NISAの節税効果はどのくらい?

 皆さんは、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を使っていますか。年間120万円の非課税枠の範囲内であれば、5年間に生じる配当金や売却益の税金が非課税になる制度です。

 NISAは使っているけど、実際どのくらいの節税効果があるのかを意識しながら活用している方は意外と少ないのではないでしょうか。

 そこで今回は、具体的な数値を用いて、NISAの節税効果や、逆にNISAを使うことにより損をしてしまう可能性があるケースをご一緒に確認していくことにしましょう。

 なお、2024年からNISA制度は大きく変わることになっています(年間非課税枠120万円→積み立て部分20万円+一般枠102万円の2階建てへなど)が、本コラムでは改正前の現行制度でご説明します。

NISAの節税その1:配当金を受け取った場合は?

 まず、配当金を受け取った場合の節税効果についてみていきます。

 例えば株価1,200円で1株当たり配当金が48円の株を、非課税枠いっぱいである120万円分、つまり1,000株購入するケースで考えましょう。

 この株の配当金は48円、購入価格は1,200円ですから配当利回りは48円÷1,200円×100=4%です。この配当金がNISAの非課税期間である5年間変わらないとします。

 年間当たりの配当金は48円×1,000株=4万8,000円。これに20.315%の税率をかけて、税金は9,751円となります。

 これが5年間ですから、受け取る配当金に対する節税効果は、9,751円×5年=4万8,755円となります。

 いかがでしょうか。「節税効果はそれほどでもないなあ」というのが筆者の率直な印象です。

NISAの節税その2:値上がりして売却した場合は?

 次に、値上がりして売却益が生じた場合を確認していきましょう。ここでも、NISAの年間非課税枠いっぱいの120万円分を購入したとします。

 もし、この株が5年間で2倍に上昇し、売却した場合、利益は240万円-120万円=120万円です。

 これにかかる税金は、120万円×20.315%=24万3,780円です。

 5年間で株価が3倍になったのであれば、利益は360万円-120万円=240万円、税金は240万円×20.315%=48万7,560円となります。

 NISA口座で買った株であれば、これらの税金が非課税となります。

 NISA口座で購入した株が大きく値上がりした場合、売却益の節税効果は配当金に比べてかなり大きなものになる、といえます。

株価が値下がりした場合のマイナスの影響は?

 このように、配当金や売却益にかかる税金が非課税となるのがNISAのメリットですが、逆にデメリットもあります。

 それが、損をして売却したとき、その売却損を他の株の売却益や配当金と損益通算したり、繰り越しをすることができず、売却損が切り捨てになってしまうという点です。

 例えば、通常の口座で120万円を投資した結果、株価が20%下落すると、他の株の売却益や配当金との損益通算により24万円×20.315%=4万8,756円の節税効果が見込めます。

 しかしNISA口座で購入した場合は、この節税効果がなくなってしまうのです。

 もし株価が半分になってしまった場合は、60万円×20.315%=12万1,890円の節税効果、倒産などで株価がゼロになってしまった場合は120万円×20.315%=24万3,780円の節税効果を、いずれも受けることができません。

節税効果を踏まえるとインカムゲインよりキャピタルゲイン狙いが有利か

 上で述べた通り、配当利回り4%の株を非課税枠の120万円分購入し、5年間持ち続けたことによる、配当金の節税効果は4万8,755円です。この節税効果は、株価が20%値下がりするとチャラになり、それ以上値下がりすると逆にマイナスの影響を及ぼすことになります。

 ですから筆者は、個人的には配当金の節税目的でNISAを活用するのはあまりメリットを感じないというのが正直なところです。

 一方、売却益については利益が大きくなればなるほど節税効果が高まります。120万円投資して株価が5年間で3倍になれば節税効果は50万円近くになるわけですから、かなり大きいメリットです。

 買った株が値下がりすれば逆にマイナスの影響が生じるわけですが、株価が大きく上昇した場合の税務面でのメリットを考えると、マイナスの影響はそれほど気にしなくてもよいのではと筆者は思います。

 さらに、貸借銘柄(信用取引で空売りができる銘柄)へ投資すれば、株価が値下がりしているときはNISA口座で買った株に対してヘッジする空売りをつけることで、値下がりによるマイナスの影響を大幅に軽減できます。

 以上より、NISA口座で購入するのであれば、インカムゲイン(配当金)狙いよりも、キャピタルゲイン(値上がり益)狙いの方が、より大きなメリットを享受できる可能性が高いというのが結論です。

 今後、NISA口座でどんな株を買うか選ぶときの参考にしてみてください。