コロナウイルスの変異株の深刻化、米国のインフレ率が止まらなくなっての金融引締め(テーパリング終了&利上げ)、脱炭素、中国の当局動向など、想定されるリスクも盛り沢山の2022年。強気で攻めることができた2021年と比較すると、投資戦略の難易度が高まることを想定しています。

 なかなか手を出しづらいけど、ポイントでなら、損してもダメージが少ないと思える銘柄のうち、バリュー株代表として三井倉庫ホールディングス(9302)、グロース株代表としてエムスリー(2413)を取り上げて、私ならどっちを買うかについて解説していきたいと思います。

 また、後半では、資産運用は投資信託のみという方向けに、過去3年の動向を分析し、今後のおすすめ投信を解説します。2022年の皆さんの投資戦略のヒントになれば幸いです!

三井倉庫ホールディングスとは?

 三井倉庫ホールディングス(以下三井倉庫)は、創業以来、100年以上にわたって倉庫業で培ったノウハウをベースにして、幅広い事業を展開している企業です。現在では国内外の製造工程におけるメーカー物流、陸・海・空における輸送・保管・配送など、物流の川上から川下まで幅広いニーズに対応できる物流機能を総合的に提供しています。

三井倉庫のポジティブ材料

 三井倉庫のポジティブ材料は、なんといっても、指標面・バリュー株としての割安さです。

 三井倉庫の実績PBR(株価純資産倍率)は0.82倍、予想PER(株価収益率)は4.83倍、配当利回り2.41%、PSR(株価売上高倍率)0.22倍、EV/EBITDA倍率(買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す値)4.75倍、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)2.55倍であり、割安な水準となっています(各指標は2021年11月30日時点・楽天証券より。以下同様)。

 物流事業では、倉庫保管・荷役、港湾作業・運送、海外における物流サービス・複合一貫輸送、航空貨物輸送、サード・パーティ・ロジスティクス、サプライチェーン・マネジメント支援業務、陸上貨物運送などを展開しています。また、不動産事業も行っており、三井倉庫箱崎ビルの賃貸などを行っています。海外における売上高が全体の約25%を占めており、グローバル企業へと着実に成長しています。

三井倉庫のネガティブ材料

 三井倉庫の今期の売上高・営業利益・経常利益は、会社予想と比較するとコンセンサスが低くなっています。また、コンセンサス予想では2023年3月期の売上高・営業利益・経常利益・純利益は2022年3月期より低下する見通しとなっており、今後、業績・成長に陰りが出るリスクが存在しています。

三井倉庫の過去-今年-未来の売上高、営業利益、経常利益の推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。売上高・営業利益・経常利益のいずれも着実に成長していることが分かります(まつのすけ)。

三井倉庫の営業/投資/財務/フリーのキャッシュフロー推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。営業CF(キャッシュフロー)・形状CFが黒字で絵に描いたような優等生。財務CFは赤字で積極投資、現状維持ではなく成長に向けた投資意欲も垣間見えます(まつのすけ)。

三井倉庫の経常利益/純利益、CFマージン/ROE推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。意外とROE(自己資本利益率)は高く、キャッシュフローの側面でも大局的には右肩上がりの傾向。各種データからは優良バリュー株と評価できます(まつのすけ)。

エムスリーとは?

 エムスリーは、ソニーグループの関連会社で、日本最大級の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営しています。国内医師の大部分となる30万人以上が会員となっており、多面的な医療情報などを無料で会員に提供しています。

 エムスリーは、製薬会社向けマーケティング支援・治験支援などで利益を上げています。海外にも積極的に展開しており、全世界で約600万人の医師会員基盤を保有しています。

エムスリーのポジティブ材料

 エムスリーの2022年3月期上期の連結業績は、売上収益が前年同期比+30%の976億円となり、営業利益が+2.6倍の619億円と絶好調です。中国IPO(新規公開株)関連などの株式評価損益を除外すると、営業利益は+33%の318億円です。

 製薬会社向けのマーケティング支援が堅調となっており、ワクチン接種支援もプラスに寄与しています。海外事業の売上高は+33%、利益は7.5倍と絶好調となっています。

 製薬会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)強化、予約・問診・決済など医療現場で必要となる機能を集約したクラウドサービス「エムスリーデジカルスマート診療」の提供など、今後もさらなる成長に向けて施策が講じられています。

エムスリーのネガティブ材料

 毎年のように売上高が拡大しており、一見押せ押せのポジティブ企業に見えます。ただし、エムスリーは典型的なグロース株であり、成長性が高い半面として株価が将来の成長まで織り込んでおり、バリュー面では割高な状況です。

