株主だけのお得な制度が「優待」。うれしい特典で財布も気分もリッチに

 東京証券取引所に上場する企業の4割に当たる1,400社あまりが、株主優待制度を設けています。割引チケットやクオカードなどを配布する財布にやさしい優待もあれば、株主限定のオリジナル商品を届ける優待もあり、どの企業を選ぶか迷うことでしょう。

■個人投資家を優遇

 企業から株主におくられる「配当金」は、企業が稼いだ利益を投資してくれた株主に還元するものです。一方、株主優待は、企業から株主へのプレゼント。会社法に定められた制度ではなく、株主総会の承認手続きは不要です。優待の条件や内容、タイミングなどは経営陣が判断します。

 株主優待の狙いは、個人投資家にも株式をもってもらうこと。特定の投資家の売り買いに株価が振り回されないよう、金融機関や海外の投資家、個人投資家など幅広い層に株式を保有してもらうのが企業にとって理想的なのです。株価の安定は株主のメリットにもなります。

 多くの企業は、個人投資家を獲得するために、優待制度を導入しています。かつては、優待といえば自社商品やサービスに関連したものが主流でした。自社で製造する食品や割引券などです。このため、優待制度があるのは食品メーカーや飲食店、鉄道会社など個人を相手に商売する業種が大半でした。

 しかし、現在は、産業機械メーカーや建設会社など個人には縁遠い企業も優待を実施しています。お米やミネラルウォーターなどの実用品をはじめ、社名の入ったオリジナルクオカードなどが優待品の定番です。

■優待で実質利回りアップ

 たとえば、株主優待が500円のクオカードだとすると、実質的に1株5円の配当と同じです。このため、配当金と優待を合わせれば、実質利回りアップが可能です。

 優待の実施時期は企業によって異なります。3月期決算の企業でも、3月と9月の年2回優待がある企業もあれば、3月末に株をもっている株主に限定する企業もあります。最近の特徴では、株をもっている期間が3年以上の人には優待品を増量するなど、長期保有の株主に特典を付ける企業が多くなってきました。企業は個人投資家と長いお付き合いを求めているのです。

 楽天証券でもホームページで優待情報をたくさん用意しています。「お気に入り」に登録しておくと便利です。

■経営あっての優待

 ただ、注意してほしいのは、優待制度はあくまで、株式を保有してくれた投資家への「お礼」だということです。株主への利益還元は、株価の上昇や配当が正攻法です。いくら優待が魅力的でも、株価が下がってしまっては投資といえません。経営がしっかりしていてこその株主優待なのです。

 今回は、三つのポイントで10銘柄を選びました。ぜひ参考にしてください。

  • 株主優待制度がある
  • 15万円以下で買える
  • 今期業績予想が黒字で配当もある

■初めてでも選びやすい優待魅力株10選

※株価などのデータは2021年11月24日現在。

富士ピー・エス (東証1部・1848)
株価 504円
優待をもらえるのはいくらから? 5万400円
優待内容 100株保有でクオカード500円分
どんな会社? 九州地盤の中堅土木工事会社。大株主には、太平洋セメントや住友電気工業、西日本鉄道など大企業が名を連ねる。株を1年以上保有した場合クオカードの金額は2倍になり、実質利回りはさらにアップ。長期で株をもってほしい経営陣の気持ちが伝わってくる。優待券を受け取る権利が確定する「権利確定日」は毎年9月末。
宝ホールディングス (東証1部・2531)
株価 1,315円
優待をもらえるのはいくらから? 13万1,500円
優待内容 100株保有で自社グループ製品1,000円相当
どんな会社? 焼酎最大手の宝酒造とバイオ大手のタカラバイオを傘下にもつ。
新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店向けが落ち込んだが、家飲み需要が好調だったことで配当を継続できた。優待品は自慢の焼酎類が人気のようだが、みりんなど調味料の詰め合わせも選択できて実用的だ。
一正蒲鉾 (東証1部・2904)
株価 898円
優待をもらえるのはいくらから? 8万9,800円
優待内容 100株で1,000円相当の自社製品
どんな会社? かまぼこで有名な練り製品業界大手。人気商品はカニ風味かまぼこ。
マイタケ生産も売り上げを伸ばしている。優待にはおでんや煮物にぴったりの自社製練りものなどを用意する。2022年6月期の配当は年12円と、前期から2円増やす方針。配当でも株主に貢献する。
ビックカメラ (東証1部・3048)
株価 994円
優待をもらえるのはいくらから? 9万9,400円
優待内容 100株で1,000円の買い物券1枚
どんな会社? 家電量販店大手。権利確定日は8月末と2月末の年2回。
8月末時点に株を1年以上2年未満保有していれば、1,000円の買い物券を1枚追加。2年以上保有なら2枚追加。合計で年4,000円分の優待獲得となる。配当と合計した実質利回りはかなりの高水準だ。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス (東証1部・3222)
株価 1,031円
優待をもらえるのはいくらから? 10万3,100円
優待内容 100株で100円引き券30枚または食品
どんな会社? イオン系のスーパー。首都圏でマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東を経営する。優待の権利確定日は2月末と8月末の2回。利用するスーパーが近所にあれば、断然おトクかも。お米やラーメンなどから選ぶ食品コースもある。
日本製紙 (東証1部・3863)
株価 1,131円
優待をもらえるのはいくらから? 11万3,100円
優待内容 自社グループ製品の詰め合わせ
どんな会社? 王子製紙と並ぶ製紙業界のビッグ2。ネット通販が普及し、段ボールなど梱包用紙が好調。紙原料となる木材パルプは大半が輸入のため、円高でメリットを受ける銘柄でもある。優待はティッシュペーパーやトイレットペーパーなど。自社製品を100株以上保有しているともらえる。
前澤給装工業 (東証1部・6485)
株価 1,023円
優待をもらえるのはいくらから? 10万2,300円
優待内容 100株でクオカード500円分
どんな会社? 水道用給水装置器具などの製造販売を手掛ける。顧客は主に公営の水道事業者で収益基盤は安定している。200株以上2,000株未満を1年以上継続してもつと、最高級ブランド米である新潟県魚沼産コシヒカリの新米を3キロもらえる。
タカノ (東証1部・7885)
株価 692円
優待をもらえるのはいくらから? 6万9,200円
優待内容 100株で1,000円相当の菓子
どんな会社? オフィス家具や液晶、半導体製造装置、自動車向けバネなどの幅広い製品を製造販売する。半導体関連分野の伸びが期待される。優待品は自社オリジナルラスクのセット。1,000株以上だと地元長野県産ワインやウイスキーのセットと、グレードがぐんと上がる。
タカラトミー (東証1部・7867)
株価 1,061円
優待をもらえるのはいくらから? 10万6,100円
優待内容 ミニカーや自社商品割引クーポンコード
どんな会社? 玩具大手。100株保有すると、3月末と9月末に自社オンラインショップで使える10%割引クーポンコードをもらえる。1年以上3年未満の継続保有で割引券の割引率は30%に、3年以上だと40%に上がる。3月末には、保有株数に応じて特別仕様のミニカー「トミカ」や人気商品「リカちゃん」などをもらえる。
京浜急行電鉄 (東証1部・9006)
株価 1,211円
優待をもらえるのはいくらから? 12万1,100円
優待内容 100株で電車・バス全線きっぷ
どんな会社? 東京南西部と神奈川県を走る私鉄大手。コロナの収束で通勤客が戻ってきたほか、稼ぎ頭の羽田空港線も利用者の回復が期待できそう。3月末に100株保有で電車とバスの全線きっぷ2枚をもらえる。