※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]NISAとつみたてNISA どっちを使う?上級者向けアドバイスも
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資産形成は、非課税口座で

 中長期の資産形成には、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)またはつみたてNISAなど非課税貯蓄口座を活用するべきです。よくわからないと放っておくのはもったいないことです。

 楽天DI(読者の皆さまへのアンケート調査)で、2020年および2021年のNISA・つみたてNISA利用状況についておうかがいし、4,800名を超える方から回答をいただきました。結果は、以下の通りです。

「2020年にNISA、つみたてNISAをしたか?」「2021年にNISA、つみたてNISAをしたか?」に対する回答(2021年4月時点)

出所:2021年4月楽天DI

 年々利用者が増えていますが、4月時点でまだ利用していない人が24.5%いました。20歳以上の国内居住者ならば、誰でも利用できる制度なので、利用した方が良いと思います。

 課税口座(特定口座)で投資して、仮に将来100万円の利益(値上がり益+金利・配当収入)が得られるとします。分離課税選択の場合、利益から約2割(正確には復興所得税を合わせて20.315%)の税金(源泉税)が差し引かれます。

 NISAで投資すれば非課税なので、まるまる100万円受け取れます。その差は大きいです。

NISAとつみたてNISA概要比較

 NISAには、2014年から始まった従来型「NISA」と、2018年から新たに始まった「つみたてNISA」の2種類があります。1年間にどちらか1つしかできません。

 NISAをやる年は、つみたてNISAはできません。つみたてNISAをやる年は、NISAはできません。毎年どちらか1つ選ばなければなりません。

 両者の大きな違いは、非課税となる期間、年間上限額、そして対象商品の3点です。概要は、以下の通りです。

NISA・つみたてNISA概要

出所:楽天証券経済研究所が作成

 現在のNISA制度は2023年まで続きます。2024年から制度内容が改定され「新NISA制度」が始 まります。内容は少し変わりますが、2024年以降も毎年、NISAまたはつみたてNISAで新規の非課税投資枠が得られることは変わりません。

 とりあえず、現行制度が続く2022年・2023年、NISAまたはつみたてNISAで非課税投資を続けていきましょう。

NISAとつみたてNISA、どちらを使ったら良いか

 2022年は、NISAかつみたてNISA,どちらを使ったら良いでしょう?NISAは、1年間に120万円まで非課税枠がありますが、5年しか有効ではありません。単純計算すると5年間で、120万円×5年=600万円の非課税枠を使えることになります。

 一方、つみたてNISAでは、40万円しか非課税枠が得られないものの、20年間有効です。単純計算すると20年間で、40万円×20年=800万円の非課税枠を使えることになります。どちらが有利とは、一概に言えません。

【1】投資資金が120万円以上あるなら、NISA

 すぐ投資できる余裕資金を120万円以上お持ちの方は、非課税枠が大きいNISAを選んだ方が良いでしょう。一度に120万円投資しても良いし、毎月10万円ずつ1年かけて120万円投資するのでも、どちらでも良いです。
 年間40万円以下しか投資できず、毎月積み立てでコツコツ投資していきたい方は、つみたてNISAを選んだ方が良いと思います。

【2】株式投資なら、NISA

 投資対象の違いも考慮に入れる必要があります。つみたてNISAは投資信託とETF(上場投資信託)だけになります。日本株や米国株などの個別株に投資したい場合は、NISAを選ぶ必要があります。
 ただし、ここで1つ重要な注意事項があります。NISAで投資するのに適しているのは、成長株でも割安株でも長期投資を考えている銘柄です。短期トレーディングには向きません。
たとえば、以下のような人気株に短期投資するのには向きません。

出所:筆者作成

 株価が短期的に倍増しています。かなり過熱感があります。短期勝負で投資して、1割上がったところで売却できればラッキーです。でも、NISAでそれをやると、せっかく5年使える非課税枠が売却した分、無くなってしまいます。

 逆に、投資した直後に急落して損切りした場合は、さらに良くありません。非課税投資枠が無くなるだけでなく、売却損を損益通算できないという税制上のデメリットもあるからです。

 NISA口座で発生した売却損は、課税口座で得た売却益と損益通算することができません。課税口座で10万円の売却益と10万円の売却損が発生すれば、ネット損益はゼロですから、課税されません。ところが、課税口座で10万円の売却益が出て、NISA口座で10万円の売却損が出た場合、損益通算できないので、課税口座の売却益に税金がかかります。

 最悪なのは、NISA口座で損失が出ると損益通算できないことを意識するあまり、損切りを躊躇することです。普通なら損切りしているところ、NISA口座だからと放置しておいた結果、株価が半値になってしまうと残念です。

