大発会で自動車株=EVへの関心が示された

 市場関係者の間では昔から「大発会(本年は1月4日)の個別銘柄の動きはその年の傾向を示す」と言い継がれています。

 もちろんそれを検証するのは難しいですが「年の初めの取引には投資家の意図が強く表れるから」と説明されると、あながち無視できるものではないと感じます。

 とくに今年の大発会は自動車株が軒並み高となるなど、例年より強く「投資家の意図」が表れたのではないかと思える動きとなり、一層気になるものとなっています。

 日経平均は510円08銭高、2万9,301円79銭と年を挟んで3営業日ぶり大幅反発となりましたが、その中で目立って買われたのは以下の業種です。

2022年1月4日の業種別指数騰落率上位セクター

  1. 海運
  2. 輸送用機器
  3. 保険
  4. 銀行
  5. 精密機器

 トップの「海運」は昨年も好業績と高配当が好感され東京市場を席巻したセクターです。大発会当日も川崎汽船(9107)+10.9%、商船三井(9104)+6.55%、日本郵船(9101)+4.33%と海運大手株が急伸しました。

 しかし、大発会当日は自動車株・自動車部品株が位置する「輸送用機器」の急伸がより目についたのではないでしょうか? 

 中でも上場来高値を更新したトヨタ自動車(7203)+6.12%の動きが出色でした。時価総額約34兆円、東京市場最大の銘柄が1日で6%超上がるなどそう目にすることはできません。

 この背景はまず、2021年12月14日にトヨタ自動車が開催した「バッテリーEV戦略に関する説明会」が改めて評価されたものと考えられます。

  • EV(電気自動車)戦略に4兆円を投資
  • 2030年にBEV(バッテリーEV)の世界販売を350万台に引き上げる
  • 高級車ブランドのレクサスは2035年までに全てをBEVにする

 という強気の方針が投資家の行動に強い影響を与えたのでしょう。現在のEVトップメーカーである米テスラ社の2021年の販売台数が約93万6,000台ということを勘案すると、トヨタ自動車のEV販売目標はいかに強気かがわかります。

トヨタ系、テスラ系、国内EVパイオニア

 トヨタ自動車と同じようにトヨタ系自動車部品大手の「デンソー(6902)」も上場来高値を更新しており、EV普及本格化を追い風として「トヨタ」というキーワードがこれまで以上に意識されてくるかもしれません。

 ここからどのように評価され、株価がどう動くのかは興味深いところです。トヨタ自動車のEV注力の中で、電池材料の手当てを担うトヨタ系商社「豊田通商(8015)」も注目される銘柄です。2006年にトーメンと合併、自動車関連事業で営業利益の7割を稼ぎ出すビジネススタイルに特長があります。

 さらに比較的株価が安い軸受け大手「ジェイテクト(6473)」、自動車内装品で世界4位の「トヨタ紡織(3116)」、合成樹脂・ゴム部品・エアバッグなどを手掛ける「豊田合成(7282)」などもトヨタ自動車株やデンソー株に呼応した動きをするかどうかに目を配りたいところです。

 他にもトヨタ系銘柄は数多くあります。トヨタ自動車大株主の「豊田自動織機(6201)」、自動車部品大手の「アイシン(7259)」、自動車向け特殊鋼大手の「愛知製鋼(5482)」、自動車部品中堅の「大豊工業(6470)」、「東海理化電機製作所(6995)」、自動車照明首位の「小糸製作所(7276)」、自動車ばね大手の「中央発條(5992)」、さらにはトラック大手の「日野自動車(7205)」、トヨタ自動車が筆頭株主の完成車メーカー「SUBARU(7270)」、トヨタ自動車と資本提携している軽自動車大手の「スズキ(7269)」などもそれに該当しそうです。

 EVを軸に選別した場合、トヨタ自動車を加えた以下の銘柄に注目できそうです。

コード 銘柄名 株価(円)
7203 トヨタ自動車 2,292
6902 デンソー 10,075
8015 豊田通商 5,590
※株価データは2022年1月5日終値ベース。

トヨタ自動車(7203)

 世界的なEV普及で主導権を握れるかどうかに注目。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

デンソー(6902)

 トヨタグループ向け比率は5割弱、欧米韓メーカーとも取引があります。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

豊田通商(8015)

 トヨタ自動車のEV用バッテリー材料などの調達を担っています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 もうひとつ、大発会で自動車株・自動車部品株が買われた背景には、米時間1月3日の米株市場でEV大手のテスラ株が13%を超える上昇となったことも要因として指摘できます。

 同社の2021年10-12月期の世界EV販売台数が前年同期比71%増の30万8,600台と市場予想を上回ったことが米市場で好感されました。

 米テスラ関連株として、同社と緊密な関係にありEV用バッテリーを供給する「パナソニック(6752)」の動きにも注目したいところです。昨年、株価に大きな動意がなかったことから、動き出せば株価妙味がある銘柄となります。

 さらに日本の完成車メーカーではEVのパイオニア「日産自動車(7201)」も気になるところです。2010年にEV「リーフ」を発売、2021年冬には新型EV「アリア」を投入しています。

コード 銘柄名 株価(円)
6752 パナソニック 1,337.5
7201 日産自動車 615.2
※株価データは2022年1月5日終値ベース。

パナソニック(6752)

 テスラにバッテリーを供給。テスラ関連株の筆頭です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

日産自動車(7201)

 新型EVの販売動向も株価ドライバーになりそうです。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)