東京株式市場で、年初から大型の景気敏感バリュー株が好調です。一方、5日の東証マザーズ指数は、1日で5%下げる暴落となりました。マザーズから東証一部大型株へ資金を移す動きが続いています。

 今日は、小型グロース株の宝庫、東証マザーズ市場とどうつきあっていったら良いか、私のファンドマネージャー時代の経験を踏まえた上で得た「鉄則」を、お話しします。

鉄則1:波に乗る

 東証マザーズ市場は、東京証券取引所が1999年11月に開設した「新興企業向けの株式市場」です。他の株式市場との違いは、上場基準が大幅にゆるいことです。赤字のままでも上場することができます。

 創業して間もない新興企業でもマザーズの上場基準を満たせば上場できることがあります。新興企業に早く上場して、成長するための資金を調達する道を開くことが目的でした。

 こうした背景から、東証マザーズ・グロース株への投資は、高リスク高リターンです。期待された成長が実現せずに、暴落して上場廃止になる銘柄もあるし、急成長して株価が何倍にも跳ね上がる銘柄もあります。

 さて、このようなマザーズ・グロース株に投資するとき、一番大切なことは何でしょう。

 ホンモノの成長株をみきわめる銘柄選択力? ……違います。銘柄選択力は重要に違いありませんが、それは一番大切なことではありません。一番大切なことは、波に乗ることです。

 少なくとも私がファンドマネージャーをやっていた2013年までのマザーズ市場では、そうでした。以下、東証マザーズ市場の2016年以降の推移をご覧ください。

東証マザーズ指数の月次推移:2016年1月末~2022年1月5日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ご覧いただくとわかる通り、マザーズ市場には、大きな波があります。2018年1月から2020年2月にかけて、東証マザーズ指数は半値以下に下がっています。ひたすら下げまくる市場でした。

 このようなときは、どんなに一生懸命いい銘柄を見つけて投資してもダメです。いい銘柄も悪い銘柄も、なんでも売られるからです。下げが加速してきたら「三十六計、逃げるにしかず」。ホンモノの成長株かニセモノか考える前に、いったん売って頭を冷やした方が良いです。

 逆に、上昇の波に乗るとおもしろいようにもうかるのも東証マザーズ株です。2020年3月から2021年2月までご覧ください。マザーズ指数は2倍以上になっています。

 こんなときは、いい銘柄も悪い銘柄も上がります。買った途端に、株価が急騰してあっという間に2倍になっても、それがホンモノの成長株かどうかはわかりません。ただ波に乗っただけかもしれません。

 そして、2021年2月以降、再び、なんでもかんでも売られる流れに戻っています。昨日(2022年1月5日)はマザーズ指数が1日で5%下がる暴落となりました。マザーズ株を売って、東証一部の大型景気敏感株へ乗り換える動きが加速していると考えられます。

波をどう読む?

 それでは、東証マザーズの波をどう読んだら良いのでしょう? マザーズに上場するITサービスやバイオ新興企業に追い風が吹くかどうか、材料を読むことが必要です。

 2020年3月以降、コロナ禍でリモート勤務・リモート会議・巣ごもり消費が拡大した追い風を受けて、マザーズのITサービス企業には業績が大きく伸びた企業が多数出ました。

 東証一部の大企業がコロナ禍で大赤字を出す中、マザーズ企業に追い風が吹いたので、個人や機関投資家の投資資金が小さなマザーズ市場に集中し、マザーズ指数を急騰させました。

 ところが、2021年3月以降は、再び調整局面に入っています。世界景気の回復によって東証一部大型株の業績が急回復したことを受けて、投資家は一斉にマザーズから資金をひきあげて東証一部に戻しつつあります。

 コロナ禍が去って経済が再開されると、人々はもっと外出するようになり、巣ごもり需要で潤ったマザーズ株の一部には逆風になる可能性もあります。それを見越して、業績好調な東証一部に資金を移していると考えられます。

 このように、マザーズに追い風が吹いているか逆風か、流れを読むことが大切です。流れを読むのが苦手という方には、次善の策として、東証マザーズ指数の13週移動平均線の傾きを見るという方法もあります。

 13週移動平均線が上向きのときだけトレーディングすると決めておけば、大きな流れの読みで間違うことは少なくなります。

東証マザーズ指数(週次推移)と、13週移動平均線:2016年末~2022年1月5日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

鉄則2:事業内容をきちんと理解できる銘柄に投資

 鉄則2で、銘柄選択力と言いたいところですが、そんなに簡単に銘柄を見抜く力はつきません。たとえ、一生懸命アナリストとして精進して自信を持って買った銘柄でも、突然ビジネス環境が変わって成長できなくなることもあります。

 鉄則2には、「事業内容を知ってから投資する」を挙げます。これならば、個人投資家でも誰でも努力すればできます。投資しようと思っている企業のウェブサイトに入り、製品サービス内容やIR(投資家情報)を開いて、しっかり読んでください。専門家でなくてもわかるように、丁寧に説明してあることがほとんどです。

 何をやっているか十分に理解した上で投資しましょう。「これ、いいらしい」といううわさだけで投資するのは、やめましょう。流れが来ていてどんどん株価が上がっているときは良いですが、流れが止まって株価が急落したとき、何をやっている企業か知らなければ、どうしていいかわからなくなります。

 完璧に理解できなくても、ある程度、どんな企業かわかっていることが必要です。そうすれば、身の回りの変化や、新聞のニュースなど見ている内に、「すごい追い風が吹いている」とか、「成長ストーリーが崩壊した」とか理解できることもあります。

 以上、今日の話をまとめると、マザーズに投資するためには、「流れを読んで、流れに乗りましょう」。そして、「企業内容をきちんと理解して」から投資しましょう。

現在、波は来ていない

 東証マザーズ指数は年初から暴落しています。13週移動平均線を見ると、下向きです。マザーズ株に本格的に資金を投入するのは時期尚早と思われます。

 経験則では、大型の景気敏感株の上昇が一服して上値が重くなってくるころから、小型グロース株の上昇が目立ってくることがあります。それまでまだ数カ月かかるかもしれません。

 ただし、経済環境を見ると、マザーズのITグロース株に追い風が吹いています。これから第4次産業革命という構造変化が起こる中、マザーズから成長企業がたくさん出ると思います。

 成長株候補の株価が、大きく下がってきているのを見ると、少し買いを入れてみたくなります。流れを見つつ、投資タイミングを考えていきたいと思います。

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