 結論として、上がったらすぐ益出し、下がってもすぐに損切りが必要な短期トレーディングにNISA口座は不向きです。

【3】低手数料の投資信託で長期分散投資したいなら、つみたてNISA

 つみたてNISAは、国の定めた条件を満たした投資信託とETFしか買うことができません。手数料が高過ぎず、インデックスファンドなど分散投資ができているファンドしか投資対象として指定されていません。
 手数料が高過ぎる、不適切なリスクを取っている投信を、ついつい買ってしまう人は、つみたてNISAにすれば、その心配がありません。
 ただし、NISAでも、低手数料で長期分散投資に適した投資信託を買うことはできます。NISAは投資対象の選択肢が広いことがメリットです。ただし、それだけにかえって長期投資に不向きな不適切なリスクを取っている投資信託を選んでしまうリスクもあるわけです。

【4】1年ごとに使い分けもOK、家族で使い分けもOK

 1年ごとにNISAとつみたてNISAを交互に使うこともできます。2021年はNISAを使ったが、2022年はつみたてNISAにするといった具合です。家族で使い分けも良いと思います。たとえば、夫がNISAで妻がつみたてNISAとか、その逆も良いと思います。

途中で売却すると非課税枠は消滅

 毎年こつこつ積み上げていくことで、非課税枠は拡大します。ただし、非課税枠は、以下の場合に消滅することを理解していてください。NISAもつみたてNISAも長期投資に使うべきで、短期トレーディングには向きません。

【1】枠を得てからNISAなら5年後、つみたてNISAなら20年後

→2021年に得たNISA枠は、2025年末で終了します。つみたてNISA枠は2040年に終了します。

【2】途中で金融商品を売却した場合

→売却益は非課税ですが、売却した部分は非課税枠が終了します。少しずつ売却していく場合、売却した分だけ非課税枠が少しずつ減っていきます。

【3】枠を得た年に投資せず、非課税投資枠を残した場合

 →年内に投資しないで残った非課税枠は消滅します。次の年に引き継げません。たとえば、2021年に120万円のNISA非課税枠を得ても、2021年末(受渡ベース)までに70万円までしか投資しなかった場合、残りの50万円の非課税枠は消滅します。2022年に引き継ぐことはできません。
 2021年のNISA口座で株を買える最終日は、12月28日(火)(12月の権利付き最終売買日)です。2021年12月29日(水)・12月30日(木)は、2021年のNISA口座で投資することはできません。12月29日に買った株の受渡日が、2022年1月4日となるからです。

上級者向けアドバイス:こんな時はNISA

 ここから先は、上級者限定のアドバイスです。以下2つのケースでは、NISAを使った方が良いと言えます。最初はロールオーバーを考えるケースです。

【1】2017年のNISA口座を2021年のNISA枠を使ってロールオーバー(非課税期間延長)する場合

 2017年にNISAファンドで投資した銘柄を、さらに5年間非課税で保有したい場合は、2021年のNISA枠にロールオーバーすることができます。
 2017年にNISAで120万円投資した高配当利回り株が、値上がりして150万円になっているとします。2017年のNISA枠は5年で消滅します。つまり、2021年末で消滅します。何もしなければ、そこで保有している銘柄は課税口座に移管されます。
 その銘柄をさらに5年間、非課税で保有したい場合は、2021年のNISA枠を使ってロールオーバーできます。そうすると、2017年のNISA口座がさらに5年間延長されます。当初120万円投資していた銘柄が150万円まで値上がりしていても、そっくりすべて5年間非課税延長ができます。

  ロールオーバーは、手続きをしないとできません。楽天証券であれば、2021年12月30日(木)15時までに手続きすることが必要です。詳しくは、以下をご参照ください。
「NISAロールオーバー(非課税期間延長)」(楽天証券ウェブサイト)

 よく質問を受けるので、ロールオーバーしなかった場合、簿価がどうなるかについて説明します。
 2017年にNISAで投資した120万円が150万円になっている場合、ロールオーバーしなければ、課税口座に移管されます。移管される時の簿価は2021年末の株価となります。
 つまり、120万円で投資した銘柄が150万円まで値上がりしていれば、150万円が新たな簿価となります。30万円分の値上がりには課税されません。

 次のケースは、リスクをきちんと理解した上級者限定のアドバイスです。

【2】レバレッジ型投資信託に投資する場合

 現行のNISA制度は、2022年・2023年までです。2024年から新NISAが始まります。レバレッジ型投資信託への投資は、今はNISAで可能ですが、新NISAでは不可能となります。 つまり、レバレッジのかかった投資信託やETFに投資するならば、2022年または2023年のNISAでしか投資できません。
 レバレッジ投信とは、原資産のたとえば2倍の値動きをするように設計されたファンドです。日経平均株価や、米国ナスダック総合指数のおおむね2倍の動きをするダブルブル型ファンドなどがあります。
 このようなファンドは、値上がりする時は通常のインデックスファンドより大きく値上がりしますが、値下りする時は通常のインデックスファンドより大きく値下りします。また、インデックスが上昇下落を繰り返して横ばい推移する時は、基準価額が低下する性質を持っています。
 詳しくは、目論見書などの説明を読み、投資する場合はファンドのリスクを十分に理解した上で、投資してください。

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