 PBR17.99倍、予想PER57.67倍、配当利回り0.20%、PSR25.27倍、EV/EBITDA倍率58.92倍、PCFR91.47倍となっています。今後、成長が鈍化した場合は株価が大きく下落するリスクがあります。

エムスリーの過去-今年-未来の売上高、営業利益、経常利益の推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。売上高・利益の両方が美しい右肩上がりで、グロース銘柄の典型例です(まつのすけ)。

エムスリーの営業/投資/財務/フリーのキャッシュフロー推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。営業キャッシュフローはプラスで一般論としては安心感があります。投資に積極的で今後も高い成長を期待できます(まつのすけ)。

エムスリーの経常利益/純利益、CFマージン/ROE推移

出所:各所データよりまつのすけ作成。インターネット企業らしく、利益率・ROEはとても高く、高収益性を発揮しています(まつのすけ)。

まつのすけの決断!自分ならどっちを買うか

 成長性が高いのはエムスリーですが、指標面では割高であり、決算内容が悪化した場合、株価が半分になってもおかしくありません。月足チャートでは2021年1月にピークアウトして、下降トレンドに入っており、長期投資の観点では、下げ止まって反発する流れになるまで待つのが無難です。

 三井倉庫はバリュー銘柄ながら成長を続けてきましたが、コンセンサスでは2023年3月期は減収減益の予想となっており、成長鈍化のリスクがあります。

 エムスリーは成長性、三井倉庫は割安さに魅力がありますが、どちらもボラティリティが高く、現金で買うと数万円はあっという間に動くので落ち着かないという方も多いと思います。三井倉庫も意外と値動きは荒いです。

 私としてはバリュー株投資の観点で、各指標が割安な三井倉庫に魅力を感じます。低PBR・低PER・その他指標も割安なバリュー銘柄で、下値は限定的でアップサイドもあります。

 将来が不透明な局面で役立つのがポイント投資です。元手がポイントなので一時的に評価損になった時の精神的ダメージが現金よりは小さいという方が多いでしょう。リスクの大きさや市場が読めないなどの場合以外でも、買うかどうか迷っている銘柄があれば、まずはポイント投資でお試し買いしてみる、というやり方は有効です。ポイントをうまく使って、後悔のない投資戦略で2022年の荒波に、船出してみてください!

※この判断は、2021年12月時点のまつのすけの判断です。皆さんが2022年度に投資する際は、必ず決算や財務状況を確認し、熟考して判断して購入してください。

ポイント投資で買うなら?おススメの投資信託はコレ!

 私がポイントで投資して現在も保有している投資信託のパフォーマンス(単位:%)は下表の通りです。過去3年のパフォーマンスが高い順で表示しています(データは2021年11月26日時点)。

投資信託名 6カ月 1年 3年
iFreeNEXT FANG+インデックス 51.36 49.57 48.77
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス 56.95 48.74 36.35
netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし) 41.16 37.99 32.88
アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし) 46.92 44.88 29.93
キャピタル世界株式ファンド 29.83 37.23 25.22
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 38.26 44.65 23.45
楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド(全米株式)) 35.32 43.37 23.38
<購入・換金手数料なし>ニッセイ 外国株式インデックスファンド 29.56 40.20 20.78
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) 24.63 36.54 19.52
楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)) 21.94 34.83 18.45
野村インデックスファンド・米国株式配当貴族(Funds-iフォーカス米国株式配当貴族) 20.61 34.74 17.18
楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド 20.27 38.17 13.50
ひふみプラス 5.68 5.73 11.96
楽天・新興国株式インデックス・ファンド(楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)) ▲0.77 17.29 11.87
iFreeNEXT NASDAQ次世代50 29.92 --- ---

 2022年以降はコロナウイルス感染が再び深刻化して、低インフレ・低金利の状況が続いたら、IT銘柄のウエートが大きいNASDAQ100やFANG+に連動する投信や、アライアンス・バーンスタイン・米国成長株やnetWIN GSテクノロジー株式ファンドのパフォーマンスが引き続き良くなると予想しています。

 一方、経済が正常化して金利上昇が継続したら、バリュー株がグロース株をアウトパフォームする展開になる可能性もあります。

 無難なのは全米株式、S&P500に連動する投信です。ポイント投資で攻めるならば、NASDAQ100やFANG+、過去インデックスをアウトパフォームしている期間が長いアクティブ投信を組み入れるコア&サテライト戦略もおすすめです。

 私自身としては来年も米国株の相対的な優位性が続くと考えており、をつけた、全米株式、S&P500、NASDAQ100、FANG+、上表のアライアンスnetWINへ重点的に投資したいと考えています。