない期間(水色)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

となると、短期的に一番わかりやすいのは「ユーロ買い・ドル売り」である。ドル/円は戻り売りであろう。クロス円の押し目買いは収益機会があるだろうが、株価連動通貨となっているため、米自動車法案の結果によっては大きなリスクを抱えることになる。クリスマス休暇シーズンなので、流動性は日々低下している。少しの商いでも値段が飛びやすい環境にあり、いつも以上にリスク管理をしっかりやっておく必要があろう。

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2008年12月11日まで)

ドル/円およびクロス円市場は“円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する”という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間では円の売り放置やキャリートレードはリスクが高くなる。ATRは過去に見ないような高い変動幅を記録しており、現在は平時よりもリスクの高い局面であることに注意していただきたい。変動幅が低下しても変動幅の絶対水準が高すぎるので相場の振れが大きくなる。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ランド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯


(出所:石原順、ブルームバーグ)