後手に回った(ビハインド・ザ・カーブ)FOMCは追い詰められてタカ派に…
注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)は全会一致で、11月に開始したテーパリングの加速を決定。11~12月の150億ドル/月を2022年1月は300億ドルとし、順調にいけば、テーパリングは来年の3月に完了する計算だ。
金利予測分布図(ドット・プロット)の中央値では、FF金利誘導目標の引き上げを2022年に3回、2023年も3回予想していることが示されている。また、経済見通しも来年のインフレ率を2.6%と前回の2.2%から上方修正したほか、失業率は3.5%に低下すると予測している。「インフレは一時的」と唱えてきたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)にしては、かなりのタカ派的な内容と言えるだろう。
ドット・プロットの中央値が2022年の3回利上げを示したことは既に織り込み済みだったからか、ドル/円もNYダウも上昇というリスクオン相場となった。
ドル/円(日足)
NYダウCFD(日足)
なにはともあれ、FOMCという最大イベントを無難に通過したことで、「なんとか年内は相場が持つだろう」という声も多く聞かれた。今年も残りわずかとなったが、12月高に期待している株式市場関係者は多い。
ラリー・ウィリアムズの「2021年のNYダウ予測」12月後半は株高⁉
過去21年間の米国株市場の12月パフォーマンス(2000~2020)
だが、あまり楽観してばかりはいられないだろう。ここにきて米国のイールドカーブ(利回り曲線)はフラット化してきている。これは、市場がベア(弱気)マーケットに陥る前に起きる現象の1つである。
米国の利回り曲線(左)とS&P500株価指数の推移
ラリー・ウィリアムズの2022年予測
FRBは2017年から2019年にかけて出口(金融正常化)のチャンスがあったのにそれを利用できず、昨年からバランスシートを再び2倍にした。彼らは市場を暴落させない形で、4.5兆ドルのバランスシートを縮小することはできなかった。現在の9兆ドルになろうとしているバランスシートを縮小(アンワインド)するのは容易ではない。
FRBのバランスシートはGDPの42%の水準まで拡大
FRBはこの異常な金融政策をどうやって解消することができると考えているのだろうか? 2008年以降、出口に向かうチャンスは何度もあった。だが、いまだに金融緩和は続いている。
パウエルは議会証言と今回のFOMCで利上げ前倒しのアドバルーンを上げたが、2008年以降、10年以上にわたりずっとできなかったことを今回はどうやってできると思っているのだろうか? 歴史的に見ても、FRBが金融政策の正常化に本格的にかじを切るというのは幻想に過ぎないだろう。
米著名投資家のラリー・ウィリアムズは来年2022年の相場について、「2022年はインフレがマーケットを襲う年である。高インフレは株式市場を殺す。それは間違いない。そして間違いなくハイパーインフレを始めている。それは2022年にとってどんな意味があるのだろうか…? ベアマーケットのシグナルが発動する可能性は高い」と、『フォーキャスト2022年』(パンローリング)の中で述べている。
- 主要な経済指標は崩壊し始めている。
- 住宅着工件数は伸び悩み、クレジットカードの負債は増加している。
- また政治的にも大混乱に陥っている。
これらはすべて株価に影響を与える。まだ警告サインは点滅していないが、2022年はベアマーケットのシグナルが発動する可能性は高いだろう。
(ラリー・ウィリアムズ)
投資家は、米国株で利益が出続けている今はこれらの疑問を気にしないだろう。投資家がこれらの疑問を抱くのは、利益が出続けている今の時期ではなく、ゆがみの影響が明らかになった後である。だが、その時にはもう手遅れかもしれない…。
12月15日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
12月15日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、荒地潤さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「世界の利上げレース」、「FRBはこの異常な金融政策をどうやって解消することができると考えているのだろうか? 2008年以降、ずっとできなかった…今はどうやってできるのだろうか?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
12月15日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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