株式投資には守りも必要。逆境に強そうな企業に注目

 株式市場を取り巻く環境はいつも順風満帆というわけではありません。新型コロナウイルス、これまで何度も訪れた金融不安、海外ではテロや軍事的緊張など、強い逆風に見舞われることもあります。

■逆風相場のストレス 軽減するには?

 株価が日々変動することを頭では理解していても、保有する銘柄が急落すれば、誰もが心配になるものです。値下がりしない株が理想的なのですが、そんな銘柄はありません。

 しかし、値崩れを起こすリスクが小さそうな銘柄を探すことならできます。市場全体で10%値下がりするのを横目に、自分の保有株が3%程度の値下がりにとどまれば、逆風相場のストレスも軽く済みそうです。

 市場全体が大幅に下げた場面がお目当ての銘柄を安く買うチャンスになる、ということが、過去の相場で何度となくありました。買いのチャンスをつかむためにも、市場を取り巻く状況や株価を冷静に観察し、手持ち銘柄が大幅に下落するリスクを避けたいものです。

■財務安定、無借金経営に注目

 そこで、注目したいのは財務状態が安定した銘柄です。本業で黒字経営を続けるだけでなく、保有する現金や資産が厚い企業のことです。

 業績が悪化すると配当予想を引き下げたり、配当を取りやめてしまうリスクがありますが、手元の現金など資産が豊富にあれば、背伸びして配当を維持することが可能です。多少の逆風でも、経営が揺らがないのです。

 手元の現金は、決算短信のうち貸借対照表の「現金・預金」「利益剰余金」や、キャッシュフロー計算書の「現金および現金同等物」でチェックできます。

 また、無借金経営も参考になる要素です。少ない元手に多額の借入金を足して事業を展開する積極経営企業は面白い投資先ですが、日々の運転資金から将来に備えた設備投資費用まで自らの資金でカバーする超堅実企業も魅力的です。購入予算の安い銘柄を選べば、積極経営企業と超堅実企業のどちらの株も買い、リスク分散することも可能です。

■隠れた値上がり要因あり

 現金など資産が豊富な会社には、特有の値上がり要因が隠れていることもあります。利益の還元を求める株主の圧力です。

 かつて会社に対して配当の増額を要求するのは「モノを言う株主」「アクティビィスト」などと呼ばれる投資ファンドがもっぱらでした。しかし、現在では投信運用会社や年金基金なども企業に対して積極的に利益の還元を働きかけています。

 背景には、2014年に金融庁が制定した「スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)」があります。機関投資家とは、誰かのお金を大量に預かって運用する会社や団体のことです。

 スチュワードシップ・コードに法的な拘束力はありませんが、今では運用業界の主流です。この指針の中で、運用会社は投資先企業の経営を監視し、お金を預けてくれた顧客の利益を守るよう求められています。

 毎年の利益を積み上げるだけで配当を増やさず、設備投資や買収など成長のために使う様子もない「貯め込みすぎ企業」は、株主の圧力で配当金を増やしてくる可能性があります。

