「アメリカ住宅市場の回復はまだまだ」
日本でよく、こういうニュースをご覧になる事はありませんか? だとしたら、それはもう1年以上前の話です。
日本では経済に関して、ネガティブなニュースが優先して取り上げられる傾向が強いように感じます。確かに、人間の心理としてネガティブなニュースにより反応しやすい、という特性はあります。しかし市場にいる人間としては、アメリカの住宅市場が底打ちするという、10年に一回あるかどうかという重要な節目を見逃してはなりません。

アメリカの住宅市場は既に底打ちを終えています。これは様々な指標から確認できる事実です。第一に、私が住宅市場の先行指標として注目している住宅市場指数は2011年6月から9月にかけてが底で、そこからほぼ一貫して上昇、今では金融危機が始まる前の2007年前半の水準を回復しています。第二に、住宅市場指数と並んで注目している住宅建設株の動向です。大手住宅建設会社であるDRホートン(DHI)の株価は2011年9月を底に上昇を始め、この1年間で100%以上の上昇率を示しました。もちろん、他の大手住宅建設株も同様の動きをしています。

これら住宅市場の先行指標がいずれも上昇を始め、住宅価格の底打ちも時間の問題となっていた所、アメリカの代表的住宅価格指数であるケースシラー住宅指数も今年1月に最安値を付け、その後上昇を始めました。アメリカの住宅価格は、2006年の最高値からこの最安値まで、34%下落した事になります。そして金融危機やリーマンショックの原因となった住宅価格が6年ぶりに上昇を始めるという、大きな変化が起こっているのです。

背景にはいくつかの要因が挙げられます。さすがに住宅価格が高値から34%値下がりし、割安感が出てきた事、歴史的低金利で住宅ローンが借りられる事、雇用情勢が回復局面にあり、アメリカ人の所得が安定してきた事等、全ての要因が住宅購入を促進する方向に向かっているのです。全米不動産協会が発表する「住宅購入余裕指数」は今年2月に最高水準を付けました。この時点ではアメリカの一戸建て住宅価格の中間値が156,100ドル、住宅ローンは4.21%、一世帯当り所得の中間値は60,974ドル。これらの値を元に計算すると、アメリカの中間に近い世帯は、住宅ローン返済コストが所得の12%で済む事になります。

私も昨年は、講演やTV出演などで度々、「2012年は住宅市場底打ちの年になる」と申し上げてきました。そして実際に2011年秋からファンドでも住宅関連銘柄への投資を実行し、先月利食い売りを入れた事は先日の「自由の女神運用報告会」でご報告した通りです。即ち、住宅市場が底打ちしたかどうかは既に過去の話であり、それを見込んだ投資を行うタイミングとしては、もう一相場終わった後だという事です。それでは次の一手は何が考えられるのでしょうか?

株式市場の特性を想像してみて下さい。例えば相場が高値を付ける時というのは、価格が下がる前に、先に出来高が減少し始めます。価格が上がっているものの、高くて買える人が少なくなっていくからです。次第にその価格で買う人は居なくなり、価格が下落し始めるという順番です。

住宅市場も同じです。アメリカの住宅価格も、2006年にはかなり高い水準にまで上昇しましたが、その水準で買える人はそれほど居る訳ではありません。なので時間が経てばその価格で買う人は居なくなります。この時点で住宅建設業者は、株式市場で言う「出来高が減少している」事実に気付きます。住宅を建設するのは通常半年以上かかりますが、先の建設受注が減少している事を最も早く分かる立場にあるからです。住宅市場指数は、これら住宅建設業者のデータを元にしている事から、最も先行性が高いと言える訳です。

住宅市場というのは、株式のように頻繁に売ったり買ったり出来る訳ではありませんから、価格に変化が表れるのにも時間がかかります。弊社(Horiko Capital Management LLC)の分析では、その差は1年近くあります。住宅市場指数は2011年秋から本格的に上昇を始めていますので、住宅価格の上昇はこれからが本番、という事になります。そして弊社の分析は、この先1年でアメリカの住宅価格は22%程度の上昇を示しています。この分析結果は、恐らくウォール街の殆どの調査機関の予想を上回るものでしょう。しかし、これは客観的データのみを元に分析した結果であり、決して不自然な数字ではないと考えています。

住宅の販売件数が増えるのであれば住宅建設株ですが、住宅価格が上昇するのであれば、もっと手っ取り早い投資対象があります。ヒントは2006年に住宅価格が下落を始め(住宅建設株が真っ先に下落)、2007年に金融危機が始まり、2008年のリーマンショックに至る過程で、どういう順番に株価が下落して行ったか。その逆をやればいいのです。我々が運用するファンドでも先月、このような貴重な機会を有効にとらえるべく、銘柄の入れ替えを実施したところです。

(2012年9月12日記)