現在、5回目のテーパータントラムが進行中…
テーパータントラムとは、量的金融緩和の縮小(テーパリング)に対する懸念により、金融市場がかんしゃく(タントラム)を起こすことである。米国の株式市場はテーパータントラム相場になっている。
米国株市場は2013年、2015年、2016年、2018年のテーパータントラム相場を乗り切ったが、現在5回目のテーパータントラムが進行中だ。
今回のテーパータントラムも米国市場は乗り切ることができると楽観的にみている米国株の運用者は多い。その根拠はジャブジャブ(過剰流動性)だ。米国の家庭はコロナ以降のバラマキにより過去2年間で180兆円近い預金残高(過剰貯蓄)を持っている。
また株式投資のための待機資金とみなされるMMF(マネー・マーケット・ファンド)の残高も500兆円に達している。
そんななかで、来週12月27日(月)からサンタクロース・ラリーのシーズンを迎える。サンタクロース・ラリー(2021年12月27日~2022年1月4日)は、1972年にエール・ハーシュが定義したもので、「1年の最後の5取引日と新年の最初の2取引日」を指す。この短い期間のラリーは、通常、S&P500種指数で+1.3%程度の利益をもたらしている。
米国株のシーズナリーチャート1985~2019年(リーマンショックの2008年を除く)
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NYダウCFD(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
米国株がテーパータントラムやインフレといった混乱から抜け出したシグナルとなるのは、現在、軟調に推移していくハイテク株が上昇トレンド相場に回帰するときである。米国経済は新たなテクノロジーを活用するハイテク企業の生産性向上によって回っているからだ。
アップル・マイクロソフト・エヌビディア・テスラの日足
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英国の予想外の利上げとオミクロン騒動の解釈
米国株相場との連動性が高いクロス円相場は、基本的に米国株次第の動きとなるだろう。豪ドル/円やNZドル/円は特にその傾向が強い。
豪ドル/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
NZドル/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
市場が驚いたのは、英国の予想外の利上げである。オミクロン騒動に関係なく利上げを敢行した。この利上げについては、「イングランド銀行は2回続けて言っていることとやっていることが違う!」と怒っている運用者も多かった。
さすがは007の国! 「二枚舌」というダブルスタンダードのアングロサクソンらしいインフレヘッジである。
ポンド/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
オミクロン騒ぎの最中、BOE(英国中央銀行)が利上げに踏み切ったことで、米国もオミクロンに関係なく淡々と利上げに踏み切るとみる市場関係者は増えている。
ドル/円の下値が堅いのも、米国はオミクロンに関係なくターボ・テーパー(テーパリングの加速)や利上げを行うだろうという観測が影響しているのだという。
ドル/円(日足)
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出所:楽天MT4・石原順インディケーター
テイラールールと米国の政策金利
テイラールールは、米国の経済学者ジョン・ブライアン・テイラーが1993年に提唱した、中央銀行が誘導する政策金利の適正値をマクロ経済の指標により定める関係式である。
米国の実際の政策金利との一定の整合性もあり、各国の金融政策決定過程で参考にする代表的ルール(よりどころ)の一つとされている。現在の米国のCPI(消費者物価指数)を使ってテイラールールに当てはめると、フェデラルファンド金利は9.15%が妥当な数値になるらしい。
いずれにせよ、米国のインフレの急上昇(一時的ではない)と失業の急落(完全雇用)を考えると、米国の政策金利は低すぎると言えるだろう。
トルコのエルドアン大統領によるインフレ下の利下げ政策が市場から非難されているが、インフレ率以下の人為的な金利を作って「金融抑圧政策」をやっているという意味では、日本も米国もトルコと同じである。
問題は、政府や中央銀行が金利変動のメカニズムを破壊するような社会主義的な操作をやっていることだ。やがて通貨制度を巻き込んだ大惨事になりかねない。
「テイラールール」でフェデラルファンド金利を求めると…
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エド・ヤルディーニの「戦慄のチャート」 米国の長期金利 VS 消費者物価指数
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12月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
12月22日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「2022年の投資テーマ:メタバースとEV」について話をしてみた。今中さんのイチ押し銘柄は!? ぜひ、ご覧ください。
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ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
12月22日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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