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米製薬大手ファイザーは今月16日、新型コロナウイルス感染症の『経口治療薬』の緊急使用許可を、米食品医薬品局(FDA)に申請しました。早ければ年内にも、米国での投与が始まる可能性があります。この新しい『経口治療薬』は、新型コロナ感染者の重症化リスクを89%低減するとされており、今後の世界の新型コロナ対策を一変させる「ゲームチェンジャー」として期待が高まっています。
【ポイント1】他の治療薬を凌駕する圧倒的な有効性
ファイザーがFDAに緊急使用許可の申請を行った『経口治療薬』のパクスロビド(PAXLOVID)は、新型コロナ感染者が発症後の早期に服用することで、入院・死亡リスクを89%低減することができるとされています。これは開発で先行した米メルク社製『経口治療薬』の有効性(約50%)を大きく上回るだけでなく、スイス・ロシュ社などが開発した「抗体カクテル療法」の有効性(約70~80%)をも上回っています。
【ポイント2】用法が容易、薬価も安価
『経口治療薬』が「抗体カクテル療法」に比べ優れているのは、その取扱い、用法が容易な点にあります。「抗体カクテル療法」は医師や看護師の管理のもとで点滴、ないしは注射を腹部や上腕、太ももなど計4カ所に打つ必要があります。一方、『経口治療薬』はその名の通り口から服用することができるため、医療現場や患者の負担を大きく減らすことができるものと期待されています。
加えて、ファイザー製『経口治療薬』の患者一人当たりの費用は約5.7万円にとどまり、「抗体カクテル療法」の同費用31万円と比べて極めて安価で、メルク社の『経口治療薬』の薬価も下回っています。
【今後の展開】治療薬として有望、ただし感染対策の主役は今後もワクチン
有効性が高く、用法が容易で、かつ薬価も安価なことから、今後新たに重篤な副作用が発見されない限り、ファイザー製『経口治療薬』が、新型コロナの治療薬として第一選択肢となる可能性が高いと言えそうです。
ただし、新型コロナ対策の主役は、今後もワクチン接種である点には注意が必要です。『経口治療薬』が効果を発揮するためには、発症初期の限られた期間に服用する必要があり、重症化してしまった感染者にはあまり効果が期待できないとされています。特に急速な感染拡大が生じた場合、多くの人が同時に適切な治療を適切なタイミングで受けることが物理的に困難になる事態も想定されることから、感染に備えて事前に体内に抗体を準備して重症化を防ぐ、ワクチン接種が今後も新型コロナ対策の主役となりそうです。
さらに、ワクチンの薬価は接種1回あたり約2千円と、『経口治療薬』を含む他の治療薬と比べて格段に安いという点も見逃せません。コロナ禍にあって多くの国が厳しい財政状況にあることから、新型コロナ対策の主役はあくまでもワクチン接種であり、『経口治療薬』は高リスク感染者の重症化阻止など、ワクチン接種を補完する役割を担っていくものと思われます。
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