つみたてNISAが市民権を得ている!
読者の皆さんは、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)や、つみたてNISAを使っていますか。特に最近は、FP(ファイナンシャルプランナー)の方などが、税金面で有利としてiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)とともに、つみたてNISAを勧めていることも多く、関心を持つ人が増えている印象です。
筆者が株式投資を始めた時は、まだまだ株式市場は「鉄火場」という雰囲気がありましたが、今では自助努力による老後資金の形成という目的で投資を始める方がどんどん増えてきています。株式投資に関する有益かつ実践的な知識・情報の提供に日々努めている筆者としてもうれしい限りです。
そして、特に初心者や初級者の方には、どちらかというとNISAよりつみたてNISAの方が市民権を得ているように感じます。
投資だから当然リスクもある!
ところで、NISAやつみたてNISAを活用することは投資することですから、当然、リスクがあります。最も大きなリスクが、投資した株式や投資信託が値下がりし、元本割れすることです。
NISAもつみたてNISAも、利益に対しては非課税ですが、損失が生じた場合の手当は何もなされていない点に注意が必要です。
FPなどの専門家の方の多くも、この点にはあまり深く突っ込んで話していないようですが、投資である点は変わりありませんから、NISAやつみたてNISAを使わない場合の投資と同様のリスクがあることは忘れてはなりません。
なお、2024年からNISA制度は大きく変わることになっています(年間非課税枠120万円→積み立て部分20万円+一般枠102万円の2階建てへなど)が、本コラムでは改正前の現行制度でご説明します。
NISAなら値下がりリスクをある程度回避できる
実は大変お恥ずかしながら、筆者もNISA口座で購入した株式の中に、値下がりして含み損を抱えているものがいくつかあります。では、これをがっかりしながら、ただ我慢しているのかといえば、そんなことはありません。
NISA口座を使わない場合の、筆者の通常の投資手法は株価が値下がりして下降トレンドに転じたら、その株式自体を売却してしまいます。しかし、NISA口座で購入した株式を売却したら、その後は非課税の恩恵を受けることができません。
そこで筆者が行っているのは、NISA口座で購入した株式が値下がりして下降トレンドに転じたら、株式を保有したまま、それと同じ株式を同じ株数だけ空売りして、それ以上の値下がりをヘッジするという方法です。
こうすれば、株価が大きく値下がりしても、空売りによる利益で約80%はカバーできます。利益に対して20.315%の税金と、空売りのコストがかかるため、値下がりを100%ヘッジすることはできません。でも、80%のヘッジができれば、NISA口座での利益非課税の恩恵を考えれば、悪くないと思います。
したがって、筆者がNISA口座で購入するのは、原則として空売りができる銘柄に絞っています。新興市場の小型株などは、空売りができませんので注意してください。
つみたてNISAは損失のヘッジがしにくい
つみたてNISAは、1年あたりの積立額がそれほど大きくないので、最初のうちは投資した投資信託の価格が下がっても、金額的に多大なダメージは受けにくいものです。しかし、積立期間が長くなると、累計額も膨らみますから、投資信託の値下がりによる損失も大きくなってしまう可能性があります。
ところが、つみたてNISAは上場していない投資信託に投資しますから、通常のNISAのように、同じ株式を空売りしてヘッジすることが難しいのです。特に、インデックスファンド(パッシブファンド)ではなくアクティブファンドの場合は、それと同じ動きをして、かつ空売りできるものがありませんので、値下がりのヘッジがしにくくなります。
したがって、ETF(上場投資信託)を空売りしてヘッジするなどの次善の策で対応するしかなさそうです。これをするだけでも、ある程度のヘッジ効果はあるはずです。
なお、インデックスファンドであれば、それと同じインデックスを投資対象としたETFがあることが多いので、それを空売りすればヘッジすることができます。
また、数は少ないですがETF自体をつみたてNISAの運用商品として選択できるようなので、その場合は全く同じETFを空売りすればヘッジが可能です。
株式投資や金融資産運用で個人投資家が失敗する最大の要因は、投資した株式や投資信託が大きく値下がりすること。これはNISAやつみたてNISAを活用して投資していても同じように起こり得ます。
確かに税制面での優遇措置がNISAやつみたてNISAの魅力ではありますが、大きく値下がりする可能性に備え、しっかりと対応できる態勢を整えておきましょう。
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