2022年の株式市場もやはり「コロナ」に左右されそう

 引き続き「コロナ」が株式市場における最重要事項になりそうです。(ここではコロナ禍における株式市場の動きを「コロナ相場」と表現します)

 2020年春のコロナ相場以降、相当な時間が経過し、認識できるようになったことも多くあります。まずは流れを把握しておきましょう。

  • コロナ急落(2020年2~3月)
  • 主要国による大規模財政出動/金融緩和による持ち直し(2020年4月~)
  • コロナワクチン完成による景気回復期待(2020年11月~)
  • 上昇一服と「デルタ株感染拡大」による停滞(2021年夏)
  • 国内感染収束による経済活動再開期待(2021年9月~)
  • オミクロン株出現と感染再拡大への不安(2021年11月~)

2019年12月27日~2021年12月22日の日経平均週足チャート

赤:移動平均(13週)
青:移動平均(26週)
緑:移動平均(52週)

 政治要因や企業業績などにも株式市場は左右されますが、やはりコロナが株式市場の最大の変動要因であることは明らかです。

 コロナワクチン完成前と後では日経平均の水準が大きく変化していることも一目瞭然です。コロナワクチンの効果に対する信用がその礎になっていると捉えていい事実です。

 2021年11月末に確認されたオミクロン株についても「既存のワクチンの効果は限定的かもしれない」とモデルナ社CEOが述べたことによって先行きに対する不安が高まりました。

「オミクロン株の重症化率はデルタ株に比べて低い」との検証が出始めても、不安が消失することはなく、欧米での感染拡大が進むにつれネガティブな反応を見せています。

 この動きからわかることは、株式市場の安定には「オミクロン株に対応したワクチン」「効果が認められる治療薬」が必要だということではないでしょうか?

 既存ワクチンのブースター接種でもオミクロン株感染は高い確率で防げるとのことですが、それについても現状では「懐疑」が残っていると思われます。多くの人が3回目ワクチン接種をして、その後の推移が明らかにならなければ株式市場の重しとなり続ける可能性もあります。

 その半面、コロナによる行動変容が追い風になった業種があることも事実で、半導体関連業種や一部のIT業種の好調は広く認識されています。株式市場では、コロナ相場初期のようなすべての業種に対する強いリスクオフが起こる可能性は低いでしょう。

景気敏感株とディフェンシブ株の特徴

 株式市場における投資家の行動は個別株において「物色」と表現されます。ある時は「景気敏感株が買われている(売られている)」、またある時は「ディフェンシブ株が堅調だ(軟調だ)」という具合です。

 景気動向に業績が左右されやすく、故に積極的な売買の対象になりやすいのが「景気敏感株」で、化学、鉄鋼、非鉄、機械、電機、精密、輸送用機器、商社、銀行、証券、不動産など多くのセクターがそれに該当します。

 代表的な銘柄としてソニーグループ(6758)トヨタ自動車(7203)日立製作所(6501)などを挙げることができます。

 対極に位置するのは比較的業績が景気動向に左右されにくい「ディフェンシブ株」で、水産、食品、医薬品、電力・ガス、電鉄などがそれに該当します。

 代表的な銘柄はキッコーマン(2801)味の素(2802)JT(2914)第一三共(4568)テルモ(4543)などですが、足元、コロナに関連する医薬品株の中には新薬開発期待によって大きく株価が動くものが見られ、ディフェンシブ株というよりは材料株寄りになっているものもあります。

 今の東京市場で完全なディフェンシブ株と言えるのは「食品」、「電力・ガス」くらいかもしれません。

 景気敏感株とディフェンシブ株は注目される時期が異なる場合がほとんどです。景気が回復・拡大する局面では景気敏感株が注目され、景気が後退する局面などにディフェンシブ株の優位性に目が向くと理解するのがいいでしょう。

 ただ、常に正反対の動きをするわけではなく、全体相場の急伸時にはどちらも買われ、急落時にはどちらも売られることになっています。

「コロナ相場」ではコロナが景気に与える影響が意識されることから、景気敏感株への注目度が高く、ディフェンシブ株が活躍するシーンはあまり見られていません。

 ディフェンシブ株の株価が目立って上昇するケースとして、景気動向がそれほど意識されず、個別株よりも指数などインデックス投資が主流となる時に、相対的に売買が少なく、売りものも少ないディフェンシブ株の株価が(結果的に)上昇するというケースが想定されます(=同じように買われると売りものが少ない銘柄がより上昇する)。

 その場合も、投資資金がディフェンシブ株を選好したというわけではなく需給的な要因がもたらした結果であり、それほど話題になることもありません。

 東京市場では景気敏感株の数が多く、物色の軸足はやはり景気敏感株となり、それらが上昇一服するような局面や、景気敏感株を手掛けにくい局面でディフェンシブ株が注目されることになると理解するのがよさそうです。

 ここでは「景気敏感株」「ディフェンシブ株」から10万円で投資できる銘柄を例として挙げておきます。

10万円で投資できる景気敏感株

 株価データは2021年12月22日終値ベース。

三菱ケミカルホールディングス(4188・東証1部)

 総合化学持株会社で、傘下に国内化学首位の三菱ケミカルや、田辺三菱製薬、三菱レイヨンなどを擁しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

東邦チタニウム(5727・東証1部)

 チタン製錬の大手企業で、「大阪チタニウム」と双璧です。航空機向けや淡水化プラントなど工業向けに供給しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

フタバ産業(7241・東証1部)

 自動車用マフラー最大手、プレス・溶接部品の総合自動車部品メーカーです。売上高の7割強はトヨタグループ向けです。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

10万円で投資できるディフェンシブ株

 株価データは2021年12月22日終値ベース。

日本水産(1332・東証1部)

 水産業界国内2位企業です。家庭用冷凍食品で知られ、売り上げの約半分を食品事業が占めています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

伊藤ハム米久ホールディングス(2296・東証1部)

 伊藤ハムと米久の経営統合で誕生した持株会社。食肉で日本ハムに次ぐ国内2位です。得意のハム・ソーセージではトップシェアを誇ります。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

東京電力ホールディングス(9501・東証1部)

 首都圏基盤の電力最大手企業です。国内電力供給の約3割を担っています。家庭向けガス販売にも参入、総合エネルギー会社化を目指しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)