個人投資家の株式投資のハードルを下げた立役者とは?

 コロナ禍を経て、株式投資をしている個人投資家の数は増え続けています。諸外国に比べて株式投資に関心のない人が多いと言われて久しいですが、それでも若年層を中心に「株式投資で資産形成をしたい!」と考える人たちが増えるというのは、筆者にとってもうれしいことです。

 そして個人投資家が株式投資を始めるきっかけの1つが「株主優待がもらえる」というものです。まさにこの株主優待が、株式投資のハードルを下げた立役者といえるでしょう。

 でも、果たして株主優待を中心に据えた株式投資を今後も続けていても本当によいのでしょうか? 今回のコラムでは、皆さんご自身が目指すべき株式投資の道について考えていきたいと思います。

なぜ株主優待だけでは資産が増えないのか

 最初にはっきり申し上げておきますが、株主優待を中心に据えた株式投資では、資産を大きく増やすことができません。

 なぜなら、株主優待の金銭的価値はそれほど大きくなく、かつ基本的には自分で消費してしまうものだからです。

 株主優待を金銭的な価値に置き換えてみると、それほど大きくないものがほとんどです。投資金額からみて数%程度のケースが多いのではないでしょうか。しかも、食品とか割引券などが株主優待品の多くを占めていて、実際にお金がもらえるわけではありません。

 株式投資に限らず、資産運用の世界では資産を大きく増やすためには「複利の効果」が極めて重要です。

 複利の効果とは、投資で増えたお金を引き出さずに再び投資に回すことで、元本が膨らみ、それに対するリターンもより大きくなることを言います。

 例えば毎年10%のリターンがある商品があったとします。これに100万円投資すると1年で110万円になります。

 もしリターンの10万円を毎年引き出していたなら、10年間でリターンの合計は100万円です。元本が100万円ですから、100万円が200万円になったという形です。

 一方、リターンを引き出さず、再び投資に回した場合は10年後どうなるでしょうか。100万円投資して10万円のリターンが出たら、翌年はそのトータルである110万円を投資する…、これを毎年繰り返すと、100万円の元本が10年後には約259万円になります。

 この200万円と259万円の差が複利の効果と呼ばれるものです。複利の効果は年月が長ければ長いほど大きな効果を発揮します。

 でも、リターンを再投資せず引き出してしまったら複利の効果は得られません。株主優待はリターンである優待品を消費して終わりなので、複利の効果を活用することができないのです。

配当金の場合はどうか?

 では、配当金はどうでしょうか。配当金は金銭で受け取りますから、受け取った金銭を再び投資に回せば複利の効果は得られます。

 しかし、配当金として受け取る金銭は、よほど多くの金額を株式に投資していなければそれほど多くないのが通常です。配当金を再投資しようとしても、あまり金額が大きくないので新たに株を買うには資金が足りない場合が多いでしょう。

 このように、株主優待や配当金といった「インカムゲイン」に分類されるものは、再投資による複利の効果が得られにくく、そしてそもそも利回りでみれば数%程度に過ぎず、大きな資産形成を目指すにはかなり厳しいです。

 すでに多額の資産を保有している方はインカムゲインでもよいですが、これから資産を大きく増やすためにはインカムゲインはあまり向いていません。

 もし株式投資の目的が、「お小遣い稼ぎ」とか「少しのお金で楽しめればそれでよい」というなら、株主優待とか配当金を銘柄選択の主軸にするのもよいでしょう。

 でも、大きな利益を得てしっかりと資産形成をしたいのであれば、インカムゲインではなくキャピタルゲインを主軸に考えていく必要があります。

 インカムゲインならせいぜい5年で15~20%程度ですが、キャピタルゲイン狙いであれば5年で2倍以上に資産を増やすことも時には可能です。

キャピタルゲイン狙いなら「成長株」「割安株」のどっち?

 キャピタルゲイン(値上がり益)を狙う場合、どのような銘柄に投資するかを決める必要があります。

 カテゴリーとしては「成長株」「割安株」「景気敏感株」「テーマ株」「復活株」といったものがありますが、より大きなキャピタルゲインを目指すのであれば「成長株」もしくは「景気敏感株」から選択するのがよいでしょう。

「景気敏感株」は、今年大きく上昇した海運株のように、景気により業績が大きく変動する銘柄です。業績変動に伴い株価も上下に大きく動くため、株価が上昇している局面で買い、下落を始めたら売るようにすれば、大きな利益を狙うことができます。

「テーマ株」は、その時々でマーケットが注目するテーマに沿った銘柄です。値動きが荒く、株価が上昇してもその後元の水準に戻ってしまうことも多いため、腕に自信のあるベテラン投資家以外は手を出さない方が無難でしょう。

「復活株」は、例えば新型コロナウイルスの影響で業績が大きく悪化した銘柄につき、やがては業績も回復し株価も上昇することを期待して投資するものです。業績が実際に回復すれば株価も上昇しますが、逆に回復せずそのまま業績悪化が続いて倒産するリスクもあるため初心者にはあまりお勧めしません。

「割安株」はミドルリスクミドルリターン、「成長株」はハイリスクハイリターン

「割安株」は、企業価値より明らかに割安な株価に放置されている銘柄です。いずれ企業価値にまで株価が上昇することを期待して投資しますが、株価が5倍、10倍と上昇することは少ないです。

 その一方、すでに株価が割安な水準にあるため、株価が下落するリスクも相対的に少なくなります。

「成長株」は、企業の業績が年々伸びていて、今後もさらに伸びることが期待される銘柄です。業績の伸びとともに株価も大きく上昇することが多く、5年で5倍、10倍にまで上昇することもあります。

 その一方、高い成長が期待されている分、株価が常に割高気味であるため、成長の鈍化が明らかになると株価が大きく下落することが多いです。

 このように、割安株はそれほど大きく上がらないが下値も限定的なミドルリスクミドルリターン、成長株は大きな上昇が期待できる半面大きな下落のリスクも高いというハイリスクハイリターンとなります。

 ただ、近年は割安株は上昇しにくく、成長株の方が上昇しやすい傾向にあります。

 成長株の方がハイリスクハイリターンとはいえ、株価が下げ始めたら売却するというルールを作るなどすれば十分対応可能なので、筆者としては株式投資で大きな資産形成を目指すのであれば、成長株への投資をお勧めします。

 また、リスクが心配な方は、できるだけ投資する銘柄を分散したり、割安株と成長株の両方に投資するなどしてリスクを抑制するとよいと思います。

 筆者も株式投資の主軸は成長株です。株式投資で大きな資産形成を目指すなら、ぜひ成長株への投資にチャレンジしてみてください。

■【動画で学ぶ】足立武志さんの株投資テクニック満載!

【投資戦略】夢のテンバガー達成3つの条件!10倍高は「◯◯株」を狙うべし

【FIRE特集】FIREするとき・した後の税金 FIREを目指すなら最低限知っておきたい注意点

【初心者向け】投資初心者は注意!株の注文方法(指値・成行)の使い分け