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グローバル株式市場は11月24日現在、MSCIオールカントリーインデックス(円ベース)でみると、年初来で30%上昇しています。その中で業種別にみると、グローバルITセクターの上昇率は39%と、全体を上回っています。好調なグローバルITセクターについて、国別、銘柄別の上昇率上位をみると、『AI』との関連性がみえてきます。今回はグローバルITセクターをけん引する『AI』について考えてみたいと思います。
【ポイント1】国別でみるITセクターと台頭する『AI』関連企業
グローバルITセクターを国別でみると、パフォーマンスをけん引している国は、時価総額ウエイトで78%を占める米国で、その年初来上昇率は44%でした(11月24日時点)。また、個別企業が評価されて、オランダ、カナダ、インドは米国を上回る上昇率を達成しています。一方、中国政府の規制強化などが嫌気されて、中国のパフォーマンスは2桁のマイナスとなりました。
また、グローバルITセクターのパフォーマンス上位銘柄をみると、「半導体・半導体製造装置」、「ソフトウエア」、「情報技術サービス」のサブ・セクターが多いことと、『AI』関連企業が多い点が注目されます。国全体ではマイナスの中国の銘柄でも、グローバルITセクター上昇率の上位10銘柄に、中国半導体関連企業が4銘柄も含まれています。さらに、インドの『AI』関連サービスや日本、オランダの半導体製造装置など、米国以外でも『AI』との関連性の高い企業が目立ちます。
【ポイント2】各国政府が『AI』国家プロジェクトを推進
ITセクターが堅調に推移している背景の1つに、グローバルな『AI』競争が加速する中で、先進国を中心に各国・地域の政府が『AI』に関する国家プロジェクトを推進していることがあります。国家プロジェクトを追い風に『AI』関連企業に投資資金が流入しているとみられます。
米国では、「脳、神経科学」の巨大科学プロジェクト、「BRAIN イニシアティブ」が進められています。脳の構造を解明することで、革新的な技術やツールの開発・導入を加速させることが期待され、官民でさまざまなプロジェクトが遂行されています。バイデン政権下では、「国家AIイニシアティブ」法案が国防権限法2021に編入し成立しました。中国を強く意識したものと言えますが、『AI』の研究開発と人材育成に一段と注力する方向です。
中国では、2017年に策定した、『AI』産業を2030年に世界トップ水準にするための「次世代AI発展計画」が進んでいます。
欧州連合(EU)では、グローバルな競争力を確保するためのガイドラインである「Horizon2020」が発表されています。
日本では、産業構造の変革実現を目的に「人工知能技術戦略実行計画」が進められています。
インドでは、2020年6月に産学官連携の総合情報サイトである『AI』ポータルサイト「INDIAai」が始動しており、『AI』の人材育成プログラムも始まっています。
【今後の展開】『AI』を巡る世界的な覇権争いは一段と激化
世界の主要国が、国家戦略の革新的な技術として『AI』を位置づけ、研究・開発を進めているのは、『AI』が今や幅広い産業に組み込まれ、国家の競争力や安全保障をも左右するからです。こうした『AI』を巡る大きなうねりを背景に、民間企業による『AI』関連企業への投資や買収も、世界的に増加しています。特に大手IT企業は、『AI』における覇権獲得を目指して、積極的な研究開発投資を行うだけでなく、有望な『AI』技術や『AI』関連企業の買収を積極的に進めています。今後、『AI』を巡る世界的な覇権争いは、国家間、グローバル企業間でさらに激化していくとみられ、有望な『AI』関連企業の誕生が期待されます。
ただし、米中対立によって米中間の企業買収や技術交流は一定の制限を受ける可能性が高いとみられます。その場合、米中が互いに技術の優位性を競うため、それぞれで発展を進めることとなり、米中独自の発展形態をとることも考えられます。
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