投資デビューに必要な株式市場の見方をお伝えする「トレンドマーケットスクールTOKYO」。今週11月22日(月)から26日(金)の日本株は日経平均株価3万円の壁に再度挑戦したいところです。

円安でトヨタが上場来高値更新も輸入価格高騰で内需株不振!

 先週の日経平均株価は16日(火)の高値2万9,960円、18日(木)の安値2万9,402円を行ったり来たりする横ばい相場でした。

 日本株の下支え役となったのは、円安と岸田政権の経済対策です。

 17日(水)には1ドル115円台目前まで円安が進んだことで、輸出で潤う自動車、精密機器、電気機器関連株が上昇しました。トヨタ自動車(7203)が上場来高値を更新し、相場のけん引役になりました。

 18日(木)には、岸田政権の経済政策が当初予定の40兆円から55.7兆円に膨らむとの報道で、株価が急速に値を戻しました。

 米国市場ではアマゾン・ドット・コム(AMZN)が週間で5%弱上昇するなど、ITや半導体関連株が好調でした。

 16日(火)に発表された10月の米国小売売上高は予想を大きく上回る前月比1.7%増。前年同月比で6%台という、約31年ぶりの物価高が続く中でも、米国の個人消費はきわめて旺盛です。

 18日(木)にはバイデン政権が石油価格安定のため、世界各国に石油備蓄の放出を要請したことで原油価格が急落。ハイテク株には追い風でしたが、逆に資源株の組み入れ比率の高いNYダウは軟調に推移しました。

 19日(金)には、欧州で再び急増する新型コロナウイルス感染対策として、オーストリアがロックダウン実施を表明。コロナ禍が再び世界経済に打撃を与えかねない懸念から、NYダウもS&P500も下落して取引を終えています。

 全体として見ると、日本株は円安で潤う輸出株と、円安による輸入原料の高騰が収益を圧迫する内需株が明暗を分ける「二極化相場」になりました。

 週間下落率が大きかった業種はパルプ・紙、水産・農林。また、原油価格の下落がネガティブ要因となる石油・石炭関連株、海運株でした。

 せっかくコロナ禍を払拭(ふっしょく)したと思ったら、円安や資源価格高騰によるコスト高、世界的なコロナ禍再燃で、内需株にとっては「一難去ってまた一難」という状況です。

日経平均3万円突破は米国株次第!?欧州のコロナ感染状況に注意

 今週は23日(火)が勤労感謝の日で休場になり、日本では大きな経済指標の発表はありません。

 岸田政権の経済対策の中では、GoToトラベルやマイナポイント関連はあまり材料視されておらず、唯一の成長戦略といえる「デジタル田園都市国家構想」では、ドローン宅配やローカル5Gに注目が集まっています。

 しかし、岸田政権の「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」といったスローガンは投資家からあまり評価が得られず、過去最大といわれる55.7兆円の経済対策に対する反応も限定的です。

 一方、米国では、24日(水)に重要なインフレ指標である、10月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が発表されます。

 9月分は前年同月比4.4%増と約30年ぶりの高水準でしたが、上昇率が加速するようだと、米国中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会)の「インフレはコロナ禍による一時的なもの」という説明とますます、かい離してしまいます。

 そんな米国FRBでは来年2月に任期切れとなるパウエル議長を続投させるか、民主党員で女性のブレイナード理事を新たに抜擢するか、バイデン大統領が近々、次期議長を指名する予定です。

 ブレイナード氏は労働問題の専門家でパウエル議長以上に金融緩和に積極的な「ハト派」。もし指名されたら、株高が加速する可能性もあります。ただし、現状はパウエル議長の続投が濃厚といわれています。

 今週も相変わらず米国株が史上最高値を更新すると日本株は少しだけ上がり、逆に利益確定売りで米国株が調整すると大きく下げる展開が続きそうです。

 世界的に見ても突出して新型コロナウイルス抑え込みに成功している日本。本来ならコロナ明けの消費拡大を見越し、他国を上回る株価上昇が起こってもおかしくありません。

 それにもかかわらず、「きっと消費低迷で輸入原料の高騰を最終価格に転嫁できないだろう」という思惑で内需株が売られている日本の現状は相当、深刻といえるでしょう。

 欧州の新型コロナウイルス感染者急増が引き続き心配ですが、今週こそ世界有数のコロナ克服国・日本に見直し買いが入り、2カ月ぶりに日経平均株価が3万円台を回復する展開に期待したいところです。