1.欧州では顕著にコロナが再流行している 欧州では全域ではないものの新型コロナウイルスの感染が再拡大

 わが国では新型コロナウイルスの新規感染は急速に減少しており、東京都では1日当たりの新規感染者数が数人(1桁)という日も出ています(2021年11月25日現在)。「コロナは終息したのか?」とも思える状況ですが、地球の裏の欧州では全域ではないものの感染が再拡大しています。

 図表1は「Our World in Data」による地域ごとの感染状況ですが、欧州の1日当たり新規感染者数は100万人当たりで400人を超えており、今年の中では最高水準を更新しています。また、1日当たり死者数も増加しており、今年の最高水準には達していませんが、予断を許さない状況にあります。

 一方、他地域に目を転じると、次に多いのが北米ですが、欧州のような再拡大の勢いはなく、水準も同200人弱と欧州の半分以下、南米は同40人ほど、わが国が属するアジア地域は同20人弱、そして、アフリカは同2人と、欧州が抜きんでて感染状況が厳しいことが分かります。

 ちなみに、欧州でも、スペインの同100人、ポルトガルの同200人と、少なめの国もあり、コロナが欧州全域で猛威を振るっているわけではないようです。

[図表1]地域別の新型コロナウイルスの感染状況の推移

期間:2020年12月1日~2021年11月20日、日次
各地域の(c)は1日当たり新規感染者数(100万人当たり)、(d)は1日当たり死者数(100万人当たり)
(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

2.コロナ感染上位国は欧州一色 国別にみると、欧州の感染再拡大の状況はさらに厳しい

 図表2は、国別に見た新型コロナウイルスの感染状況とワクチン接種完了率です。人口が約500万人以上の国を対象とし、11月20日現在でランキングにしてみましたが、上位10カ国は全て欧州諸国です(スロバキア~ドイツ)。

 11月22日から再度のロックダウン(都市封鎖)に入ったオーストリアは第2位で、1日当たりの新規感染者数(100万人当たり)が1,400人を突破しています。これは、わが国で最多の新規感染者数を記録した2021年8月25日の184人(7日間平均)と比較しても、1,000人を超えるスケールの大きさが分かると思います。

 一方、前述したように、ポルトガルやスペインの感染状況は欧州の中では少なめで(日本よりははるかに多いですが)、欧州全域で新型コロナウイルスの感染が激しく再拡大しているわけではないようです。

 新規感染者数の差異がこれほど大きい原因は明確には分かっていませんが、ポルトガルやスペインのワクチン接種完了率が80%を超えており、左側に並ぶ上位国よりもやや高いことは、事実として見ておいても良いかもしれません。

 また、スロバキアやチェコはこれまでの累計感染者数が人口比で20%近くに達しており、そもそも感染が広がりやすい国なのかもしれません。オーストリアは累計感染者数こそ11%強と欧州平均並みですが、この両国に隣接している地理的要因のために、経済活動正常化の影響が出ているのかもしれません。

[図表2]新型コロナウイルス1日当たり新規感染者数(人口当たり)の主な上位国

時点:(新規感染)2021年11月20日、(ワクチン接種率)2021年11月20日時点で判明している直近日
人口が約500万人以上の国の中で、新型コロナウイルス1日当たり新規感染者数上位国(スロバキア~ドイツ)、ポルトガル、スペイン、日本は上位国ではない。
(出所)Our World in Dataを基に野村アセットマネジメント作成

3.感染状況と株式市場のパフォーマンスは逆説的 ウィズコロナ政策は感染を再拡大させる一方、経済の活発化が株式市場に好影響をもたらす可能性がある

 図表3は、地域別に見た株式市場の年初来のパフォーマンス状況です(現地通貨ベース)。マーケットの動きは二極化しており、新型コロナの新規感染者数が多い欧州や北米のパフォーマンスが良く、感染がほぼ収まっていると見られるアジアやアフリカが小幅な上昇にとどまり、ワクチン接種先進国であるチリなどが含まれる南米のパフォーマンスはマイナスとなっています。

 確かに、欧州での感染再拡大は足元で急拡大しており、マーケットもごく足元の動きでは調整含みとなっています。しかし、欧州とアジアの年初来パフォーマンス格差は15%ほどあり、格差は大きいと考えて良いと思います。

 以上から想像できることは、既にマーケットは新型コロナウイルス・パンデミックから離れ始めており、コロナ感染が多くてもそれほど問題視しない「ウィズ・コロナ」の時代を織り込み始めたのではないかと思います。

 以前も紹介しましたが、欧州ではワクチン接種拒否者の割合が相対的に多く、ワクチン接種率が十分に高まらないことで感染が広がっていますが、接種者は感染したとしても重症化しないという事実や、来年には経口治療薬もできるような話もありますし、マーケットはコロナを大きな問題と捉えなくなってきたのかもしれません。

 長らく悩みの種であった新型コロナウイルス・パンデミックも、「マーケット」という観点で見れば、そろそろ卒業というステージに入っていくのかもしれません。「コロナが広がっているから買えない」とは言い切れないことを十分に頭に置いて投資判断をしていく必要があるでしょう。

 ということで、今回は、「ウィズ・コロナ」の時代の世界経済の回復を見据えて、欧州株と北米株がおおむねセットになった外国株式ETF(上場投資信託)を挙げておきます。

[図表3]地域別株式市場の推移

(期間)2020年12月31日~2021年11月24日、日次
全てMSCI株価指数:アフリカ=MSCI South Africa Index、アジア=MSCI AC Asia Pacific Local、欧州=MSCI Europe Local、北米=MSCI North America Index、南米=MSCI EM Latin America Local
(出所)野村アセットマネジメント作成

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2513)
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信(証券コード:2514)

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