 以下の銘柄は、三つのポイントでセレクトしました。ぜひ参考にしてください。

・財務状態が安定している
・純損益の黒字が続いている
・15万円台以下で買える

■初めてでも選びやすい財務安定株10選

※株価などのデータは12月9日現在。

グリー(東証1部・3632)
株価 810円
いくらから
買える?
8万1,000円
財務安定ポイント 年商超える現金・預金
どんな会社? スマホゲームを展開。ネット上の仮想空間「メタバース」にも意欲。2021年9月末時点の利益剰余金は1,248億円、現金・預金は915億円と、2021年6月期の連結売上高567億円を大幅に上回る水準。大型買収への期待もあるが、貯めたお金の行方は今のところ未定だ。
カラダノート(東証マザーズ・4014)
株価 1,370円
いくらから
買える?
13万7,000円
財務安定ポイント​ 有利子負債ゼロ
どんな会社? IT(情報技術)を駆使したマーケティング支援会社。健康管理用の無料アプリを開発・運営する。情報が不足しがちな妊娠や育児分野のコンテンツ配信に強く、子育て支援関連銘柄でもある。昨年10月に上場したばかりだが、有利子負債ゼロ。配当開始が待ち遠しい。
鎌倉新書(東証1部・6184)
株価 741円
いくらから
買える?
7万4,100円
財務安定ポイント​ 自己資本比率9割超
どんな会社? 葬儀や仏壇、墓など「終活」関連を幅広く扱うポータルサイトを運営。サイトを訪れたユーザーを業者につなぐことで収益を生む。大きなお金の動く相続分野も育成中。メガバンクや郵便局、地方自治体との提携など集客アップに積極的。
大和冷機工業(東証1部・6459)
株価 1,238円
いくらから
買える?
12万3,800円
財務安定ポイント​ 年商超える現金・預金
どんな会社? 業務用の冷凍庫や冷蔵庫を製造。有利子負債ゼロの一方、現金・預金は2021年9月末現在で558億円と、2021年12月期の単体売上高予想422億円を上回り、受注が減っても強い財務基盤があるといえる。2021年1-9月期の営業利益は、前年同期比で約3割増加した。
菊水電子工業(ジャスダック・6912)
株価 1,295円
いくらから
買える?
12万9,500円
財務安定ポイント​ 大幅減益でも減配小幅の底力
どんな会社? 電子計測器や電源機器を製造する電機メーカーで、電気自動車関連が伸びている。有利子負債ゼロの堅実経営を続けてきた。コロナ禍に見舞われた2021年3月期は減収減益だったが、配当は前の期比3円減の20円と小幅の減配で済み、環境悪化に強い。
信越ポリマー(東証1部・7970)
株価 1,096円
いくらから
買える?
10万9,600円
財務安定ポイント​ 有利子負債ゼロ
どんな会社? 親会社で半導体シリコンウエハー世界最大手の信越化学工業に、ウエハー容器を供給する。有利子負債ゼロの堅実経営。2022年3月期末の配当予想を10月に引き上げた。2021年9月末の現金・現金同等物は452億円と2021年4-9月期の売上高を上回る水準。
テーオーシー(東証1部・8841)
株価 627円
いくらから
買える?
6万2,700円
財務安定ポイント​ キャッシュは年商の2倍
どんな会社? 東京都心部のTOCビルなど流通関連ビルを保有。東京・品川区の本社ビルを建て替え、2027年に地上30階建ての高層ビルを竣工(しゅんこう)する計画。2021年9月末で現金・現金同等物は329億円と、2022年3月期連結売上高予想のほぼ2倍にあたる高水準。大幅に増配する余地が残っている。
ゴールドクレスト(東証1部・8871)
株価 1,597円
いくらから
買える?
15万9,700円
財務安定ポイント​ 不動産業界の好財務企業
どんな会社? 首都圏で展開するマンション分譲会社。ファミリー向けに強い。2021年9月末の有利子負債は約500億円と利益剰余金の半分ほどにとどまり、借金が多くなりがちな不動産業界にあって好財務体質の企業として知られる。
日本テレビホールディングス(東証1部・9404)
株価 1,216円
いくらから
買える?
12万1,600円
財務安定ポイント​ 「貯め込み」進む一方
どんな会社? 読売新聞系の民放大手。高視聴率を武器にテレビCMの収入が増えている。2021年9月末の利益剰余金は6,550億円で実質無借金に近い。年35円の安定配当を続けてきたが、利益に比べて配当は少なく、「貯め込み」が進む一方だ。
日本BS放送(東証1部・9414)
株価 1,109円
いくらから
買える?
11万900円
財務安定ポイント​ 実質無借金、増配要求も
どんな会社? 全番組無料の衛星放送「BS11(イレブン)」を運営し、アニメやスポーツ番組などが人気。家電量販店ビックカメラの子会社。2021年8月期末の有利子負債は5億円と実質無借金に近く、投資ファンドから配当が少ないとして大幅増配提案を受けたが会社側は拒否した。