個別株投資を始めたい人に株式相場の見方をお伝えする「トレンドマーケットスクールTOKYO」。今週12月13日(月)から17日(金)は米国の金利政策が転換する激動の1週間になりそうです。

オミクロン型の不安は後退。39年ぶり物価高でも米国株は強い!

 先週の日本株は、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン型」に対する不安が後退したことで週前半は上昇しました。

 しかし、週後半は米国中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)の早期利上げなどが懸念され、ハイテク株を中心に下落しました。

 米国株は、堅調な動きでした。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数が10日(金)に史上最高値を更新、NYダウ(ダウ工業株30種平均)も週間で4%上昇しました。

 ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は、金利が上昇すると株価の割高さが嫌われることから9日(木)に1.7%安と急落しましたが、週間では3.6%上昇しています。

 一方、日経平均株価は週間で2.3%の上昇ですが、週後半は「米国株が堅調でも日本株は下落」という、いつもの“弱い”展開に逆戻りしました。

 ただ、10日(金)深夜の米国株市場では、注目された11月の米国CPI(消費者物価指数)が前年同月比6.8%上昇と39年ぶりの高い伸びになったにもかかわらず、上昇しました。

 それを受けて、13日(月)の日経平均株価は前週末比267円高の2万8,705円で始まりました。

 39年ぶりの物価高にもかかわらず、米国株が堅調だったのは驚きです。CPIの発表前には一部で前年比7%超えの物価高もあり得るといわれており、事前予想を下回ったことに市場が安堵(あんど)した、という見方が大勢です。

 また、オミクロン型の世界的な感染拡大で原油価格が下落したことで、今後米国のガソリン価格高騰に歯止めがかかること、物価上昇の主因だった中古車価格や宿泊、航空運賃がピークアウトしたことなどが好感された面もあるようです。

 ただ、オミクロン型検出で1.4%台に低下した米国長期金利や1ドル113円台まで急落したドルは、感染拡大への警戒感が弱くなっても、戻りが鈍くなっています。

 株価は金利や為替、原油価格などと複雑に影響し合いながら動きます。米国長期金利の低下は将来の景気後退懸念の表れかもしれません。米ドルの戻りの鈍さは、日本株には不安要素といえるでしょう。

米利上げのペースは?FOMCの「ドットチャート」に注目! 

 今週は、日本時間16日(木)未明に終了する米国金利政策の決定会合、FOMC(連邦公開市場委員会)が最大の目玉になります。

 11月30日の米国議会証言で量的緩和の縮小(テーパリング)時期の前倒しを表明し、金融引き締めを急ぐ“タカ派”に転換したパウエル議長がどんな発言をするのか?

 大方の市場予想は、量的緩和の終了時期を当初予定の6月末から3月末へ前倒し、2022年中に年3回の利上げ、というものです。

 それ以上の“タカ派”発言があった場合、世界の株式市場は再び乱高下に見舞われる可能性もあります。

 今回のFOMCでは参加した理事が今後の政策金利見通しを示す「ドットチャート」という表も公開されます。

 多くの理事が2022年中に3回、もしくは4回の利上げを予想するなど“タカ派”色の強い見通しになると株価急落も考えられるでしょう。

 15日(水)夜に発表を予定する米国の11月小売売上高も、インフレの一因といえる旺盛な米国の個人消費がどれだけ高止まりするかに注目が集まりそうです。

 一方、国内では、13日(月)に日本銀行が企業に景況感をヒアリングした「日銀短観」が公表されます。世界的な景気回復に沸く製造業、コロナ禍を克服して底打ちが見込まれる非製造業ともにいい結果になれば、株価の下支え要因になるでしょう。

 中国では9日(木)、経営難に陥った不動産大手、中国恒大集団の格付けが、格付け会社のフィッチ・レーティングスから一部債務不履行に認定されました。米ドル債券の利払いが確認できなかったためです。しかし、上海株や香港株は1週間を通じて堅調な展開となりました。

 中国当局が債務再編に乗り出したことで、同社の債務不履行問題は終息に向かう可能性も高まっています。

 何はともあれ、今週の最大の焦点は16日(木)未明に判明する米国FOMCの結果発表。

 テーパリング前倒しや早期利上げで米国株が急落するか、それとも「すでにそれらは織り込み済み」と見なされて上昇するかが一番の見どころです。

 米国株が上昇に転じれば、年末年始に向けてさらに続騰する可能性も高く、年末年始には日経平均の3万円台回復に期待がかかります。

 逆に急落するようなら、12月いっぱいは波乱含みの展開が続くでしょう。

 株式市場にとって、天下分け目のFOMCとなりそうです。