先週末の日経平均は2万8,545円、ジリ高の展開に期待したい
先週末12月17日(金)の日経平均は2万8,545円で取引を終えました。前週末終値(2万8,437円)からは108円高、週足ベースでも2週続けての上昇です。
先週は注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、前回のレポートでも、「FOMCの結果が株高のスイッチとなるか?」に注目していましたが、結果的に株高基調は一応継続できたと言えます。ただ、週末にかけて大きく失速する場面を見せたことで、後味は良くない印象となっています。
その点を踏まえ、まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年12月17日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、(1)「FOMCを前にした様子見」、(2)「FOMC直後の上昇」、そして(3)「週末の失速」という、3つの場面に分かれる展開でした。その中でも、今後の株価の動向を探る上では、とりわけ、(2)と(3)に注目する必要がありそうです。
具体的には、FOMC直後の16日(木)に(2)の場面が訪れました。この日は前日比で606円高となり、節目の2万9,000円台を回復したほか、ローソク足も大きな陽線を描きました。
株価と移動平均線との絡みでは、取引開始時点で25日・200日移動平均線を上抜ける一方で、75日移動平均線が上値を抑える格好となりましたが、全体としてはFOMCの結果を受けた株式市場の初期反応は良好だったと言えます。
ただし、翌17日(金)の取引では、失速してしまう(3)の場面となります。前日に上抜けた25日・200日移動平均線付近でスタートした日経平均は、2万8,500円あたりまで株価水準が引き下がっていきました。
さらに、16日(木)と17日(金)のローソク足の組み合わせは、ともにスタート地点の株価がほぼ同じでも、前者が株高、後者が株安に向かう、「振り分け線」と呼ばれる形になっています。
今回出現した振り分け線は、スタート地点がちょうど25日・200日移動平均線の水準ですので、売りへの意識を特に強めてしまう可能性があり、気をつける必要がありそうです。
とはいえ、チャートをもう少し大きく捉えると、現在の日経平均は「三角もちあい」を形成している最中で、まだその形が崩れていません。確かに、ここ2週間の日経平均は上げ下げを繰り返していますが、一応、短期の「フラッグ型(平行な線の範囲内での推移)」となっています。
図1の真ん中あたり、10月中旬から11月中旬にかけても、株価がフラッグ型で上げ下げしながら、三角もちあいの上限の線にタッチしている場面がありました。
足元の株価も、このフラッグ型の範囲内を維持し、ジリ高の展開に期待したいところではありますが、そのためには、直近で跳ね返された75日移動平均線越えがポイントになります。
日経平均値動きの目安
となると、目先の日経平均は75日移動平均線への意識を中心に動くことが想定されますので、前回のレポートでも紹介した移動平均線乖離(かいり)率をボリンジャーバンド化したものが、値動きの目安を考える上で参考になりそうです。前回は25日で見ましたが、今回は75日で見ていきます。
■(図2)日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2021年12月17日時点)
先週末17日(金)時点での75日移動平均線乖離率は▲1.96%で、▲1σ(シグマ)より少し下に位置しています。
先週はこの▲1σを0%ラインとのあいだでの推移が続いていましたが、今週以降の株価が動意づいた場合、今年の夏場あたりのように、▲2σからMA(中心線)までの範囲内で株価が動くことが考えられます。
17日(金)時点の75日移動平均線の値が2万9,106円、▲2σが▲4.62%、MAがプラス1.41%でしたので、目先の値動きの範囲は2万7,761円から2万9,516円あたりとなりそうです。
もちろん、この値は日々変わっていきますので、「2万8,500円を中心に、下値が2万8,000円割れ、上値が2万9,500円あたりまで」ぐらいの、ざっくりとした感覚で良いと思われます。
また、今週の株式市場は、海外市場ではクリスマスシーズンを迎え、週末の24日(金)に休場となるところが多いこともあって、比較的イベントの少ない週となります。
今週のハードルその1:FOMCに対する評価の織り込み直し
そのため、薄商いが想定され、「閑散に売りなし」の相場格言通り、株高の展開に期待したいところではありますが、越えるべき2つの「ハードル」が控えています。
そのひとつめは、「先週のFOMCに対する市場の評価の織り込み直し」です。図1では日経平均の動きを見ていきましたが、米国株市場の動きについても見ていきます。
■(図3)米NYダウ(日足)の動き(2021年12月17日取引終了時点)
まずは、NYダウ(ダウ工業株30種平均)です。FOMC後に3万6,000ドル台を回復するまで上昇しましたが、結局乗せきれず、週末にかけて失速していき、結局、FOMC前の株価水準を下回って週間の取引を終えています。
25日・50日移動平均線を下抜けたほか、11月8日の最高値を起点とする上値ラインの攻防が意識されそうです。ちなみに、25日・50日移動平均線のデッド・クロスも出現しています。
■(図4)米S&P500(日足)の動き(2021年12月17日取引終了時点)
S&P500も、FOMC後に株価が上昇し、11月22日につけた最高値を更新しそうな動きを見せたものの、超えることはできず、50日移動平均線や節目の4,600pあたりまで押し戻され、NYダウと同様に、FOMC前よりも株価を下げています。
■(図5)米NASDAQ(日足)の動き(2021年12月17日取引終了時点)
NASDAQもFOMC直後に株高で反応した後に失速しています。25日移動平均線を上抜けることができず、25日移動平均線の上値の抵抗(レジスタンス)傾向が続いたことによって、「ダブルトップ」が完成した状況です。
また、上値ラインと、1万5,000pで三角もちあいを形成しつつあるようにも見えますので、1万5,000p割れには注意が必要です。
以上のように、結果公表直後の日米の株式市場は上昇という初期反応を見せましたが、その後失速し、FOMCが年末株高へのスイッチにならなかったことになります。
今週以降の株価がもう一段階、上に押し上げるには、日経平均ならば75日移動平均線や2万9,000円水準の上放れ、NYダウは3万6,000ドル台乗せ、NASDAQの25日移動平均線上抜け、S&P500の最高値更新基調など、テクニカル的な節目を本格的に突破することが必要になります。
また、FOMCそのものに対しても、急ピッチなテーパリングやその後に控える利上げ観測によって、新興国が通貨防衛のために利上げに迫られたり、低格付け企業の債務負担増などの影響が懸念されるほか、インフレと景気認識、QT(金融引き締め)の議論など、今後は再評価の動きが出てくることになります。
今週のハードルその2:IPOラッシュ
そして、もうひとつのハードルは、今週から年末にかけての国内株市場でIPO(株式新規公開)ラッシュを迎えることです。
今週は24銘柄が新規上場となり、そのうちの19銘柄はマザーズ市場に上場しますが、そのマザーズ指数は足元で年初来安値を更新するなど、あまり環境は良くありません。
■(図6)マザーズ指数(週足)の動き(2021年12月17日取引終了時点)
IPO銘柄が多いこと自体は歓迎すべきことですが、あまりにも集中してしまうことで、投資資金の方向感が慌ただしくなるほか、薄商いが予想される中ではイマイチ盛り上がらず、相場全体のムードまで冷やしかねない展開には注意したいところです。
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