週末のG7の行動計画は抽象的な内容となったが、金融機関への資本注入への方針が確認された。10月13日には欧州の銀行支援策が発表されたことを好感し、NYダウが936ドル高となるなど株式市場が急上昇した。その結果、世界的な株高を受けてこのところ株安=円高の相関関係にある外為市場では大きく円安に振れる展開となった。

世界の株式市場の象徴とも言えるNYダウは10月10日に1987年10月のブラックマンデーから2007年10月高値までの上げ幅の半値押し水準まで下落した。これだけの下落をみれば、10月10日の安値7882ドルでNYダウは少なくとも当面の底はつけた可能性があるだろう。また10月13日の 936ドル高は2007年10月からの下げ幅の23.6%戻しの水準である。この日足の大陽線の出現は相場が転換した可能性を示唆している。

株式市場のトレンド転換の示唆を受けて、今週の相場はこれまで売られすぎていた市場で戻りを試す展開となるだろう。最も市場のセンチメントはまだ疑心暗鬼である。戻り一巡の後は、上げの方向性を確認するテスト(戻り売り)が数回繰り返される。短期的にもまだ下げトレンドがまだ継続しているなら、今週の市場で相当な戻り売りの圧力がみられるだろう。NYダウの動向に注目したい。

NYダウ(月足)支持線(茶色)と抵抗線(赤色)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

市場の疑心暗鬼の材料は今後も事欠かない。今週は米金融機関の決算発表がある。悪いのは織り込み済みだが、市場予想と乖離した数字がでれば投資家心理が悪化するだろう。また10月21日にはリーマンのCDSの満期支払日が控えている。ここでCDS市場の実態がみえてくるが、決済がスムーズに行われるかを市場は注目している。(10月23日にはワシントンミューチュアルのCDS清算会も予定されている。AIGのCDS清算会は未定)公的資金が投入される欧米の銀行はともかく、GMなどの事業会社の資金繰りも気になるところだ。しかし、いずれにせよ目先の相場は買い戻し主導の展開となろう。そして、その後の下値テストで先の安値を維持できれば、徐々にリスク収縮の動きは緩和されていく。ノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は述べている。「ようやく政策が道理にかなったものになった。国家破綻は回避できるのではないか。しかし不況は長期にわたる」


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)と抵抗線


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)と抵抗線


(出所:石原順、ブルームバーグ)