最長5年間にわたり非課税になるNISA口座

 購入時から最長5年間にわたり、株式や投資信託などの譲渡益(売却益)や配当金、分配金にかかる税金が非課税となるNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)。

 例えば2017年中にNISA口座にて購入した株式であれば、今年2021年末までは、売却益も配当金も非課税となります(配当金について非課税とするには、受け取り方法を株式数比例配分方式にしておく必要があります)。

 そろそろ2021年も終わりに近づいていますが、2017年中にNISA口座で購入した株式を今でも保有している場合、2022年以降はどうなってしまうのでしょうか。

 なお、NISAにはいわゆる「一般NISA」と「つみたてNISA」がありますが、今回は「一般NISA」についてお話しします。

非課税期間終了が近づくNISA口座の株:3つの対応方法

 NISA口座で保有している株については、非課税期間終了が近づく今、どのように対応するか、あらかじめ決めておく必要があります。具体的には以下の3つの方法があります。

(1)2021年中の非課税期間内に売却する
(2)何もしない(2022年以降は通常の口座へ移管)
(3)ロールオーバーする

 必ず何らかの手続きをしなければいけないということではなく、(2)の「何もしない」でも大丈夫です。ただしその場合は、2022年以降、通常の口座へ自動的に移管されます。この「通常の口座」というのは、特定口座を開設している場合は特定口座、そうでない場合は一般口座です。

 そして、(3)の「ロールオーバー」とは非課税枠を使い続けるための手続きです。2017年にNISA口座で購入して保有し続けている株を、2022年のNISA非課税枠に橋渡しして、さらに5年間非課税とします。

NISA口座保有の株:通常口座へ移管時の株価は、買値ではなく2021年末の時価

(1)~(3)のうち、(1)「2021年中の非課税期間内に売却する」、(2)何もしない(2022年以降は通常の口座へ移管)」の2つの対応は、本質的にはそれほど大きな違いはありません。

 なぜなら、通常の口座へ移管時の取得価格は、2021年末についている株価だからです。NISA口座で購入したときの価格ではないのです。

 では(1)と(2)について、例を挙げて説明します。NISA口座で2017年に50万円で購入した株が、2021年末に100万円、翌2022年に120万円になったケースです。

NISA非課税期間中の2021年内に売却したら?

 2021年中にこの株を売却した場合、50万円(100万円-50万円)の売却益に対する税金が非課税となります。

NISA非課税期間外のさらに値上がりした2022年に売却したら?

 次は2021年末に売却せず、2022年に120万円まで上昇したところで売却したとします。

 この場合、売却益70万円(120万円-50万円)に対する課税ではなく、20万円(2021年末時点の株価100万円と、売却額120万円との差額)に対する課税となります。

NISA非課税期間終了でも、2021年内にあわてて無理に売却する必要はない

 前ページの例で、ここから株価が下がると踏んで2021年内に100万円で売却した後、2022年に株価が80万円に下がったときに、通常口座で買うことができたなら、値下がり分だけ安く買うことができます。

 逆に、2021年内に100万円で売却した後、2022年に株価が120万円まで上昇したときに再び買い直すことになれば、売却せずにそのまま保有し続けていた方が有利だったことになります。

 ただこれらは、売却時から再購入時までの株価の変動による影響です。

 実は2021年中に(1)2021年中の非課税期間内に売却すること、(2)何もしない(2022年以降は通常の口座へ移管)を比較して、税金面で有利・不利が生じるような差異はありません。

 したがって、「2021年で非課税期間が終わってしまうから」という理由であわててNISA口座の株を売ってしまう必要はないということです。

 ですから純粋に、「そろそろこの株は売っておこう」と思えば非課税期間の2021年内に売ればよいですし、「もう少し持ち続けて様子を見続けよう」と思うならば何も手続きしない、もしくはロールオーバーをすればよいのです。

ロールオーバーするのであれば早めの手続きを

 次回は、NISA口座で保有している株をロールオーバーするのか否か、その判断方法を、税金面の影響を含めて解説していく予定です。

 ただし、ロールオーバーするのであればケースによっては早めの手続きが必要となるので、その点についてだけは今回お伝えしておきます。

 もし楽天証券でNISA口座を開設し、その口座内に2017年に購入した株がある場合は、12月30日までロールオーバーの手続きができます。

 しかし、他の証券会社でNISA口座を開設しているが楽天証券のNISA口座を使ってロールオーバーしたい場合は、早々に動かないと間に合わない可能性があります。

楽天証券:ロールオーバー申込みの流れ(ケース別)

 また、証券会社によっては自社内でのNISA口座のロールオーバーであっても、申し込み期日が11月中になっているようなところもあります。

 したがって、ロールオーバーの手続き期限を確認し、余裕を持って早めの手続きをすることをおすすめします。