筆者は外為市場が相場の重要な分岐点に到達したとの感触をもったことから、今週の月曜日に「相場の分岐点」というレポートを書いた。「現在、外為市場は重要な相場の分岐点に差し掛かっている。ドル/円相場は100~103円のレンジを離れ、上値を試行するあらたな局面を迎えている。また、ユーロやスイスも今週の動きで当面の方向性が決まりそうだ」としたが、4月24日のNY市場でドル/円は104円54銭まで上昇、ユーロ/ドルは1.5638まで下落した。

第17回の「G7と金融機関のスケールダウン」で「4月17日のマーケットでは、4月30日のFOMCでの0.25%の利下げ(FF金利2.0%)で年内は打ち止めという見方が半数を占めている」と述べたが、4月24日のウォールストリートジャーナルには「来月以降FRBは利下げを休止する」という観測記事が掲載された。大幅利下げ後の金利高修正を見込んだ債券売り=米金利上昇が現在のドルの修正高をサポートしている。

米2年国債金利(赤)ドル/円(青)の推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

米国ではコマーシャルペーパーの残高が4週連続で減少し1兆8,000億ドル台割り込む事態となっている。また4月24日のウォールストリートジャーナルの記事では「リボルビングライン」が次のクレジット問題として浮上しているようだ。(経営危機に直面する企業が取引先金融機関からのリボルビングクレジットライン=与信融資枠を利用する頻度が高まり、あらたなクレジットリスクが大手金融機関で問題となっている)このように決して状況は好転したわけではないが、4月24日のロイターの記事「金融混乱一服の背景にヘッジファンドのクレジット買い、「逆張り」ポジションで大勝負挑む」にあるように、一部のヘッジファンドは債務担保証券(CDO)などのクレジット商品を買いあさっているようである。マーケットの総悲観は概ね相場の底であることが多い。パニックや危機はヘッジファンドにとって絶好の収益機会なのである。経済のファンダメンタルズに変化はなくても、相場の売られすぎの修正は大きな収益を生む可能性がある。S&Pが今後一年間でジャンク債のデフォルト率が現在の1.4%から4.7%に上昇すると予測しているなかで、マーケットの底流ではこのようなリスクテイクの動きが出てきていることに注目したい。ドルもまた短期的には売られすぎているからだ。

ドル/円(日足)の長期周期の底 5年周期(赤)・2年周期(青)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円相場は8月あたりまで予断を許さないものの、3月17日安値95円78銭で2年周期の底をつけた可能性が大きくなっている。このシナリオが正しければ、大局的な円高相場に変化はないものの、周期的な揺り戻しによるドルの修正高が期待できる局面にある。

短期周期からみて連休前まではドル高周期である。この先105円に向かっては大型連休を前にした本邦輸出企業の予約が想定されることから需給面でも不安が残る。したがって逆指値の利食いオーダーやストップオーダーを置いて相場についていきたい。

以下は4月24日現在のドル/円、ユーロ/ドル、ドル/スイス、豪ドル/円の標準偏差ボラティリティの推移である。先のドル/円の95円78銭やユーロ/ドルの1.6018がドルの長期周期の底であるなら、この先1ヵ月程度は基本的にリバウンドとなる可能性は大きい。ボラティリティレベルからみて相場の仕掛け時であるが、この動きが大きなトレンドになるかどうかは不明であり今後の推移を見ながら柔軟に対処したい。

ドル/円、ドル/スイスは目先のドル高方向を示唆している。ユーロ/ドルの標準偏差ボラティリティは横這いで方向性がはっきりしないが、おそらく先行しているドル/スイスに追随するだろう。ユーロに関しては、ユンケル・ユーログループ議長が「外貨準備を大量に保有する国はその通貨構成を変更すべきではない」と発言するなど相場に政治が介在してきた。外為市場の歴史を振り返れば、G7後は「政策に逆らわない」のが賢明のようだ。独IFO景況感指数が悪化しているドイツから通貨高牽制(インフレ重視であるため考えにくいが)があれば、ユーロは修正安に向かうだろう。今後、ドイツの要人発言には注目したい。

ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/ドル(日足)標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/スイス(日足)標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティと売買シグナル[買い=緑・売り=赤]


(出所:石原順、ブルームバーグ)